あるブランドの撮影会。
撮影のライトが、
やけに眩しく感じる。
笑顔を作っても、
胸の奥がずっとざわついている。
そんな時、マネージャーが
スタジオの隅で携帯を握りしめ、
僕を見つめていた。
目が合った瞬間、
何かを察してしまった。
撮影が終わると同時に、
マネージャーは
僕の元へ駆け寄ってきた。
マネ「…テヒョン。
病院から、連絡があった」
その一言で、
全身の血の気が引いた。
耳鳴りがして、
世界の音が遠ざかる。
何を言われたのか、
頭では理解できているのに、
心が拒否していた。
気づいたら、
マネージャーの車に乗っていた。
窓の外の景色が流れていくたびに、
涙が頬を伝う。
___お願い、嘘だって言って。
心の中で何度もそう願った。
病院に着くと、白い部屋に案内された。
扉の向こう、白い布の下に、
静かに眠る人影があった。
その隣には、見覚えのある女性___
ジョングクの母親がいた。
jk母「あなたが、テヒョンさんね」
優しく微笑みながら、
震える手で小さな封筒を
差し出された。
jk母「…これを、息子が
あなたに残していました」
震える手でそれを受け取る。
白い封筒の端には、
見慣れた字で俺の名前が書かれていた。
___“To. Teahyung”
封を開けると、ジョングクの筆跡で、
柔らかく、それでいて
切ない言葉が並んでいた。
___
テヒョンへ
この手紙を読むころ、
俺はもう、
君のそばにはいないと思う。
こんな形で言葉を
残すことを許してほしい。
まず、ひとつだけお願いがある。
俺がいなくなったことを、
自分のせいだと思わないで。
これは、俺の心の弱さであって、
君のせいじゃない。
君は俺にとって“救い”だった。
苦しかった日々の中で、
君の笑顔だけが
現実を優しくしてくれた。
だけど、それと同じくらい、
俺は君を愛することで壊れていった。
もっと強くなりたかった。
君の隣で堂々と笑っていたかった。
だけど、どうしても怖かったんだ。
君がいなくなることも、
君を苦しめてしまうことも。
眠れない夜、君の寝顔を思い出した。
俺の名前を呼ぶその声、
泣き笑いする君の顔、
触れた指の温度……
そのどれもが、
俺の心に焼きついて離れなかった。
本当は、もっと君を抱きしめたかった。
もっと、“生きて”君と笑いたかった。
でも俺は、
君の未来を曇らせたくなかった。
君は光で、俺は影のような存在だから。
光を掴もうとすればするほど、
君の眩しさに、
自分が溶けていくようだった。
だから、お願い。
これからは、自分の道を歩いて。
俺のことは、少しずつでいいから、
心の奥にしまっていってほしい。
仕事を続けて、
たくさんの人に愛されて。
いつか、俺よりも
ずっと優しい誰かと出会って、
本当の意味で“幸せ”を掴んでほしい。
それでももし、
ふとした瞬間に俺を思い出すなら、
その時は、空を見て。
風が吹いたら、それはきっと俺だから。
君の頬を撫でて、
「大丈夫」って囁いているから。
テヒョン。
君を愛していた時間は、
俺の人生でいちばん綺麗だった。
出会ってくれて、ありがとう。
俺を、愛してくれてありがとう。
どうか、これから先の人生を…
俺の分まで、生きてください。
そして最後に。
言葉にするのが怖くて、
何度も飲み込んできたけど、
今だけは素直に伝えたい。
愛してる。
今までも、これからも、ずっと。
ジョングクより
___
文字が涙で滲んで、
最後の“愛してる”の部分が、
ほとんど読めなくなっていた。
僕はそのまま床に崩れ落ち、
声を殺して泣いた。
泣いても泣いても、足りなかった。
胸の奥にぽっかりと空いた穴は、
どうしても埋まらなかった。
それからの数ヵ月、
僕はまともに食事もとれず、
眠ることさえできなかった。
仕事だけが、
現実と繋がっている唯一の場所だった。
でも、誰と会っても、何をしても、
心の奥にいるのはジョングクだけだった。
そして、ある夜。
月が淡く照らす中、
僕は静かに決意した。
___ジョングク以外、誰もいらない。
もう、誰の腕にも抱かれない。
それが、僕にできる最後の
“愛”の形だと思った。
___
季節が巡り、時間が流れても、
その決意は揺るがなかった。
毎年、彼の命日には、
欠かさず墓前に花を手向けに行く。
黒いスーツのポケットには、
あの日の手紙を入れて。
今日もまた、風が優しく吹いた。
手を合わせ、目を閉じる。
あの夜の声が、耳の奥で蘇る気がした。
v「ジョングク……愛してる」
小さく呟いた唇を、
夜風が撫でていく。
その風の向こうに、
確かに彼の温もりを感じた。
___夜風に、口づけを。
それが、僕とジョングクを繋ぐ、
最後の約束だった。
end.













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。