午後三時半。
魔獣の森を越え、A組の生徒たちとあなたが姿を現した。
ピクシーボブ「あれっ!?」
マンダレイ「お、思ったよりずっと早いじゃん!」
二人は目を丸くしたあと、嬉しそうに笑みを浮かべる。
ピクシーボブ「ボロボロじゃ……ない?」
こてん、と首を傾げる彼女を見て、相澤が口を開いた。
相澤「堺さん。やっぱり生徒の方についてたんですね。」
あなた「まあね。」
「その方が、生徒のためでしょ。」
すると相澤は呆れたように息を吐く。
相澤「助けられてばかりでは、学ぶことはできませんよ」
あなた「生徒思いなのね。」
そう呟くと、相澤は小さく肩をすくめた。
相澤「バスから荷物を下ろせ。部屋に運んだら食堂で夕食、その後入浴して就寝だ。本格的なスタートは明日から。……ほら、急げ」
その言葉を合図に、生徒たちは楽しそうな声を弾ませながら散っていく。
あなたは、その後ろ姿を静かに見送った。
——なるべく早く、
彼ら@A組 がヒーローを諦めて欲しい。
彼らが、私と同じ苦みを味わう必要なんてない。
甘さに溺れていけば、それでいい。
あなたの胸の奥には、生徒を思う適度な甘さと、
諦めを肯定したい自分自身への過度な甘さが、静かに混ざり合っていた。
あなた「ねえ相澤ー。やっぱり“あなたさん”って呼んでよ。」
相澤「……なんでですか?」
あなた「生徒は私をそう呼んでくれる」
また、ため息。
けれどどこか楽しそうだった。
相澤「あなたさんも、存外……生徒思いじゃないですか」
そう言って彼はわずかに口角を上げ、生徒たちの後ろ姿を追っていった。
午後七時。
緑に囲まれた空気は開放的で、どこか涼しい。
鷹見からの「怪物」の報告は、まだない。
連絡先を交換して間もないのに、トーク画面にはやり取りがいくつも積み重なっていた。
それを見返すたび、あなたの瞳は風鈴のように揺らぐ。
そのとき。
小さな足音が廊下に響いた。
あなたは襖を開け、外へ出る。
そこにはマンダレイと一緒にいた子供が、気まずそうに立っていた。
あなた「何の用?」
不思議そうに問いかけると、小さな声が返ってくる。
洸太「夜ご飯……届けに行けって、言われたから……」
手に乗せたお盆の上には、ラップのかかった食事が置かれていた。
あなた「そう。ありがとう」
あなたは少しかがんで、お盆を受け取る。
そして襖を閉めようとした、その時。
ジャケットの裾を、きゅっと掴まれた。
振り返ると、洸太が寂しそうな顔で立っていた。
あなた「……どうしたの?」
年の離れた子供と話すのは、あまり得意じゃない。
それでも——
どうしても、この子を放っておくことができなかった。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!