第117話

マルタの冬
2,341
2024/03/01 09:50


マルタの一年は温暖で、この時期でも大きく気温が下がることはない。

ただ、この時期は雨季で天候はよく崩れる。
そんな中でも、毎朝のお散歩は欠かさない。


そう、そんな今朝もテヒョンはヨンタンを連れて雨の中海沿いを歩いていた。





テヒョン
テヒョン
ちょ…待ってよ、タナ……
ヨンタン
ヨンタン
アン!
テヒョン
テヒョン
んもぅ……なんでいつも
タナはそんな元気なの?
ヨンタン
ヨンタン
アンアン!!





ひゅうぅぅぅ、、





テヒョン
テヒョン
……あっ…傘が……



海から吹き抜ける風で簡易的な傘は簡単に飛ばされて、荒れる海へと落ちて行った。

遠くに浮かんだ、透明な傘。



テヒョン
テヒョン
……あーあ、、これじゃあ濡れ
ちゃう…タナ、おうち帰るよ?
ヨンタン
ヨンタン
アァン?
テヒョン
テヒョン
お散歩おしまい!
ヨンタン
ヨンタン
アンアン!!
テヒョン
テヒョン
……しょうがないでしょ?
びしょびしょで帰ったら……
ジョングガに怒られちゃうよ



テヒョンは半ば諦めモードで、雨の中を急いで走って帰った。


家に着くとジョングクの姿はなく、テヒョンはホッとため息をついてから、ヨンタンの体を拭いてシャワールームへ向かった。



テヒョン
テヒョン
……良かった、今のうちに
シャワーを浴びて、濡れた
服は洗濯しておかないとっ



着ていた服を洗濯機に突っ込んでシャワールームに入ると、体が冷えていたのかゾクゾクと体が震えた。


テヒョン
テヒョン
…っくしゅん…



ジョングク
ジョングク
テヒョンア?シャワー浴びるの?
テヒョン
テヒョン
えっ?!あ、うん…
ジョングク
ジョングク
……もしかして、雨に濡れたの?
テヒョン
テヒョン
……う、うん…少しね?
ジョングガどこ行ってたの?
ジョングク
ジョングク
ちょっと買い物に…体が温まる
ようにココア用意しときますね
テヒョン
テヒョン
うん、お願い



テヒョンは少しドキドキしながらシャワーを浴びて、すぐにリビングに戻ると、ちょうどジョングクはマグカップにお湯を注いでくれている所だった。



テヒョン
テヒョン
っくしゅん…
ジョングク
ジョングク
ちょ……テヒョンア、もぅ…
ちゃんと髪乾かさないとっ
テヒョン
テヒョン
うん…ごめん…
ジョングク
ジョングク
ほら、こっちに来て?



ジョングクはテヒョンの髪をタオルドライした後、ドライヤーで乾かし始めた。

相変わらずのふわふわとした柔らかい髪。

指の間をすり抜けるテヒョンの髪が心地良い。



テヒョン
テヒョン
っくしゅん…
ジョングク
ジョングク
…………テヒョンア?
テヒョン
テヒョン
……なぁに?
ジョングク
ジョングク
ちょっと…



ジョングクは両手で頬を挟んでテヒョンを引き寄せると、おでこをくっつけた。

微かに感じる、いつもと違うテヒョンの体温。


ジョングク
ジョングク
……熱、ありますね…
テヒョン
テヒョン
えっ?今ドライヤーを
かけたからじゃなくて?
ジョングク
ジョングク
絶対違う……熱計りましょう
テヒョン
テヒョン
大丈夫だよ?だって何ともないし……
ほら俺、人よりちょっと体温高いでしょ?
ジョングク
ジョングク
……それでも、いつもと違います
テヒョン
テヒョン
……大丈夫なのに…
ジョングク
ジョングク
いつもテヒョンアを抱きしめて
寝てる俺が言ってるんだから……
間違えるはずありません!!
テヒョン
テヒョン
っ…







ピピピッ…

ジョングク
ジョングク
……何度ですか?
テヒョン
テヒョン
………さんじゅう……ななど
ジョングク
ジョングク
……体温計貸して下さい
テヒョン
テヒョン
あっ…



テヒョンからスルリと体温計を奪って確認すると、ジョングクは軽くため息をついた。


ジョングク
ジョングク
……37度9分…やっぱり……
テヒョン
テヒョン
いやっ…ほら、人より体温…
ジョングク
ジョングク
寝ましょう、テヒョンア
テヒョン
テヒョン
えっ?だって店開けなくちゃ…
ジョングク
ジョングク
ダメです……ほら…
テヒョン
テヒョン
あ、ちょっ……



ジョングクはテヒョンをひょいっと担ぐと、バタバタと暴れるテヒョンをベッドまで連れて行った。

ベッドにそっと寝かせると、もう一度おでこに手をあてて少し頷き布団をしっかりとかけた。



ジョングク
ジョングク
ちょっと待ってて下さい
テヒョン
テヒョン
………分かった…


しばらくして戻って来たジョングクの手には、氷枕と水と薬、そしてすりおろしたリンゴ。

テキパキと氷枕をセットし、加湿器をつけた。


ジョングク
ジョングク
リンゴ、食べれますか?
テヒョン
テヒョン
……うん、食べる
ジョングク
ジョングク
……はい、あ~ん…
テヒョン
テヒョン
えっ…自分で食べれるよ?
ジョングク
ジョングク
ダメです、、はい、あ~ん…
テヒョン
テヒョン
っ…///
ジョングク
ジョングク
……美味しいですか?
テヒョン
テヒョン
うん、美味しい…
ジョングク
ジョングク
食べ終わったら、薬を
飲んで寝て下さいね?

テヒョン
テヒョン
…………
ジョングク
ジョングク
………なんですか?
テヒョン
テヒョン
………ジョン︎︎グガは?
ジョングク
ジョングク
えっ?
テヒョン
テヒョン
俺が寝てる間…
……何してるの?
ジョングク
ジョングク
……何って…
テヒョン
テヒョン
……どっか行っちゃうの?
ジョングク
ジョングク
……どこにも行きませんよ
テヒョン
テヒョン
じゃあ…この部屋に
一緒にいてくれる?



ジョングクは持っている皿をサイドテーブルに置いて、テヒョンの手を両手で包んだ。


ジョングク
ジョングク
……テヒョンア?
テヒョン
テヒョン
……な、なに…?
ジョングク
ジョングク
……お店には臨時休業の
貼り紙をして来ました
テヒョン
テヒョン
……あ、ありがとう…
ジョングク
ジョングク
俺が病気のテヒョンアを一人
置いてどこかに行くなんて…
出来ると思いますか?
テヒョン
テヒョン
えっ…
ジョングク
ジョングク
最初からずっと横に
いるつもりでしたよ
テヒョン
テヒョン
ジョングガ…
ジョングク
ジョングク
さぁ、薬飲みましょう…



薬を飲み終えたテヒョンの髪を優しく撫でて、ジョングクはテヒョンと並んでベッドに横になった。

おでこに手を当ててから、首筋に手を当てて熱の確認をすると、またテヒョンの髪を撫でる。

優しい手の動きに、テヒョンはふわふわとした気持ちでジョングクの服をきゅっと握った。



ジョングク
ジョングク
ふふっ…どこにも行きませんよ?
テヒョン
テヒョン
……うん、分かってる…
ジョングク
ジョングク
……安心して眠って下さい
テヒョン
テヒョン
……ねぇ、ジョングガ?
ジョングク
ジョングク
何ですか?
テヒョン
テヒョン
俺が酷い熱を出した
時のこと、覚えてる?
ジョングク
ジョングク
……あぁ、ありましたね…
俺が仕事に行かなくちゃいけなく
て、ジミンさんに来てもらって…
テヒョン
テヒョン
……あの時もジョングガ、仕事
から帰って来たらずっと一緒
にいてくれて……寝てる間も手
を握ってくれてたよね……
ジョングク
ジョングク
……懐かしいですね
テヒョン
テヒョン
次の日会社まで休んでさ?
ジョングク
ジョングク
ふふっ…だって、心配で仕事
なんて手につきませんから
テヒョン
テヒョン
………あの時から変わらないで
いてくれて、ありがとう……
ジョングク
ジョングク
テヒョンア…
テヒョン
テヒョン
ジョングガがずっとジョングガ
のままで、俺は幸せだよ?
ジョングク
ジョングク
……俺も幸せです…





2人はいつものようにぎゅうぎゅうに抱きしめあって眠りに落ちる。

何年経っても変わらない、この先もずっと。










Thank you for the request.
Mina🥐ちゃん、お待たせ♡





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