こさめが、警察に捕まったらしい
みことが、親に連れていかれたらしい
いるまは、きっと独りになってしまった
なつが、助けを求める状況だったらしい
すちは、そんなみんなを
助けようとしてくれてるらしい
メッセージグループの通知を見て
既読無視のまま閉じてしまった俺は
今、何をしてるんだろう
二週間ぶりに見た、通知で
気がついてしまったことがある
ずっと、やってきたことは
全て無意味だったのかもしれない、と
なぜか、答えは簡単
だって、そもそも全部俺はできてないんだから
今日も、ベットの上で俺は動けなくなっている
一週間半ぐらい、一日一食で生きていたこの身体に、
身体を起こせる力なんて、存在しない
このまま餓死してしまっても、いいのかな、なんて
そう思ってしまう自分がいる
きっと、誰にも迷惑をかけないんじゃないか
そう思った、その瞬間だった
玄関の方で、ピンポーンと、
インターホンが鳴ったのが聞こえた
何か頼んでいたかなんて覚えていない
けれども、今はひたすらに動きたくなくて
俺は、ベットで横になって動かないでいた
宅配だとしても、来客だとしても
放置さえしていれば、留守だと思って
そのまま帰ってくれるだろう、と思って
けれども、そんな俺の期待を裏切るかのように
俺の耳に躊躇なく入ってきた音は
鍵が、開く音だった
状況なんて読み込める方が異常だった
だって、俺は今扉に鍵をかけてるし
親は死んだんだから来るわけないし
そうなると正体は強盗ぐらいしか思いつかないし
けれども、ドタバタと入ってきた足音は
明らかに一人のものじゃなくて
その次の瞬間、部屋のドアが勢いよく開けられて
知ってる声が、耳元まで届いた
それは、俺が一番大切な
同い年の彼の姿と
今苦しんでるはずで、
ここにどう頑張っても
集まろうとはできない
同じぐらい大切な四人の姿だった
何も考えられなくて、思わず戸惑う
なんで俺の家に来たのか
そもそも、どうやって鍵を開けたのか
俺には検討が何もつかなかった
けれども、それは本人達が
俺が聞く前に口を開いてくれた
その言葉に、思わず目を丸くした
その理由を、いるまとみことが
ゆっくり、口に出してくれた
思わず、そんな言葉
自分が返信早いなんて自覚はないし
なんなら忙しい時は既読すらつけない
普段と変わらないんじゃ、
なんて言おうとした時、
こさめが、ぎゅっと力を強めた
その言葉に、ハッとした
メッセージには、既読があるのに
それの存在をすっかり忘れていたことが
自分でも怖く感じた
みんなの気持ちもわかった気がする
俺だって、誰かが既読だけついていて
なのに音信不通なら、家に凸るだろうし
けれども、今の会話だけなら、
やっぱり家を空けた原理はわからなくて
俺は、唯一何も話していない
ひまちゃんに目線を送れば
もうそこに、答えはあった
そう言って、くるくる指を回すなつ
指の先には、ピンク色のタグのついた
俺の家の合鍵が一緒に回っていた
ふと、思い出した
小学生の頃、何かあったらと
いるまに全員分の合鍵を任せたのを
俺がすちに親のことを話した時に
いるまが、なつに鍵を託したことを
思わず戸惑って、口に出した言葉
そんな俺に対して、
戸惑うことなくすちが答えた
その笑顔が、あまりにも眩しくて
俺には、似合わないな、なんて思ってしまった
あれから、話を聞いた
こさめが逮捕されて、
みことが親に連れて行かれて、
独りぼっちになったいるまと、
よくわからなくなったすちが合流して、
みことの家に行って、留学のことを知って、
みことの家を説得して出ると、
なつからのメッセージが届いて、
なつのとこの虐待を追放して
四人で三日間調べまくって
こさめに会いに行って、示談を提案
そして昨日、示談を終わらせて
俺に会いに来た……らしい
本当にみんなのやったこととは思えなくて
思わず自分の耳を疑った
けれども同時に、
そんな大変な時に、
自分のことに精一杯になって何もできなかった
そんな自分が心底嫌になった
いるまが、ゆっくりとそれを聞いてきて
一瞬、黙りたくなったけれど
その後にする話のことを思い出して
俺は、そこから普通に口を開いた
改めて口に出すと、なんとなく笑えてくる気がした
こんな惨めで醜い話を、みんなにしてるんだな
っていう、その可笑しさで
高一の時に親を亡くしたこさめが、
そう俺の名前を口に出した
けれどもこさめは、苦しみがわかるからこそ
何も俺に言えないみたいだった
俺は、そんなこさめを見て、みんなを見て、
少し前から思ってたことを、静かに言い放った
俺の声に対して、
なつだけが、声をだせた
他のみんなは、驚きのあまり声すら出ていなかった
なんで、なんて口パクでしか言えないみことを見て、
俺は、静かに最近思ってることを口に出した
俺の、精一杯の、言葉を
そう言うと、みんなの顔つきが変わった気がした
どうしたのか、何があったのか
それを聞こうとするより先に、
いるまが静かに口を開いた
想像していた、言葉じゃなかった
正直、驚いてしまった
こんなにも早く、本音を当てられるとは
正直思わなかったから
それに続くように、なつが口を開いた
そこまで言うみことに、反論しようとしたけれど
その反論の口は、止めることにした
だって、みことが言いたいのは、
直接問題に関与したとか、そういうことじゃなくて
解決に必要だったメンバーを、
俺が集めたということだったから
みことは、止まることなく口を開く
俺の目を見ながら、まっすぐと言葉を紡いだ
そうみことに図星を突かれて、
思わず反射で目をそらす
けれどもそれは、嘘を肯定してるようなもので
みんなは、俺のことを心配そうな目で見てきた
……やっぱり、
俺に嘘はつけないのかもしれないな、
なんて、自分のことを嘲笑って
みんなのことを見ることができないまま、
自分の拳を見ながら、つぶやき始めた
世の中の人間は、異端が嫌いだ
異端を徹底的に排除しようとする
独りぼっちは、異端の証拠のようなもので
それを、象徴してるからこそ、
独りのままになってしまう
小学生ながらに、そんなことを思ってた
だからみんなを見た瞬間、怖くなった
親に異様に嫌われてる、いるま
親に無視をされ続ける、みこと
表面しか見られない、なつ
変わり者と見られる、こさめ
そして、
人がたくさん集っているのにも関わらず
楽しそうには見えなかった、すち
良い意味でも、悪い意味でも、
みんなはクラスで独りだった
独りだけの、独りぼっちだった
そんな、ポツリと零した言葉
助けたかった、守りたかった
俺が集めたんだから、その責任は背負うつもりだった
けれども俺は、気が付かないうちに
いるまとみことには気を使わせて
すちには心配をかけまくって
こさめとなつには守られていた
今だって、みんなに囲まれてる
俺は、結局何もできなかった
そんな俺に、何を言ったらいいのかわからないのか
みんなは、黙り込んでしまった
そんな状況を作ったのは自分であるはずなのに
そんな自分も、この空気が苦しいと思ってしまった
そんな沈黙をすぐに破ったのは、こさめだった
思わずバッと、こさめの顔を見ると
こさめは、優しく笑っていた
その言葉に驚きつつも頷く
集めた子、とその子自身が言うのは
少しどころか結構おかしかったけれど
その子は……こさめは、笑って言葉をさらに続けた
こさめの、その言葉に
俺は思わず困惑した
だって、作戦は、罪滅ぼしで、
その罪滅ぼしは、この前
すちが思い出したから終わったはずで____
思わず、その言葉に目を見開く
それは、元々すちが、楽しんでなくて
だから今度こそは、すちが楽しんでもらえるように
そう、願ってそう言ったけれど
みんなの解釈的には、その中に俺が入ってるらしい
すちは、さらに言葉を開いた
そして、俺の方を見て、
優しく、すちは笑った
その言葉だけ言って、すちは俺を優しく抱きしめた
ベットから起き上がる気力すらない俺を
優しく起こして、抱きしめて
全体重をすちに預けてしまってる状況でも
すちは、優しい笑顔のままで
それ以上、何も言わなかった
その行動に、気がつけば涙が溢れていて
そのまま、すちの胸に顔をうずめて
声を、絞り出した
そう、言葉を絞り出せば
すちが、優しく俺の頭を撫でてくれた
そうして、俺のおでこに、コツンとおでこをつけて
優しく、俺のことを見ながら微笑んだ
何も、わからない
もう何も、正解なんてない
けれども、すちのその言葉が
俺を動かす原動力になるのはわかって
俺は、涙で汚くなった顔のまま、
今できる精一杯の笑顔を浮かべた
理不尽だって当然だし
大人だって、臆病だし
まだ、独りぼっちだけれども
いつか、こんなセカイで
みんなと、生きていけるように____
次の話、最終話でもう投稿してるので
ぜひお楽しみください!











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。