第3話

2話-あたりまえの形
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2026/08/03 08:43 更新
〜翌日、朝〜
みかさside
 
朝、目が覚めたとき
——一瞬だけ、どこにいるのかわからなかった。
見慣れない天井
でも、昨日より少しだけ“自分の場所”に近づいた気がする。
みかさ
……朝かぁ
小さく伸びをして、部屋を出る。
廊下の先から、いい匂いがした。
〜リビング〜
ロゼ
お、起きたか
キッチンにいたのはロゼだった。
エプロン姿で、手際よく料理をしている。
みかさ
おはようございます…!
ロゼ
おはよ。腹減ってるだろ?
そう言って差し出されたのは、あったかい味噌汁。
みかさ
うわ、めっちゃええ匂い…
思わずこぼれた関西弁に、ロゼが少しだけ笑う。
ロゼ
いいな、その喋り方
みかさ
あ、すみません、つい…
ロゼ
別にいいって。ここ、そういうの気にするやついないし
——“ここ”
その言い方が、少しだけ引っかかった。
 
らいと
おはよーございまーす!
勢いよくリビングに入ってきたのはらいと。
らいと
みかさ起きとるやん!えらか〜
みかさ
いや普通に起きただけやけど…
らいと
いやいや、ここでは大事なことばい?
軽く笑いながら、自然に肩を叩かれる。
距離、近いなぁ
 
心音
おはよ…
少し遅れて、心音も入ってくる。
寝癖がついたまま、まだ眠そうだ。
心音
ちゃんと寝れた…?
みかさ
うん、まあ…!
心音
そっか…よかった…
ほっとしたように笑う。
その顔を見て、なんだか安心した。
 
メルト
……うるさ
ぼそっと聞こえた声に、空気が少しだけ変わる。
ソファに座っていたのはメルト。
スマホをいじりながら、こちらを見ようともしない。
みかさ
あ、メルトくん…おはよ
一応、声をかけてみる。
数秒の沈黙。
メルト
……
——無視。
らいと
いや無視すなや
らいとがツッコミを入れる。
らいと
聞こえとるやろ
メルト
別に、返す義理ない
冷たい言葉。
でも、不思議と昨日ほど怖くはなかった。
 
ロゼ
はいはい、朝からピリピリすんなって
ロゼが間に入る。
ロゼ
みかさ、座れ。ご飯できてるぞ
みかさ
はい!
テーブルには、しっかりした朝ごはんが並んでいた。
みかさ
うわ、すご…
ロゼ
あ、そうだ、みかさ料理得意なんだろ?あとで手伝ってもらうかもな
みかさ
え、いいんですか!
ロゼ
むしろ助かる
少しだけ、役に立てる気がして嬉しかった。
 
みかさ
いただきます!
みんなで手を合わせる。
その光景は、まるで——
本当の家族みたいで。
 
らいと
なあみかさ、学校とかどうするん?
らいとが箸をくわえたまま聞いてくる。
みかさ
え、学校…?
考えてなかった。
らいと
ここ、外出るとき制限あるけんね〜
さらっと言われたその言葉に、
みかさ
……え?
思わず手が止まる。
みかさ
制限って…?
らいと
あー……
らいとが一瞬だけ言葉に詰まる。
らいと
まぁ、そのうち説明あるって!
笑ってごまかす。
でも、その笑顔は——
少しだけ、固かった。
 
らぴす
……気にせんでええよ
ぽつりと、らぴすが言う。
らぴす
ここにおる分には、困ることないし
その言い方は、優しいのに、
どこか引っかかる。
——“ここにおる分には”
 
食事のあと。
キッチンで皿を洗っていると、
ロゼ
手伝う
横に並んできたのはロゼだった。
みかさ
ありがとうございます…!
ロゼ
慣れたか?
みかさ
えっと、まだちょっと…
ロゼ
だよな
軽く笑う。
でもそのあと、少しだけ声が低くなる。
ロゼ
無理に外のこと考えなくていい
みかさ
……え?
ロゼ
ここで普通に過ごせばいい
優しい言葉。
なのに——
なぜか少しだけ、逃げ道がなくなった気がした。
 
そのとき
カチャン、と音がした。
振り向くと、
メルトがコップを落としていた。
メルト
……ちっ
割れてはいない。
でも、床に転がったコップを見たまま、動かない。
みかさ
大丈夫?
反射的に、近づこうとする。
メルト
来んな
即座に止められる。
みかさ
……
昨日と同じ言葉。
でも今度は——
少しだけ、声が強かった。
メルト
俺がやる
低く言って、自分でコップを拾う。
その手が、ほんの少し震えているのに気づいた。

——なんでやろ
怖い、はずなのに
放っておけない。

心音
……みかさ
後ろから、心音の声。
振り返ると、少し青い顔をしている。
心音
今日、あんまり…無理しないでね
みかさ
え?
心音
……なんでもない
そう言って、目を逸らした。
 
その日、
何も起こらなかった。
笑って、話して、ご飯食べて、
普通に一日が終わった。
——はずなのに

夜、ベッドに入っても
頭の中に残るのは、
らいと
ここ、外出るとき制限あるけんね〜
ロゼ
ここで普通に過ごせばいい
メルト
来んな
バラバラの言葉たち。
でも全部が、どこかで繋がっている気がして。
——この家、やっぱり“普通”じゃない。
そう思ったとき、
胸の奥が、少しだけざわついた。

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