
あれから私も隊長も
何事もなかったかのように日々を過ごしていた。
あの夜のことも, 指輪のことも
口にすることはない。
というよりも
そもそもそんなことを話すような
" ふたりきりの空間 "なんてものが
あの日以来ない, というのが実情だ。
ただ, マヤからは
「 あらぁ, その指輪どうしたのー? 」
なんて
聞かれたけれど。
「 どうしたのかは, 私が一番知りたいよ 」
とだけ返して
首元の それ を指で弾いた。
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
「 集合 」
隊長の声に
空気が切り替わる。
「 本日未明, 先日捉えた武装組織の残党が
郊外倉庫街で確認された 」
モニターに
地図と写真が映し出された。
「 今回は拠点の制圧が目的だ
無理な追撃は不要だ 」
てことは
これは, 難度の高い任務じゃない。
圧倒的な戦力差でも見せて
戦意を喪失させてしまえばいい。
「 スナイパー班は北側高所
突入班は南口から圧をかける 」
そのまま
隊長の視線が私を向く。
「 あなたのカタカナ名前, お前は俺と前線だ 」
「 了解です 」
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敵が籠城していた拠点の制圧は完了。
武装した残党は散り散りに撤退していく。
つまり, 私たちの実質的な勝利。
「 ここさえ押さえれば
どうこうできるもんじゃねぇ
予定通り, 深追いは不要だ 」
隊長の指示を聞きながら
散っていく敵の背を見下ろす。
……おかしい
敵の待避ルートは
ここしかないはずなのに。
「 いない…… 」
敵の前線にいた男が
見当たらない。
おそらく今回の騒動の
中核と思われる人物だ。
「 ……あぁ もう
やっかいだな, ほんと 」
「 あなたのカタカナ名前? 」
背後で聞こえるマヤの声も
気にせず飛び出した。
建物裏の死角
搬入口の影
崩れたコンテナの裏。
─── どこだ, どこにいる。
「 …… 、見つけた 」
その時, 影が動き
瞬く間に距離を詰められた。
近すぎて
これじゃあ, 銃が使えない
「 勘のいい女は嫌いじゃない 」
男が口角を上げると共に刃が閃く。
ひらりとかわして
一気に懐に潜り込み, 足を払った。
そのまま, 男が体制を崩す。
……終わりだ。
そう思った瞬間
男の袖口から滑り出たナイフが
横薙ぎに走った。
「 ……ッ! 」
「 最後まで, 油断は禁物だぜ? 」
直後, 腹部に鈍い痛み。
それでも男の腕を掴み
思い切り床へと叩きつけた。
骨が鳴る音と共に
男の力がだらりと抜ける。
「 ……はぁっ 、…はぁ …… 」
荒くなった呼吸を整えながら
血の滲む腹部を押さえた。
あぁ, クソ
面倒臭いことになったな……
⟡.·
気を失った男の襟を掴み
そのまま拠点へと引きずった。
「 確保しました 」
そのまま
隊長の足元に男を放る。
隊長は男を一瞥してから
私の腹部へと視線を向けた。
「 おい 」
「 …… 中核と思われる男です
単独で残り潜伏していました 」
「 ……おい 」
「 放っておけば再攻撃の可能性ありと
判断し捉えました, 結果 問題はありません 」
「 あなたのカタカナ名前・フリント 」
「 ……何でしょうか, 隊長 」
わざわざフルネーム。
本当しつこいな。
私が動いてこの男は確保できた。
もう, それでいいだろう。
「 その有り様で, " 問題ない " つもりか? 」
「 傷は深くありません
行動に支障は ─── 」
言い終わる前に
隊長が私へと近づく。
他の隊員が
息を呑む気配がして
隊長の手が, 私の顎を軽く上げた。
「 命令は聞けって
何回言わせりゃ理解する 」
「 ……あくまで, 合理的判断です 」
数秒間, 視線がぶつかった。
声色はいつものそれなのに
その瞳は, どこか
感情的に揺れているように見えた。
「 ……医療班 」
やがて
隊長はゆっくりと手を離した。
「 帰ったら, 執務室へ来い 」
𝐧𝐞𝐱𝐭…
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
フルネームを呼んで制止されたかった回
ちなみにファミリーネームの フリント は
" 火打石 " のことです!着火に使う鉱石!
夢主の性格にあうかなぁ、と思い……






いつもたくさんありがとうございます!!😭😭
月さん!🔦嬉しいです🥺⟡.·
いつも🤍もしていただいてモチベになってます🌼
次回, ふたりきりの執務室で何が起きるのか
お楽しみに … 🚬













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。