💚side
俺が佐久間に入れたメールに返信はなく、既読がついただけだ。
返事がないと余計に心配になってくる。
俺らみんなで管理しているスケジュール表を確認する。
すると今日は佐久間はテレビ撮影が入っていた。
俺は '仕事が忙しいから返信できなかった' のかなと考えたが、どれだけ待っても返信が来ない...
それにもう、撮影は終わっている時間だった。
あまりにも心配になり、俺は佐久間が撮影していた場所へと向かうことにした。
🤍side
俺は思い切って 佐久間くんであろう人に声をかけた。
誰にしろリストカットなんてやっていい事じゃない。
だから俺はこの行為をやめさせたい一心で目の前の人に近づいてみる。
顔をのぞき込むと…… やっぱり佐久間くんだ。
だけど佐久間くんは俺の方を向こうともしないで、さっき俺が声をかけたときからずっと動きをとめている。
俺がそう声をかけながら 手に持っているカッターを取ろうとすると、佐久間くんは急に怯えた声を出して俺から離れた。
俺が佐久間くんをおいつめている状況になってしまっている。
佐久間くんは俺と目すら合わせてくれない...
どうしたらいいの、???
ガチャン!!🚪
💚side
俺は佐久間がいる場所へと急いでタクシーで向かった。
タクシーに乗っている間もソワソワして仕方がなかった。
何か嫌な予感がする……
俺は 『佐久間 様』 と書かれた楽屋を見つけ、ドアを開けた。
ガチャン!!🚪
楽屋にはラウールと佐久間がいた。
俺の嫌な予感は当たっていて、
佐久間がラウールに怯えた様子でカッターを持って震えている。
俺はラウールの背中を撫でながらそう言った。
ラウールが部屋から出ていき、佐久間と2人だけになった。
俺は佐久間に声をかける。
だいぶラウールのことを怖がってたみたいだったから、距離をとって遠くの方から声をかける。
優しい声でそう佐久間に声をかけると、佐久間はカッターを床に置き俺の方を見つめた。
大きな瞳からこぼれ落ちる雫には、限界という佐久間の現状が現れていた。
俺は一目散に佐久間に抱きつき、思い切り抱きしめた。
潰れそうなくらい、ぎゅっと。
俺はそう言い、佐久間がリストカットしたところを、持っていたハンカチで強く縛った。
寂しそうな目で見つめる佐久間に何を言われるのかと思った次の瞬間、
俺は佐久間のことを優しく包み込んだ。
先程とは違い、優しく、消えてしまわないように。
〜
楽屋の外で、ドアの隙間からみていたラウールも安堵の表情を浮かべていた。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。