第5話

Story.4
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2024/02/10 15:27 更新
sk
んふ、そこがポイントなんですよ!
 佐久間さんは椅子に座らせた人形ドールを撫でながら話を続けた。
sk
少し、俺の昔話になるんですけど…
sk
俺、小さい頃はちょっと変わった子だったらしいんです
よく夢の中である男の子と遊んでて…イマジナリーフレンドって言われちゃう類ですかねぇ
でもほんとの人間みたいで、俺の支えになってくれたんです
その子を思い出してつくった人形ドール
それが亮平です
 だから人間らしさは大切にしたくて!と笑う佐久間さんは、やっぱり楽しそうで。

 いいなぁ、と思ってしまった。

 頬が少し緩んだのもつかの間。

 若い女の子何人かが私たちの横を走り抜けていった。
来場者
ねぇねぇ、しょうさん見に行った?
来場者
行った!めっちゃイケメンだった!
来場者
いいなぁ〜サイン貰おうかなぁ…
 また「しょう」さん…。

 悔しさが滲んだ醜い顔を見られたくなくて、静かにうつむいた。
sk
「しょう」って…
 佐久間さんが急に口を開き、喋り出した。
sk
翔太っていう俺の友達なんです
あいつはもう2回も受賞してんのに
俺はまだ…1回もできてない
 声色が変わったことに驚いて、ふと佐久間さんの顔を見ると、その目には悔しさや悲しみ、嫉妬、いろいろな感情が入り混じっていて。

 それでも人形ドールを撫でる手つきは優しい。
sk
俺の何がだめなんだろ…って
時々落ちこんじゃうんですよねー…
 私の視線に気づいたのか、はっとした佐久間さんはすぐに笑顔を戻した。
sk
何かごめんなさい!
俺ばっか喋っちゃって…
あなた
わかります
sk
えっ
 気がつくとそう言っていた。
あなた
わかります、その気持ち
あなた
追いつきたいのに、追いつけなくて
何がだめなのかもわからなくて
 無意識のうちに、涙を頬をつたう。

 びっくりしてあわあわしている佐久間さんを尻目に、私は思いを全て出した。
あなた
どうしようもできなくて
一生懸命、頑張ってるのに
比べられて、下に見られて
sk
Yukiさ…
あなた
私、何のためにやってるんだろうって
何がしたいんだろうって
何で続けてるんだろうって
sk
Yukiさん
あなた
ほんとにわからなくて
不安になって…!
sk
Yukiさん!
 大きな声で呼ばれて我にかえった。

 自分勝手に一方的に話して…恥ずかしくて逃げ出したくなる。
あなた
ごめんなさっ…
sk
わかる
俺もわかるよ
 真剣な顔で見てくる佐久間さんは、さっきの楽しそうな姿とはまるで別人だった。

 私の手を強く握って優しい顔で語りかけてくる佐久間さんをかっこいいと思った。
sk
大丈夫、Yukiさんだけじゃない
みんな思ってるよ
 私よりも少し高い位置にある頭を下げて、私の涙で濡れた顔を覗き込んでくる。
sk
不安な気持ち、
抱え込まなくていいんだよ
 私の心を包み込むかのようなその優しい声が脳内に響き、久しぶりに人前で子どものように泣いてしまった。

 佐久間さんは、私が泣き止むまでずっと手を握ってくれた。

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