( ピンポーン
可愛いあなたが来た合図に僕は玄関へ向かってあなたをお出迎えする 。
『 会いたかったよぉぉ 』
「 ほら 、 寒いでしょ ? 入って入って ~ 」
今は秋頃で夜になれば少し肌寒い 。
僕の恋人に風邪を引かす訳にはいかないから僕はあなたを家の中に入れた 。
やっぱりあなたの手は少し冷えている 。
「 ほら ~ 冷えてんじゃん !! 」
『 シャオに暖めてもらおうと思いまして 』
「 嘘つけ ㅎ てか 、 遅かったね ? 」
『 あ ー まぁちょっと 、 』
「 ん ? そう 、 」
シャオの家までの道がわかんなくなっちゃったなんて言えないよ 、
行き慣れたこの道まで忘れてしまうなんて 。
この事実は私の心を締め付けた 。
段々 、 シャオとの日々の色を失うような感覚 。
「 じゃじゃ ー ん !! 」
『 わ 、 美味しそ ~~~ !!!! 』
あなたは喜んでくれたみたいで嬉しくなった。
右側に一つだけある笑窪を作って笑う君がとても大好きだった 。
ずっと見ていたかった 。
「 あなた ~ お箸取ってくれる ~ ? 」
『 分かった !! 』
お箸を取って 、 とあなたに頼んだものの
あなたは一向に戻ってこない 。
おかしいなぁってキッチンの方を覗くと 、
お箸の場所くらい分かるはずのあなたが何処にあるか分からない様子だった 。
おかしい 。
『 あれ 、 何処だっけ … 』
「 あなた ? そこの引き出しだよ ? 」
『 あ 、 そうだったそうだった … 、 !! 』
あぁ 、 もう進行してるんだ 。
些細な事でも少しずつ忘れてる 。
少しずつ消えている 。
そんな大きな事実を 、 私には受け止めきれない 。
どうして私なの 、どうして 、 ずっとシャオと居たいのに 。
答えのない疑問が溢れて止まらない 。
私の胸を締め付けてそのまま潰しそうで 、
今にも涙が溢れそうで 、
「 あなた 、 なんで泣いてるの 、 」
『 あれ 、 なんでだろ 、 っ ㅎ 』
私の目からは 、 とめどなく涙が零れた 。
シャオと離れたくないよ 、 って
ずっと一緒に居たいよ 、 って
愛してるよ 、 って
伝えるかのように 。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!