佐久間さんは椅子に座らせた人形を撫でながら話を続けた。
だから人間らしさは大切にしたくて!と笑う佐久間さんは、やっぱり楽しそうで。
いいなぁ、と思ってしまった。
頬が少し緩んだのもつかの間。
若い女の子何人かが私たちの横を走り抜けていった。
また「しょう」さん…。
悔しさが滲んだ醜い顔を見られたくなくて、静かにうつむいた。
佐久間さんが急に口を開き、喋り出した。
声色が変わったことに驚いて、ふと佐久間さんの顔を見ると、その目には悔しさや悲しみ、嫉妬、いろいろな感情が入り混じっていて。
それでも人形を撫でる手つきは優しい。
私の視線に気づいたのか、はっとした佐久間さんはすぐに笑顔を戻した。
気がつくとそう言っていた。
無意識のうちに、涙を頬をつたう。
びっくりしてあわあわしている佐久間さんを尻目に、私は思いを全て出した。
大きな声で呼ばれて我にかえった。
自分勝手に一方的に話して…恥ずかしくて逃げ出したくなる。
真剣な顔で見てくる佐久間さんは、さっきの楽しそうな姿とはまるで別人だった。
私の手を強く握って優しい顔で語りかけてくる佐久間さんをかっこいいと思った。
私よりも少し高い位置にある頭を下げて、私の涙で濡れた顔を覗き込んでくる。
私の心を包み込むかのようなその優しい声が脳内に響き、久しぶりに人前で子どものように泣いてしまった。
佐久間さんは、私が泣き止むまでずっと手を握ってくれた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。