「海人……?
こんな夜中に、どうしたの?」
近くのコンビニまで買い物に行こうとして、よく知っているシルエットに気がついた。
霧雨の中、だいぶ濡れていて。
ここまで歩いて来たんだろうか。
俺に会いに来てくれたのか、と思わず心が弾むけれど。
立ち尽くす海人は、ゆっくり俺の顔を見て、目線が泳いでから俯いて黙ったまま。
会いに来たわけではなかったんだと、その表情から伝わってきて。
胸は苦しくなった。
濡れているまま、帰すわけにいかない、と理由をつけて、無理矢理マンションに連れて行く。
「い、いい。
俺、帰る、ごめん……」
「風邪引いたら、ダメだろ。」
少し強引に肩を抱き寄せると、腕を突っぱねて、俺から離れようとして。
「廉もマネージャーも困るだろ。」
そう言えば、海人が何も言えないと分かって、名前を出した。
「…………。」
黙って、腕の力が少し緩む。
強引に部屋に連れていき、俺の服に着替えさせる。
着替えて、リビングに戻ってきた海人は、黙って俯いたまま、立ち尽くしていた。
「なんか飲む?」
リビングの入り口に立ち尽くしたまま、首を横に振った。
まるであの日のように。
「ありがと。
俺、帰る…。
服、今度送る、から……」
濡れた服を抱きしめたまま、小さな声で呟いて、肩にかかったままのタオルを外した。
「これ、ありがと……」
俺も黙ったまま、タオルを受け取った。
かける言葉を、必死に探す。
このまま、また会えなくなるのは嫌だった。
「服、なんか袋いる、だろ?」
結局かける言葉なんか見つからなくて、間抜けなセリフしか出なかった。
「あ、うん…」
海人から受け取った服が入る袋を探すフリをして、必死に言葉を探す。
袋なんか、見つからなければ。
海人を帰さなくて済む。
「ゴミ袋とかでいい、よ?」
ゴソゴソとクローゼットを漁っていた俺に、海人が待ち切れずに声をかける。
「あったよ。」
本当はとっくに見つけていた袋に服を入れて渡そうとして、そのまま足元に置いた。
「なんか飲んでからにしようよ。
久しぶりじゃん。」
無理矢理に椅子に座らせた。
「………。」
海人は、俯いたままで、俺も黙ったまま、紅茶を入れた。
「紫耀……」
しばらく続いた沈黙の後、マグカップを見つめて、海人が俺の名前を呼ぶ。
ただ、それだけなのに、それだけで、少しだけ満たされていく自分に気がつく。
「……ん?」
海人の顔が見たくて、少し覗き込むと、顔をあげて、俺に笑顔を見せた。
「曲、聴いたんだよ、かっこよかった。」











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。