第117話

❀ ほんの少しだけ特別 ❀
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2025/04/04 13:51 更新
時透無一郎
……暑い
そうだね…
ジリジリと太陽に焼かれている感じがする


汗も首筋を伝い、下ろしていた髪が肌に張り付く


髪結っておけば良かった…
モブ
お父さん!お母さん!
明日も来ようね!!
宛もなく散歩している道中、とびきり元気な声で はしゃぐ女の子がいた


小学校一年生くらいだろうか


高く、溌剌とした声がよく響いていた
モブ
うふふ、来年じゃダメかしら?
モブ
明日も来るのー!
モブ
こらこら、明日はおばあちゃん家に帰る予定だろ?
モブ
あ、そっかー!じゃあまた来年だねぇ
仲の良さそうなやり取りを一頻り終えたあと、小さな女の子はポケットにいっぱい入っていた貝殻を一つビーチに落とし 両親と手を繋いで更衣室へと向かっていった


私は彼女が落とした貝殻を手に取り、形を確かめるようにして触る


ザラザラとして、生温くて、グッと押せば粉々になってしまいそうだ
……貝殻
時透無一郎
綺麗だね
『______あなた、貝殻見つけたの? 綺麗ね』


『じゃあお父さんも探そうかな』
…………
時透無一郎
あなた?
なんだろう


懐かしい


ほわほわして、忘れたくなくて


大切なもの
時透無一郎
大丈夫?
無一郎が立ち止まっている私の顔を覗き込む
_____私、ここに来るの 初めてじゃない気がする
時透無一郎
時透無一郎
………前にも来たことがあるってこと?
家族とか……
家族……
両親と……?


そんなことあった?


…………ごめん、やっぱり思い出せない
気のせい、だったのかな…
時透無一郎
…………そっか
時透無一郎
無理しないでいいと思う。
そういうのって何でもない時にパって思い出すじゃん
そう、だね……
時透無一郎
でも、もし 思い出して辛くなったり寂しくなったりしたら言って
時透無一郎
話聞きに行くから。
というかそれしか出来ないけど
……ありがとう
親切にされると私なんかのためにって申し訳なくなっていた


だけど、いつからか少しだけ嬉しいって感情もある気がする


思えば、風邪引いた時も


寂しくなったクリスマスの夜も


私の手をひいてくれたのは無一郎だったっけ


なんか……不思議な感じだ


無一郎は私の心の中で、炭治郎や善逸、伊之助とはまた別の場所にいる

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