ここに来てから隠れるように悠叶の後ろにいるその子。
悠叶が腕を引っ張って前に出そうとするが、「いい」とか「いらない」とか首を振るばかり。
むすっとした表情をうかべて悠叶の後ろから出てくる想空くん。
なんだか素っ気ない挨拶。
若干俯く顔を覗き込むように目を合わせたらすぐにそらされてしまった。
多分 、 私と“よろしく” したくない。
初対面なのに嫌われてる?
微妙な空気に苦笑してしまう。
慌てる歩夢とふい、とそっぽを向く想空。
その横顔が綺麗で少し見惚れた。
確かに、女の子みたいっていうのは分からなくもない。
大きな瞳と小さな口、すっと通った鼻筋、まつげなんか私より長いんじゃないかってくらい。
日焼けとは無縁そうな白い肌に、小さめの身長も相まって、女の子って言われても全く違和感がない。
“美少年”って言葉が本当に似合う。
まるで兄妹喧嘩のような2人のやり取りに、はぁ、と溜息をつき、呆れたように言う優羽。
その姿は、喧嘩を止めるしっかり者のお姉さんだ。
想空が、アユが、と繰り返す2人。
高2の喧嘩だとは思えないくらい低レベル。
それを見た優羽と悠叶が顔を見合せ、呆れたように笑っている。
どうすればいいのかと迷っていれば今まで見ていただけだった愛花が口を開いた。
“愛花の想空”という言葉に少し違和感を感じた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。