『宙を漂う意識の中、哀れな少女は目を覚ます。』
♢
排気ガスが煙る道路。ここは日本。
それは、6月のことだった。
「あつー…!」
左手には不透明のビニール袋、もう右手には自らの顔より少し小さいくらいのサイズのハンディファン。
軽く被ったキャップだが、この猛暑には丁度良かったようだった。絶妙にダボっとした白いTシャツの袖を肩まで上げては、神様相手に抗議でもするように少女は天を仰いだ。
「キツすぎ、6月舐めてたんですけど!?こんな暑いもんなの?ガチで」
母に頼まれたおつかいのメモを握りしめてスーパーへ走ったは良いが、この暑さは彼女にとって予想外だった。左手に持っていた近所のスーパーのビニール袋を、力を入れて持ち上げては肩に担ぐ。重い。
信号を待ちながら、呟く。
「はあ、重……」
その瞬間だった。
すぐ隣を、トラックが通り過ぎたのだ。ただ、それだけならば問題はなかった。
曲がり道などないというのに、ハンドルを切る運転手。居眠りでもしていたのだろうか。
その運転手の咄嗟な行動が、人生に終わりを告げた。
轟音が鳴った。
何が起きたのか理解のできない。身体中に鋭い痛みが……いや、そんなもんじゃない。
身体を引きちぎられるような、という表現が正しい。もっとも、身体を引きちぎらても、なお生き続ける人間なんてそういないので、その感覚は分かりかねるが。
はて。何が起こったのか。気がつくと、私は原型も保たずに倒れているようだった。
周囲の人の悲鳴が聞こえた。
『人が、人がトラックに轢かれた!』
ーーああ、私は轢かれたのか。
なんだか他人事のように思えた。もうすぐ消えてしまいそうな意識の中、彼女__あなたは、その短い人生に終わりを告げた。
♢
『……これがこれまでの経緯だ。流石に不幸すぎる。死因はどうやら居眠り運転のトラックのせいらしい。酷い!!
さて、お喋りはここまでにしよう。ここからはこの哀れな私が、新たな人生を歩む話でもしようか。』











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。