第173話

お互いに
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2025/06/09 08:48 更新

ゆっくりと目を開ければ酷く荒廃した大地に、酷く晴れ渡った大地に、泣くでもなく、笑うでもなくただ呆然と座っていた。

全て終わったのだと悟って、目を伏せる。



 『...わたし、



声が掠れる。
喉が痛いが必死に声を出す。



 『転弧、私、ヒーローになるよ。』



あの日あの時諦めかけた夢をまた追う。
追いたい。
誰かを救けられるヒーローになりたい。

空を向けば太陽が眩しい。
スっと目を細めて口角を上げれば心がふわりと軽くなる。



 『アストラとして絶対に。』

踏「あなた!!」



ガラッ!と勢いよくドアが開く。
後ろのホークスでさえ「そげん急がなくても...。」と言ってしまうほどの勢いの良さだった。



 『病院の中は静かにしろと怒られるぞ?』

踏「すまない、それ程までに急いだ。」



フゥーッと息を深く吐き心を落ち着かせる。
そんな踏陰を見て少し嬉しくなって笑ってしまった。



 『あんなかっこいいこと言ってたのに台無しだな。』

踏「うるさいぞ。そもそも起きたのに顔を見せに来ないのは何処のどいつだ。」

 『今起きたんだ。行く暇もなくお前がやってきたんだろう?』

ホ「まぁまぁ。」


そう言ってホークスが宥める。
思ったよりどちらも声が大きかったようだ。



踏「ホークスもだからな?あなた、聞いてくれ。俺が起きた時に俺と同じく絶対安静のホークスは消えていた。」

ホ「う"っ、」

 『何?詳しく。』

ホ「俺味方居なくない?これ。」



3人で笑い合うとようやく肩の力が抜ける。
2人もそうだったのかそれぞれと目が合った。



ホ「無事で良かった。」

 『お互いな。』

踏「あぁ、本当に。」



ふと目線を外して自分の手を見る。
グー、パーと握ることを繰り返した。

まだ背を押す感覚が消えてない。
あの眩しさも覚えている。



踏「なんだ?痛むのか?」

 『いや、痛みはしないさ。』



空を見て静かに目を瞑る。



 『(救けてくれてありがとう。)』



届けばいい。
私のことを救けてくれた1人の少年へ。

背中を押してくれた彼に届けばいい。

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