第62話

『さよなら』そして『また、何処かで。』
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2025/08/31 22:30 更新

今日は、九月一日
本来なら、今日は夏休み開けた、始業式の日

そんな日なのにも関わらず、
緑の茂る中にポツリとある倉庫の周りに
六人の子供達が集っていた
k.
今日涼しいね……!夏じゃないみたい!
n.
だな、なんか風が通るっていうか
m.
二人は久々に屋外に出たもんなぁ
i.
でも最近の中だといっちゃん涼しくね?
l.
ずっと屋外秘密基地にいたヤツが言うと説得力増すわ
s.
今ここの気温三十度ないらしいからねぇ
そう六人は、秘密基地の前、夏空の下でそう言い合った
夏空は澄んでいて、透明のガラスのように輝いている

六人は、そんな透明な青空の下、
幸せそうに笑いながら談笑していた
i.
ってか、始業式に生徒会長休むなんて
前代未聞なんじゃねぇの?
l.
ん〜、まぁもうそろ転校するし、
それぐらい大丈夫でしょ!
m.
らんらん気持ちわかるけど
あまりにもノリ軽すぎん?
s.
それ言ったら生徒会長転校の方が
前代未聞だもんねぇ……
k.
それ言ったらこさめは退学だよ退学
k.
誰よりもヤバいでしょ、
めっちゃ怒られたもん
i.
その説教中にコッソリ電話かけて
生中継してたやつどこの誰だよ
n.
同じ月に生徒会長転校して
不登校の生徒自主退学して
海外留学する生徒中退して
逮捕された生徒退学すんの?
m.
うわぁ……改めて聞くと
ほんまにやばいなぁ……
s.
学校に残るの俺とひまちゃんだけ……?
n.
残念だな、俺も実は
今月末に上京するんよね
l.
まって何それ聞いてないんだけど!?
s.
ほんとにみんな離れ離れなるじゃん……
そう六人が話す様子を見ていれば、
もうそろそろこの六人で集まることはなくなると
それを誰もが悟り、悲しむだろうに

それとは対照的に、その六人は
なんの代わりのない日常かのように、
笑って驚いて、コロコロと表情を変えた



話を聞いていれば、
らんは、独り身となった為、
遠く離れた親戚の家に引っ越し

いるまは、孤児院に入った後
今入ってる学校を自主退学し

みことは、今日が飛行機の日らしく
学校を中退して海外留学をし

なつは、今決めつけられてる将来から
逃れるためにここを離れて上京し、

こさめは、学校を退学させられた後
祖父母との縁を切って、新しい家を借りて、



すちは、何も変わらない日常を送る、
ということがわかった

そんな、全く別の日常を送ることになる六人は
最初の方は、全員が笑顔だったけれども

次第に、六人全員が、表情に寂しさが出てきた
それでも、六人はなんとか笑顔を保っていた


k.
……はぁ……
k.
さよなら、なんだよね、これで
こさめが、泣かないように吸い込んで、
そう言いながら寂しそうに笑った
こさめの雫の耳飾りが、静かに揺れた
l.
……うん、そう……だね、
l.
また忘れちゃったりしないでしょうね?
l.
例えば……すちとか、ね?
らんは、すちの方を見てそう言った
もう、罪滅ぼしは繰り返さないと言うように
少し疑わしい表情だが、笑っていた
s.
あははっ、
s.
大丈夫だよ、
s.
こんな話、きっと忘れないよ
そんならんの顔が面白かったのか、
すちはそう言いながら満面の笑みを浮かべた
すちの表情は、会った当時とは違って晴れていた
n.
どうだろうね
n.
明日になったらすっかり忘れちゃったりして
なつは、感情が完全には戻っていないからか、
表情がまだ随分固いけれども、
少しだけ悪戯に笑ってすちをいじった
i.
いいんじゃないんすか?
i.
もっと楽しい日々が来るなら
そんななつに便乗するように、
あえて、後輩としての敬語を使って
いるまはニヤリと企むように笑った
m.
まぁ、今回もなんやかんや楽しかったしなぁ
m.
でも、またどこかで逢うんでしょ?
みことは今までのことを思い出すかのように
目を細めながら優しく微笑んだ

それに、みんなが一斉に反応して
次々と言葉を紡いでいく
l.
あったりまえじゃん!
i.
んま、俺達最強だしな?
m.
やっぱりみんなもそうよな!
n.
何があっても逢おうとするだろ?
s.
だねぇ、離れててもずっと一緒だし!
k.
何年先でもぜーったい逢うんだから!
遠くへと引っ越しても、
孤児院生活になっても、
海外へ留学に行っても、
将来から逃げていても、
現状が変化しなくても、
夢に向き合っていても、

この六人は、またきっとどこかで再会するだろう
それがたとえ、数年後だとしても、絶対に


秘密基地に集まって笑いあった夏の日に
l.
また何処かで思い出して
出逢えるかな
そう、何度でも口に出して
何度でも、繰り返す

それに、他の五人は無言で頷いて
らんは、また大きく吸い込んで、

涙を沢山溜めた目で、堂々とこう言った
l.
それじゃあ……
l.
みんな、さよなら
それを言うと、らんがなつに目配せをする
なつも、少しだけ瞳に涙をためながら、

今度は、少しだけ息を吸って、
笑って、こうみんなに言い切った
n.
あぁ、
n.
それじゃあ、また。
さようなら、なんかじゃない
さようなら、だとしてもそれはきっと一瞬だ

『また、何処かで、何度でも____』

その言葉を最後に、みんなが秘密基地に背を向けて

桃瀬藍は、遠い親戚の待つ新しい家へ
陽真那津は、上京する準備をしに自宅へ
雨乃こさめは、新しく借りたアパートへ
紫藤入真は、入ったばかりの孤児院へ
緑川須知は、自らが一人で住む家へ
黄瀬美湖斗は、海外に旅立つ為の空港へ

それぞれの行く場所へ足を進めた


彼らはもう、学生の頃に交わることはないのだろう

遠くへ引っ越す為転校したり
学校そもそもを辞めたり
留学で海外の学校に通ったり
上京して働き始めたり
そのまま学校生活を謳歌したり
家族と縁を切って過ごしたり

けれども、彼らは足を進め続ける

ここから先の未来を、
今は、大人の言いなりになろうとも
いつか自らの手で生み出して、何度でも描く為に






これは、いつの日か忘れ去られてしまう、そんな俺らの___






大切な、とある夏休みのサマータイム記録レコード
サマータイムレコード…fin.

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