第35話

飼い猫の気持ち サネside
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2026/02/15 13:50 更新


退院後、サネはゲンヤと共にアパートに来ていた。

不死川玄弥
ほらサネ、着いたぞ


猫キャリーバッグから外に出ると、そこは1LDKのアパートでリビングダイニングには小さいながらもキャットタワーが用意されていた。


不死川玄弥
サネ、トイレはここだからな


ゲンヤが指差すプラスチックの大きめの箱には、
猫砂がたっぷりと入っていた。


サネ
(‥‥ここがトイレェ?)


サネはいぶかしげに猫砂の匂いを嗅いだ。

不死川玄弥
あとこっちはカリカリご飯が入った機械な
不死川玄弥
昼間は俺仕事だから、昼飯は時間になると自動でここに出てくるからな

サネ
(‥‥カリカリ?確かァ、カンナが前に
んな事言ってたなァ)

不死川玄弥
じゃーんっ!!
サネ
ニャ?(あ?)


ゲンヤがにこにこ笑顔でサネの前に猫缶を見せてくる。


不死川玄弥
猫まんまプレミアムぅ!
これうまいらしいぞ!
不死川玄弥
値段も結構するけど、いっぱい買ったからな!
いっぱい食べてくれよ

サネ
(ゲンヤのやつ、変わんねぇなァ)


その元気いっぱいの笑顔も、優しさも、何もかもがあの頃のままだった。


不死川玄弥
あ!さっそくこれもつけねーとな


そう言ったゲンヤがサネの首輪におはぎのチャームをつけてくれた。


これまでチャームが1つしかなかった首輪は、
本来の2つのチャームが付いた姿へと変わっていった。


失われていたものが、ひとつひとつ戻っていく‥‥。


それは、確かな喜びとなってサネの心を温かく満たしていった。


ゲンヤが優しくサネのあごを撫でる。


サネは素直にゴロゴロと喉を鳴らした。


不死川玄弥
ほら、サネご飯だぞー


皿に乗せられた猫まんまプレミアムは、茶色くしっとりとした魚の身のような見た目をしていた。


サネが試しに匂いを嗅いでみると、新鮮な魚の身を凝縮したような美味しそうな匂いがした。


そして、恐る恐るぺろりと舐めると、上品な魚の旨みが口いっぱいに広がった。



サネ
(うっ‥‥うめェ!)


サネは夢中でガツガツと食べた。

不死川玄弥
ははっ、いい食いっぷりだなー!
サネぇうまいかー?


サネがご飯を食べる姿をゲンヤは穏やかな表情で見つめていた。


その夜、サネはゲンヤと一緒にベッドで寝ていた。


大好きな飼い主の匂いに包まれて、ふわふわとした安心感が心を満たしてゆく。


サネ
(‥‥オレェ、本当に飼い猫になったんだなァ)


まだ実感の湧かない現実。


サネ
(‥‥カンナはァ、どうしてっかなァ)


サネは月明かりが降り注ぐ窓の外を見た。


そして、頭から離れない愛しいカンナの事を想った。









不死川玄弥
じゃあ、俺は仕事行ってくるから、
サネいい子でな


朝になり、スーツ姿のゲンヤがサネの頭をわしわしと撫でて家を出て行った。


ゲンヤが出かけると、家の中は妙に静かになった。


サネ
‥‥何しよっかなァ


サネはひとまず家の中を散策してみるが、さほど広くない家の中はすぐに調べ上げられてしまう。


手持ち無沙汰ぶさたになったサネは、キャットタワーに乗ってしばらく遊んだ。


そして、床に転がっている猫じゃらしで遊んだりと過ごしてみる。



サネ
(‥‥つまんねェ)


目的もなく一匹で遊ぶのは何とも味気なく感じた。


サネが窓から外を見てみると、そこには見慣れない町並みが広がっていた。


コンクリートでできた大きな建物と、車が多く行き交う道路は見るからに安全ではなさそうだった。


けれど、外の世界は見ているだけで不思議とサネの心をワクワクさせる。


サネは周囲をざっと見渡してみるが、家から出られそうな穴など一つもない。


サネはそっと息を吐いて、その場にうずくまった。



サネ
‥‥ゲンヤのやつ、早く帰ってこねェかなァ


家に一匹でいると、飼い主に会いたくてたまらなくなった。


昼寝をしようにも、どこか落ち着かず‥‥。


サネは一日の時間が、やけに長く感じるのだった。








『すみちゃんはお出かけ行っちゃって帰ってこないニャァ‥‥お家にひとりぼっちは寂しいのニャァ』






ふと、カンナの言葉がサネの頭によみがえる。






サネ
‥‥カンナは、こんな気持ちだったんだなァ


いつも寂しがっているカンナの気持ちが、
飼い猫になって初めてよくわかるのだった。











その後もサネはゲンヤの家で何不自由なく生活をしていた。


不死川玄弥
ん?サネぇ、最近ご飯減ってないなー、
食欲ねぇのか?


ゲンヤがサネを抱っこして心配そうな表情でそう言った。


サネ
ニャァン‥‥
(何か、腹減らねェんだよ‥‥)


サネは何だか申し訳なくなって、ゲンヤから顔をそらした。


すると、ゲンヤが何やらスマホを取り出して電話をかけていた。


不死川玄弥
あ、すみちゃん?俺だけど‥‥
不死川玄弥
サネが何か元気ないみたいで、
餌もあんまり食わねーし、うん、うん‥‥
不死川玄弥
今から?いいの?‥‥うん、わかった!
すぐ行く!


ゲンヤは電話を切ると、サネをじっと見つめてくる。


不死川玄弥
サネ、これからお医者さん行くぞ!

サネ
ニャ?(あ?)


こうしてサネはゲンヤに連れられて、急きょ中原動物病院へと向かうのだった。











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