第10話

9 甘い失望
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2026/03/07 08:07 更新


午後三時半。

魔獣の森を越え、A組の生徒たちとあなたが姿を現した。


ピクシーボブ「あれっ!?」

マンダレイ「お、思ったよりずっと早いじゃん!」


二人は目を丸くしたあと、嬉しそうに笑みを浮かべる。


ピクシーボブ「ボロボロじゃ……ない?」


こてん、と首を傾げる彼女を見て、相澤が口を開いた。

相澤「堺さん。やっぱり生徒の方についてたんですね。」


あなた「まあね。」

「その方が、生徒のためでしょ。」

すると相澤は呆れたように息を吐く。


相澤「助けられてばかりでは、学ぶことはできませんよ」


あなた「生徒思いなのね。」


そう呟くと、相澤は小さく肩をすくめた。


相澤「バスから荷物を下ろせ。部屋に運んだら食堂で夕食、その後入浴して就寝だ。本格的なスタートは明日から。……ほら、急げ」


その言葉を合図に、生徒たちは楽しそうな声を弾ませながら散っていく。


あなたは、その後ろ姿を静かに見送った。


——なるべく早く、
彼ら@A組 がヒーローを諦めて欲しい。


彼らが、私と同じ苦みを味わう必要なんてない。

甘さに溺れていけば、それでいい。


あなたの胸の奥には、生徒を思う適度な甘さと、
諦めを肯定したい自分自身への過度な甘さが、静かに混ざり合っていた。



あなた「ねえ相澤ー。やっぱり“あなたさん”って呼んでよ。」


相澤「……なんでですか?」

あなた「生徒は私をそう呼んでくれる」

また、ため息。

けれどどこか楽しそうだった。


相澤「あなたさんも、存外……生徒思いじゃないですか」


そう言って彼はわずかに口角を上げ、生徒たちの後ろ姿を追っていった。


午後七時。

緑に囲まれた空気は開放的で、どこか涼しい。

鷹見からの「怪物」の報告は、まだない。

連絡先を交換して間もないのに、トーク画面にはやり取りがいくつも積み重なっていた。

それを見返すたび、あなたの瞳は風鈴のように揺らぐ。


そのとき。


小さな足音が廊下に響いた。

あなたは襖を開け、外へ出る。

そこにはマンダレイと一緒にいた子供が、気まずそうに立っていた。


あなた「何の用?」


不思議そうに問いかけると、小さな声が返ってくる。


洸太「夜ご飯……届けに行けって、言われたから……」


手に乗せたお盆の上には、ラップのかかった食事が置かれていた。


あなた「そう。ありがとう」


あなたは少しかがんで、お盆を受け取る。

そして襖を閉めようとした、その時。

ジャケットの裾を、きゅっと掴まれた。

振り返ると、洸太が寂しそうな顔で立っていた。


あなた「……どうしたの?」


年の離れた子供と話すのは、あまり得意じゃない。


それでも——

どうしても、この子を放っておくことができなかった。





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