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第1話

君は人間みたい 〜アナタはまるで人間じゃないみたい〜
13
2025/10/29 23:48 更新
ーB視点ー





また退屈な日が始まる。



そう思いながら学校の敷地へ足を入れる。







ふと学校の花壇に植えられている赤い花に目が留まった。


何の花だろうかと思い、パシャッと写真を撮り、後で調べようと思い、止まっていた足を動かし始めた。












赤いマリーゴールドが そよそよと揺れている事も知らずに。







Bは震える手でナイフを握りしめていた。










目の前で談笑しているAは、いつも通りの穏やかな笑みを浮かべている。

だがBは知っていた。
この笑顔の裏に潜む、狂気の正体を。

誰も知らない。誰も疑わない。




だって”Aは良い人だから”



だから唯一Aがヤバい奴だと、人間じゃないと知っている自分がコイツを葬るしかない。








そうどこかでは一種の優越感を持ちながら_____

















他の女子達がトイレへ行って1人になったA。



やるなら今だ。今しかない。







_____BはAの胸を狙ってを刺した。



突然のことだったためか、Aは目を見開き、ナイフが刺さったまま後退りする。



だが依然としてAは倒れない。



静かに手を伸ばし、自ら胸からナイフを抜いた。



瞬間、Bの背筋に冷や汗がドバッと出る。

本来、ナイフを抜いたら血が出るはずだ、それも胸、つまり心臓を狙ったから尚更血がたくさん出るはずだ。

致命傷のはずなのに。



なのになぜ出ない?



おかしい、やっぱりコイツはおかしい と心臓の鼓動が一気に早くなる。

カランッと音を鳴らして落ちたナイフのついでに少しぶ厚めの手帳が落ちていた。








しくった_______!!



しくった しくった しくった しくった しくった しくった しくった しくった しくった しくった しくった しくった しくった しくった しくった しくった しくった!!


Bは”しくった”という一声が脳を駆け巡る。







Aは目は潤み、唇は震えている。


だが目の奥にある何かがBには恐くて恐くて仕方がない。





するとAが震えながらも口を開けた。













A
私を殺そうとした...?





なんでそんな人間みたいに怖がってるんだ。

お前はバケモンだから、怖いなんてないだろ。




なのになんで_____











___________俺が悪者みたいになってるんだ?

そう思うと一気に嫌悪感が溢れ出てくる。
B
クソが...ッ!

A
ひ、酷い....!酷いよ...ッ!
その声は、嗚咽交じりに叫び、まるで信じられないとでもいうように震えていた。



だが、Bは知っている。



これは嘘だ、こいつは人間じゃない。

Aの涙目が、体の震えが、まるで舞台女優のように美しく、そして不気味だった。


mb
きゃあぁぁぁぁッッ!!!
mb
誰か!!先生!!
mb
救急車!!
mb
Aさんッッ!!
“逃げろ、とにかく逃げろ!!Aさんを連れて逃げるんだ_______!!”

感染症の如く、皆B以外の生徒達その思考になっていく。



数人がAを連れて、教室の外へ走り出していく。


Aは走った事で体が揺れ、涙がポロッと溢れた。




が、その表情は悲しみも恐怖もなかった。


ただ少しキョロキョロと周りの顔を見ていた。











__________ コイツ、こんな状況になっても次のターゲットを探しているのか。



イカれてる...!



気が付けば、B以外の生徒は校庭にいた。

教室にはB 一人。





アイツは人間じゃない、バケモンだ。



そう、もう一度思い出してみよう。

俺は見たんだ、この目でしっかりと...___________!



ある日、Aはいつも通り、4人の女子たちと談笑していた。

少し経ってから3人がトイレに行った。

Aと一対一になったCさんはより楽しく話すためにAと椅子に座る。


少し一対一で談笑していると、Aがふと
A
ぁ、肩に髪の毛...取ってあげる。
C
ぁ、ありがとう...!


AがCさんの肩らへんに触れようとした______









_____が、指先が喉の側面に触れた。


今思い出してもゾッとする。

皮膚を押し破るわけでもなく、切り裂くわけでなく、まるで水の中に指を入れるように、Aの指が喉の奥へどんどん入り込んでいく。

Cは目を見開くが何もしなかった。

いや、できなかったと言った方が合っているかもしれない。

Aは微笑んだまま、何かを”引き抜いた”。

摘まむように持っていたのは赤黒いビー玉のようなものだった。

臓器でも肉でもないもの。

それを静かに口元へ持っていく。

そして___








_____ゴクンッと飲み込んだ。




一瞬、ゴクンッと飲み込んだ音だけが響き渡ったような気がした。


その瞬間、Cさんは机に突っ伏してしまった。

まるで疲れて眠ったように。

トイレから戻ってきた3人の女子が「寝ちゃった?笑」と笑っている。

誰も異変に気付かなかったのだ。

教室は何事もなかったかのように昼休みが続いた。

Aも何事もなかったかのようにリボンを少し整えると、談笑していた。

そのリボンは気持ち少し濃い赤になっていた気がする。



俺は目の前で起きたことに対し、しばらく理解が出来なかった。

だが、Aの指が喉へ沈むように入り込んだことも、喉から何かを引き抜いた瞬間も、それを飲み込んだ瞬間も、現実だ。

夢なんかじゃない。妄想でもない。幻覚でもない。

現実で起きているんだ。



これは自分にしか分からない。

自分しか気づいていない。




__自分がヒーローになる時が来た、なんて少し馬鹿な事を思いながら落ちたナイフを拾う。






NO視点

ー校庭ー


昼休みの楽しそうな騒めきは消え、代わりに混乱が響いていた。

生徒達はAを囲むように集まっていた。

誰もが顔を強張らせる者もいれば、涙を浮かべている者もいた。
mb
Aさん、大丈夫だった?!
mb
怖かったよね....!泣
A
だ、大丈夫だよ...!
手帳のおかげで傷は浅いし!

少しも血は出ていない。

そんなことすら誰も疑問に思わない。
mb
Bの野郎...!あんな事する奴とは....!
mb
アイツ頭おかしいよ...!
誰もがBの非難を口にする。

誰もがAを守ろうとする。

ーB視点ー




Aを追いかけてきた俺はAに近づこうとした瞬間、周囲の視線が嫌というほど突き刺さった。


まるでナイフで突き刺されてるみたいだ。
mb
来るなよ、殺人鬼が!!
mb
来ないで!!
B
違う...!違うんだ!
B
ソイツは人間じゃない!
B
バケモンなんだよ!!
mb
...は?
mb
何言ってんの?!
mb
バケモンはお前の方だろうが!!


俺の声は誰にも届かない...。
mb
先生が来た!
mb
先生助けて!!
俺は足がすくんだ。



でも、

でも今強引に行けばAにもう一度ナイフを刺せることが出来る。

だが、そんな考えに至らなかった。


何故かは分からなったが、多分俺自身も興奮して訳がわからなくなったんだと思う。




その時だった______







__________Aが俯いていた顔を上げ、Aと目が合った。



今まで合うことがなかったAの目と。


初めて”認識”された。




瞬間、俺の全身は凍りついた。

Aが俺を見ている。





Aはゆっくり俺に近付いて来る。


逃げなきゃ、

逃げなきゃいけないのに、
mb
Aさん、危ないよ?!
A
で、でも、何かの間違いかもしれないし....。
A
それに傷は浅いからきっと大丈夫だよ!

と言いながらどんどん近付いて来る。

どんどん距離は近くなっていく。

どんどんBの鼓動もまた早くなっていく。












Aの足が止まった。




Aは俺の両手を包んだ。
A
Bくんきっと何かあったんだよね...?
悲しい事とか何かあって、訳が分からなくなってそれで気が動転したんだよね.....?










ムカつく。













ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく!!!

バケモンのくせに!!



ただその一声に尽きる。
B
バケモンが…ッ!!
B
人間のフリなんかやがって…ッ!!ふざけんじゃねぇよ!!
A
Bくん!私はバケモンじゃないよ…!
B
いいや、お前はバケモンだ…!
B
俺は見たんだ!!お前がCさんから赤黒いビー玉みたいなのを取って、飲み込んだのを!!
B
皆!騙されるな!!
B
コイツはバケモンなんだ!!

と、言いたいことを言い終え、一旦呼吸をしているとAが優しく微笑んだ。








_____不気味だ。


そう思った瞬間、手にほんの少し違和感が走った。

まさか____













そう、俺の手の平にAの指が滑り込んでいたのだ。


皮膚を押し破るわけでもなく、切り裂くわけでもなく、まるで水の中に手を入れるように、あの時Cさんに対してやったように、Aの指が奥へ奥へ滑り込んでいく。

だが、俺は何もできなかった。

Aはずっと俺の目を見ていたからだ。

俺もまたしかり、Aの目に吸い込まれるように、喰いつくように見ていた。

視線を外すことなんて到底できなかった。

逃げることも、叫ぶことも。

ただ されるがまま。



そして、何かが抜かれるのが分かった。

Aが何かを持ったまま、見せつけるようにスッと顔の前まで運んだ。















___それは赤黒いビー玉のようなものだった。
A
残念ね。ボソッ
B
…はっ?

Aのその一声で体は動かせないが、声は出すことができるようになった。

そして喉の奥から地を這うような声で
B
クソがァ…!!

怒り、苦しみ、恐怖、色んな感情がごっちゃ混ぜになって俺を襲いかかる。
A
酷いよ…ッ!
とまた か弱い女の子のように震えながら叫ぶ。

その瞬間、周りの生徒はAと俺を離す。

Aは依然として俺の赤黒いビー玉のようなものを持ったまま。
B
返せよ…ッッ!
mb
B!お前、Aさんに何した!?!
B
返せよォ"!!それは俺のだ!!
mb
お前、何言ってんだよ?!
mb
先生、何してるの、早くなんとかしてよ!!


と、ぎゃあぎゃあ騒いでいる合間合間にAが徐々に手に持った赤黒いビー玉のようなものを口元へ運んでいく。

やめろ、やめろ____!!






















____ゴクンッ




俺は片時もAから目を離さなかった。

意識が崩れ落ちる寸前まで、ギリギリまでAを見続けた。





























____Aはリボンを軽く整える。

そのリボンはまた少し濃い赤に染まっていた。

ーNO視点ー
あの事件の後、Bは教師に取り押さえられ、“Aを刺した生徒”として校内は騒然となった。

Bは少年院へ入れられたが、Bはただずっとボーッとしていた。

誰が話しかけても、問いかけにも、視線にも、食事にも、名前を呼ばれても応えなかった。
mb
精神的ショックかしら…。
mb
念の為、精神鑑定してもらおう…。


結果は重度の精神異常なのではと診断された。

“自我の崩壊” “反応性の消失” “人格の空洞化”などなど専門家達は首を捻りながら「この子は、治る可能性は極めて低い」そう告げた。

Bはそのまま精神病院へと移送された。

“治療”という名のもとに鍵のかかった部屋で、今日もただボーッとしている。




誰も知らない。

Bが喰われたことを。

Aが人間ではなく、怪異だということも。












___今日もAは教室で笑っている。

血のようなリボンを揺らしながら。








A
(次は誰にしよう...?)



ーお終いー
急に思いついて書いちゃいました...( ᐛ )

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