第4話

3話-触れるな
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2026/08/04 07:38 更新
〜翌日、昼〜
みかさside
 
昼下がりのリビング。
らいと
みかさ〜、これどうやるん?
らいとがゲームのコントローラーを振り回している。
みかさ
いや振るもんちゃうやろそれ…!
思わずツッコミが出る。
らいと
え、違うと?!
みかさ
違う違う、こうして——
隣に座って教えると、
らいと
おぉ〜!天才やん!
みかさ
それは言いすぎやって
笑い声が広がる。
その空気は、あまりにも普通で
——昨日感じた違和感が、嘘みたいだった。
 
メルト
……
ふと視線を感じて、顔を上げる。
部屋の端。
窓際に立っていたのは、メルトだった。
カーテン越しの光の中で、じっとこちらを見ている。
みかさ
……
目が合う。
でもすぐに逸らされる。
——またや
昨日も、今も
なんであんな距離取るんやろ。
 
らいと
みかさ、ジュース取ってくれん?
みかさ
あ、うん!
らいとに頼まれて立ち上がる。
キッチンへ向かう途中、
もう一度、メルトの方を見る。
——今度は、目を逸らされなかった。
一瞬だけ
ほんの一瞬だけ、視線がぶつかる。
そのまま、足が止まった。
 
メルト
……なんか用
先に口を開いたのはメルトだった。
低くて、少し不機嫌な声。
みかさ
あ、いや…その…
言葉が出てこない。
でも、ここで引いたら——
ずっとこの距離のままな気がして。
みかさ
なんでそんな避けるん?
気づいたら、聞いていた。
空気が止まる。
後ろで、らいとたちの笑い声が遠くなる。
 
メルト
……は?
メルトの眉がわずかに動く。
メルト
別に避けてねぇし
みかさ
いや避けてるやん
思ったより強く言ってしまう。
でも止まらない。
みかさ
話しかけても無視するし、近づいたら止めるし…
胸の奥が、じわっと熱くなる。
みかさ
俺、なんかした?
 
数秒の沈黙。
そのあと、
メルト
……してねぇよ
短く返ってくる。
みかさ
じゃあなんで——
一歩、近づく。
その瞬間
 
メルト
来んなっつってんだろ!!
強い声。
今までで一番大きい。
びくっと体が止まる。
でも――
足は、止まらなかった。
みかさ
なんでなん
もう一歩、近づく。
距離が、ぐっと縮まる。
みかさ
理由もわからんまま避けられるん、普通に嫌やねんけど
関西弁が、自然に出る。
自分でも驚くくらい、まっすぐな言葉だった。
 
メルト
……っ
メルトの表情が歪む。
一瞬だけ、焦りの色が見えた。
そのまま、手を伸ばしかけて——
止まる。

メルト
……お前さ
低い声。
押し殺したような。
メルト
ほんと、何も知らねぇんだな

次の瞬間
ガタンッ、と大きな音がした。
テーブルの端が、崩れていた。
らいとが
らいと
え?
と声を漏らす。
みかさ
なに今…
空気が一気に変わる。
メルトの手
何も触れていないはずなのに、
その周りの木の部分が、ひび割れていた。
メルト
……だから言ってんだろ
自嘲気味に笑う。
メルト
近づくなって
言葉が出ない。
ただ、目の前の光景を見ることしかできない。
メルト
俺に関わると——
メルトの目が、まっすぐこっちを見る。
さっきまで逸らしていたのに。
今は、逃げる気配がない。
 
メルト
壊れるんだよ
 
その一言で、
全部が繋がった気がした。
昨日の“来んな”。
コップの震え。
距離。
全部。
みかさ
……それでも
気づいたら、口が動いていた。
みかさ
それでも、理由にならんやろ
自分でも、何言ってるかわからない。
でも止まらない。
みかさ
壊れるからって、最初から避けるんは違うやん
静かな声。
でも、はっきりと。
メルト
……は?
メルトの目が揺れる。
みかさ
まだ何も起きてないやん
一歩。
さらに近づく。
周りがざわつくのがわかる。
でも止まれない。
みかさ
それに——
少しだけ、息を吸う。
 
みかさ
そんな顔してるやつ、放っとけるわけないやん
 
沈黙。
時間が止まったみたいに、誰も動かない。
メルト
……っざけんな
メルトが一歩下がる。
顔を逸らす。
メルト
同情とかいらねぇんだよ
吐き捨てるような声。
でも、その奥にあるのは——
明らかに、怒りじゃなかった。
みかさ
……別に、同情ちゃう
ぽつりと返す。
 
みかさ
気になるだけ
その言葉に、
メルトの動きが止まる。
でも次の瞬間、
メルト
……もういい
それだけ言って、背を向けた。
そのまま部屋を出ていく。
残された空気。
誰も、すぐには動かなかった。
 
ロゼ
……みかさ
ロゼの声。
少しだけ低い。
ロゼ
今のは、ちょっと踏み込みすぎだ
その言葉に、
胸の奥がぎゅっと締まる。
みかさ
……ごめんなさい
小さく呟く。
 
でも——
後悔は、していなかった。
——あのとき見た顔。
あれを、なかったことにはできない。

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