第12話

11 同じ罪の匂い
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2026/03/08 06:32 更新


入り口を抜けた瞬間、暗闇に沈んだ空の下、
蒼い炎が視界に飛び込んできた。


荼毘「おっと。危ねえな。」


相澤の攻撃を、男は軽く身をひねってかわす。

ヴィラン連合____荼毘。

まだ不明な点も多いが、ここで人員を割く必要はない。

あなた「相澤は生徒の保護にあたれ。」

「こんなヴィラン、私一人で事足りる。」


その声音に迷いはなかった。


相澤は一瞬だけ彼女を見て、すぐに決断する。


相澤「…ここは頼みます。」


彼の背中が闇へ消えていく。

あなたは静かに刀を抜いた。

金属が鞘を擦る音が、夜の空気に細く響く。

あなた「ヴィラン連合、荼毘、だっけ。」

その言葉が終わる頃には__

すでに、彼の心臓は貫かれていた。


あなたはゆっくりと手を伸ばし、彼の胸に触れる。

どろりと、泥のような感触。


あなた「……ごめん。」


消えかけていた瞳の光が、静かに戻っていく。

その時だった。


荼毘「よくも俺のコピーを殺してくれたなぁ。」


はっと振り向く。

そこには____もう一人の荼毘が立っていた。

荼毘「とはいえ、今はもう死んでねぇよな。」


コピーの体は力なく歩き去っていく。

本物の荼毘は、口元を歪めた。

蒼い炎がゆらりと揺れる。




荼毘「やっと見つけたぜ。」




「“怪物”」




その言葉と同時に炎が放たれる——


だが、それよりも早く。


あなたは彼の腕を掴み、背後の壁へ叩きつけていた。


鈍い音が夜に響く。


あなた「……どうしてそれを知っている?」


瞳の奥で、静かな怒りと不安が渦巻く。


荼毘「おいおい。乱暴はよせよ」


あなたより背の高い彼は、彼女の腕を掴み返す。

そしてそのまま、壁に押し付け返した。


荼毘「俺はずっと“怪物”を探してた。」


蒼い瞳が、真っ直ぐに彼女を射抜く。

あなた「私の正体を知っている以上、生かすつもりはない。」

「殺さないで、とでも言うつもりで?」

腕を振り解こうとするが、びくともしない。

諦めたように、彼女は小さく息を吐いた。


荼毘「ああ。」

「そうだよ。」


彼は楽しげに笑う。

「なんなら、人殺しのお前をコッチ連合に引き連れようと思ってる。」


あなた「随分と自信家なのね。」

「“探す”くらいで、“怪物”の正体には辿り着けないと思うけど。」


そう言って、そっと左胸に手を添える。

荼毘「協力してくれたら、教えてやってもいいぜ。」

あなた「貴方達は命を奪うことを“快楽”と呼ぶ。」

「私は違う。」

「私はただ_____今まで奪ってきたものを、返してるだけ。」


荼毘は楽しそうに肩をすくめた。


荼毘「同じじゃねえか。」

「どちらも“殺す”って行為に変わりはねえ。」


ぴくり、と指先が震える。

怒りか。
それとも_____共鳴か。

あなた「命は複製されない。」

「だから今、コピーは殺した。」


荼毘はゆっくりと顔を近づけてきた。

互いの吐息が触れ合う距離。

蒼い瞳の奥に映る、もう一人の彼と目が合う。


あなた「私が殺す対象には、貴方も入ってるかもね。」


荼毘「だろうな。」


次の瞬間。

彼は、あなたの腕を掴んでいた手を離し——
そのまま頬に触れた。

優しく。

あまりにも自然に。

その瞬間、あなたは思った。


_____この世界には、「怪物」が二種類いる。


快楽のために殺す怪物。

そして、正義のために殺す怪物。

今、自分とは違う怪物が____

私に焦がれている。


腕を振り解こうとしても、できない。

だから。

あなたは背伸びをして、唇を触れさせた。

それは、愛の証ではない。

次の瞬間____

荼毘の口元から血が滴った。


舌を噛み切られていた。



それでも、彼は死なない。



私が、生かすと決めたから。




荼毘は目を見開いたまま、彼女を見ている。

あなた「貴方の死はもう、支配している。」

「……少しだけ、先に延ばしてあげる。」


彼女は荼毘の誘いを断らなかった。


だが、それは協力ではない。


彼の最期を見届けるための____時間稼ぎ。


荼毘は、かすかに笑った。


荼毘「やっぱり……あの日のこと、覚えてんじゃねえか」

まだ二人とも。

ヒーローに憧れていた、あの日——。




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