第20話

 き っ か け 
565
2026/03/04 03:43 更新





あれから私も隊長も
何事もなかったかのように日々を過ごしていた。

あの夜のことも, 指輪のことも
口にすることはない。


というよりも
そもそもそんなことを話すような

" ふたりきりの空間 "なんてものが
あの日以来ない, というのが実情だ。



ただ, マヤからは

「 あらぁ, その指輪どうしたのー? 」

なんて
聞かれたけれど。



「 どうしたのかは, 私が一番知りたいよ 」

とだけ返して
首元の それ を指で弾いた。





✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼


「  集合  」



隊長の声に
空気が切り替わる。



「 本日未明, 先日捉えた武装組織の残党が
郊外倉庫街で確認された 」



モニターに
地図と写真が映し出された。



「 今回は拠点の制圧が目的だ
無理な追撃は不要だ 」



てことは
これは, 難度の高い任務じゃない。

圧倒的な戦力差でも見せて
戦意を喪失させてしまえばいい。



「 スナイパー班は北側高所
突入班は南口から圧をかける 」



そのまま
隊長の視線が私を向く。



「 あなたのカタカナ名前, お前は俺と前線だ 」

「 了解です 」




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敵が籠城していた拠点の制圧は完了。
武装した残党は散り散りに撤退していく。


つまり, 私たちの実質的な勝利。




「 ここさえ押さえれば
どうこうできるもんじゃねぇ
予定通り, 深追いは不要だ 」




隊長の指示を聞きながら
散っていく敵の背を見下ろす。








……おかしい


敵の待避ルートは
ここしかないはずなのに。




「 いない…… 」




敵の前線にいた男が
見当たらない。

おそらく今回の騒動の
中核と思われる人物だ。




「 ……あぁ もう
やっかいだな, ほんと 」


「 あなたのカタカナ名前? 」




背後で聞こえるマヤの声も
気にせず飛び出した。


建物裏の死角
搬入口の影
崩れたコンテナの裏。




─── どこだ, どこにいる。






「 …… 、見つけた 」




その時, 影が動き
瞬く間に距離を詰められた。

近すぎて
これじゃあ, 銃が使えない




「 勘のいい女は嫌いじゃない 」




男が口角を上げると共に刃が閃く。

ひらりとかわして
一気に懐に潜り込み, 足を払った。


そのまま, 男が体制を崩す。


……終わりだ。




そう思った瞬間

男の袖口から滑り出たナイフが
横薙ぎに走った。




「 ……ッ! 」

「 最後まで, 油断は禁物だぜ? 」




直後, 腹部に鈍い痛み。


それでも男の腕を掴み
思い切り床へと叩きつけた。

骨が鳴る音と共に
男の力がだらりと抜ける。




「 ……はぁっ 、…はぁ ……




荒くなった呼吸を整えながら
血の滲む腹部を押さえた。


あぁ, クソ
面倒臭いことになったな……




⟡.·




  気を失った男の襟を掴み
そのまま拠点へと引きずった。



「 確保しました 」



そのまま
隊長の足元に男を放る。

隊長は男を一瞥してから
私の腹部へと視線を向けた。




「 おい 」


「 …… 中核と思われる男です
単独で残り潜伏していました 」




「 ……おい 」

「 放っておけば再攻撃の可能性ありと
判断し捉えました, 結果 問題はありません 」






「 あなたのカタカナ名前・フリント 」




「 ……何でしょうか, 隊長 」



わざわざフルネーム。
本当しつこいな。


私が動いてこの男は確保できた。
もう, それでいいだろう。




「 その有り様で, " 問題ない " つもりか? 」

「 傷は深くありません
行動に支障は ─── 」




言い終わる前に
隊長が私へと近づく。


他の隊員が
息を呑む気配がして


隊長の手が, 私の顎を軽く上げた。




「 命令は聞けって
何回言わせりゃ理解する 」

「 ……あくまで, 合理的判断です 」




数秒間, 視線がぶつかった。


声色はいつものそれなのに

その瞳は, どこか
感情的に揺れているように見えた。




「 ……医療班 」




やがて
隊長はゆっくりと手を離した。





「 帰ったら, 執務室へ来い 」





𝐧𝐞𝐱𝐭…



✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼



フルネームを呼んで制止されたかった回
ちなみにファミリーネームの フリント は
" 火打石 " のことです!着火に使う鉱石!
夢主の性格にあうかなぁ、と思い……

🐰
  Thank you 🔦   
  いつもたくさんありがとうございます!!😭😭

月さん!🔦嬉しいです🥺⟡.·
いつも‎🤍もしていただいてモチベになってます🌼

次回, ふたりきりの執務室で何が起きるのか
お楽しみに … 🚬

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