街の真ん中に建つ、一見普通の高層ビル。
そこは、テロ組織 Liberty の拠点の一つである。
___ガチャ
ふかふかな絨毯の敷かれた高級感あふれるそこの応接間に、俺__ 野薊 刹那 は足を踏み入れた。
目の前にいるヤツ__ 井原 紗季 は、タバコの煙をフーッと吐いて、面倒くさそうに眉を寄せた。
表での姿まで指名手配犯な同期の姿が思い浮かぶ。
現に戦闘が好きなオレは、テロと聞いて体が疼いていた。
強いヤツと戦いたい。
できるなら、現地で邪魔な強者を殺す役割をオレにくれ!
面倒くさがりで捻くれた井原紗季がニヤついている。
絶対何かあるだろ…!
オレは自由が欲しい。
つまり、潜入は一番向いていないのである。嫌すぎる。
___バリィィイイン!!!
突然、窓ガラスを割ってアイツ___ルシル・ルヴェルトが割り込んできた。
ルヴェルト…コイツは『 炎 』魔法を使う、とにかく戦闘狂だ。よくオレと戦いたがる。
強いヤツと戦えるのは本望だが、本気で殺ると実力が拮抗しているせいでお互いボロボロになる。
すると、万が一にもオレたちに死なれたら困る組織の人間が割り込んで来るのである。
真剣勝負に水を刺されるのだ。それは最悪なので、普段は戦っていない。
割れた窓から飛んでやってきたのは、『 風 』魔法使いである 加奈羽 。中卒のニートという組織一本で生きている奴だ。
ここ、一応ビルの20階なんだが。アイツ、身体能力だけで登ってきてるぞこの感じ。
いつの間にか扉にもたれかかっているソイツは、レオ。『 精神干渉 』属性を持っている、神出鬼没の何考えてるかよくわからんやつだ。
肩に乗っている猫みたいな奴は、ソラ。詳しくは知らないが強いらしい。
…思ったんだが、これここに潜入捜査向いてるヤツいなくね?
みんな自由だからな。そりゃそうだ。
レオがたまたま通りかかった男の構成員に声をかける。
アイツが自分から動くとは珍しい。この感じだと……
レオはたまにこういうことがある。
どっから情報仕入れてるんだ?
コイツらバカっていうか、直情的っていうか…。少し呆れる。
でもこういうのに適任なのは完全にレオだ。
精神干渉が向いていすぎる。あとあの二人だと絶対やりすぎるし。
レオが手を向けると、その男は苦しみ始めた。
多分、ひっどい夢を見ているんだろう。
可哀想に。自業自得だが。
井原紗季は新しいタバコを咥えながら言った。
これ見た後でそれ言う?
つくづくここはおかしな奴しかいないな。
___こうして、オレのオーダー潜入任務が開始された。
ゲーム機に釣られたのは誤魔化せないが、正義を騙る組織に潜入するのも、面白いと思ったのだ。
加奈羽は後で髪の毛に大量のくっつき虫を付けておくことにする。
【 テロ組織 Liberty 】
・魔法使いによるテロ組織
・自由を求めて結成された
・その実態は謎
NEXT▶▷▶ WONDER - Mission.1


















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。