朝の光が差し込むダイニングで、
ジョングクが焼いてくれた
トーストの香りが
ふわりと広がっていた。
ミルクの泡をすくって、
カップの縁に指先でなぞる。
その隣で、ジョングクは
穏やかな表情をしていた。
v「…なんか、こうしてると、
普通の恋人みたいだね」
僕がそう言うと、
ジョングクは少しだけ笑う。
jk「俺たち、
もう普通じゃないくらい、
繋がってるでしょ。」
__その言葉が、
胸の奥に静かに残った。
食器を片づけて、
僕が上着を
羽織りはじめたときだった。
ジョングクが、
何かをポケットから取り出す。
黒いカードキー。
艶のある、
見慣れない形のものだった。
jk「これ、渡しておく。
今日も…
俺のところに帰ってきて」
真っ直ぐな瞳に、言葉を失った。
それは“約束”というより、
“縛り”に近いのかもしれない。
でも、不思議と怖くはなかった。
ジョングクの声が、
少しだけ震えていたから。
v「……うん、帰るよ」
僕はそのカードキーを受け取り、
ジョングクの頬にそっとキスを落とした。
そしてドアの向こうに出ると、
朝の風が頬を撫でた。
___今の僕には、
この風さえも彼の匂いがする。
***
昼過ぎ、街の片隅にある
小さなスタジオの前に立っていた。
ここは、ピアスの施術で有名な店。
鏡越しに自分の耳を見つめて、
ふっと息を吐く。
v「右に2つ、左に3つでお願いします」
施術師が確認の声をかけ、
冷たいピンセットが耳たぶに触れた。
金属の先が刺さる一瞬___
チクリとした痛みのあとに、
胸の奥が熱くなる。
ジョングクが
ピアスを開けたときも、
こんな痛みを感じていたんだろうか。
痛みは不思議だ。
ただの傷なのに、
人を繋ぐ記憶になる。
鏡に映る新しいピアスの輝きが、
朝に渡されたカードキーと重なった。
v「…これで、
僕はジョングクのものだね」
小さく呟いた言葉は、
店の中に吸い込まれていった。
外に出ると、
夕陽が少し傾いていて、
その光の中で、
ピアスがきらりと揺れた。
__今日も、あの人のところに帰ろう。
そう思いながら、
僕はもう一度、
ポケットの中のカードキーを
握りしめた。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!