朝、いつも通り食堂が賑やかだった
声が飛び交う中、私は少しだけ動きが遅かった
体が思う通りに動かなくて、
少しだけダルさもあった
蓮くんが気づいたかもしれない
私は笑って答えた
もちろん今も体はだるい
そして、スプーンを持つ手が少しだけ力ない
亮平くんもこちらをずっと見ている
そう言って立ち上がる
その瞬間ふらっと揺れる
ガタン
椅子がなるより早く、数人が同時に立ち上がる
みんなは口々に話し始める
私はびっくりした
額に手が触れる
亮平くんが手首をとる
翔太くんがスマホを出す
私は慌てた
でももう遅い
保健室
結局、クラスの代表みたいに3人が付き添う
廊下ですれ違う2年生が足を止める
2年生の顔がすっと変わる
お兄ちゃんも遠くから一言
自然に、守る空気
保健室で体温計が鳴る
先生が優しく言う
私は天井を見る
蓮くんが即答した
亮平くんも言う
一瞬、空気が止まる
私はきょとんとして、意味がわかっていなかった
放課後 寮
私は部屋で寝ていた
コンコンとノック音がする
ドアの外から声
机の上に置かれるゼリー、スポーツドリンク、冷えピタ、プリン
何故か山のように袋から出てくる
私は笑った
でも、ドアの向こうにまだ数人いる気配
少しだけ沈黙が続く
完全に見守り体制
夜のノック
熱は下がりかけている
寮の廊下は静か
さっきまで何人も来ていたのに
今は足音も聞こえない
コン、と小さなノック
私は体を起こした
翔太くんが入ってくる
手には小さな袋
スポーツドリンクとおかゆ
机に静かに置く
部屋の灯りは少し暗い
カーテンの隙間から月明かり
そう言って笑った
でも声は少しかすれていた
翔太くんはベッドの横に立ったまま、動かない
ポツリと言う
私は目を見開いた
昼間のあの瞬間
翔太くんは1番最初に立ち上がれなかった
1歩遅れた、それが悔しかった
静かな声、でもまっすぐ
心臓が少し跳ねる
でも、私は意味を深く考えない
でも、言葉は胸に残る
翔太くんはそっと手を伸ばし、額に触れる
距離が近くて静か
廊下の時計の音だけがここに響いている
少しだけ笑う
その言葉は強くない、誇示でもない、ただの事実
部屋の空気が柔らかくなる
その一言で十分だった
翔太くんは椅子に座る
即答、迷いなし
私は布団に戻った
目を閉じる、しばらく沈黙、
でも安心感がある
うとうとし始めたころ、かすかに声が聞こえる
返事はない、もう眠っている
翔太くんは少しだけ微笑んで立ち上がる
そして寝ている私の首筋に
触れるだけのキスをして帰って行く
そのキスは翔太くんしか知らない、秘密のキス
そして、ドアを開ける直前小さく振り返る
誰にも聞こえない声
廊下は静か
でも、その言葉は本物























編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。