第4話

兄の目の色。-Second story-
81
2026/03/12 08:25 更新

問題の女子は、学校からの注意を受けたはずだった。

けれど、数日後。

鼓多の部活が終わり、下校する夕方。

校門の外に、立っていた。




他校の女子生徒
待って
後ろから迫る声に、鼓多の足は止まる。
他校の女子生徒
どうして無視するの?
鼓多
…話すこと、ないよ。
なるべく、穏やかに。

恐怖で震える手を握りしめて。
他校の女子生徒
好きなのに。

距離がどんどん近付く。

鼓多は、一歩下がる。
他校の女子生徒
写真だって、みんな喜んでくれてたよ?
鼓多くん人気者だし、


その言葉で、何かが動いた。

鼓多ではない。

その少し後ろにいた人。



「ーー喜んでません。」



低く、静かな声。

振り向くと、



結侑が立っていた。














仕事帰りの私服姿。
隣には、自転車を押している制服姿の絇仁も。
鼓多
ゆうくん…
女子は、突如現れた大人に、少し怯む。
他校の女子生徒
だ、誰ですか、
結侑
星導鼓多の兄です。
結侑が一歩、前に出る。

空気が変わる。

怒鳴らない。
睨みつけない。

でも、
完全に冷たい。
結侑
あなたのしていることは、“好意”ではありません。
ただ、淡々と話す。
結侑
無断撮影、無断投稿、待ち伏せ。
全て、迷惑行為です。
他校の女子生徒
でも、私は好きでーー
女子が言い返した、その瞬間。
結侑の声が、少し強くなる。
結侑
好きなら、傷つけていいんですか?

鼓多の目が、少し見開かれる。
結侑
怖がっているのが、見えませんか?

静かな空間に、音を立てて風が通った。

その圧は、怒鳴られるよりも重い。
結侑
弟は、優しいから我慢した。でも私は違う。
次があれば、法的手段を取るつもりです。
女子の顔色が変わる。
初めて、自分がやってしまったことの重大さを知る。
他校の女子生徒
…ごめんなさい
小さく呟いて、走り去っていった。












しばらく、沈黙が続いた。
鼓多はちらっと横を見る。

結侑の手が、僅かに震えていた。

鼓多
ゆうくん
絇仁
ゆさん
鼓多と絇仁が呼ぶと、はっと我に返って、いつもの優しい目に戻る。
結侑
……怖かったね、
鼓多は、静かに頷く。
鼓多
ゆうくん、かっこよかった。
正直な感想に、結侑は困ったように笑う。
結侑
そうかな
鼓多
うん、かっこよかった。
その言葉に、少し目を細める。
結侑
怒るの、ほんとに得意じゃないんだ。
鼓多
知ってる
結侑
でもね。
少しだけ、真顔に戻る。
結侑
大事なもの傷つけられるのは、我慢しないって決めてるの。
鼓多の胸が、じんと熱くなる。
鼓多
俺、ちゃんと言う。嫌なことも
結侑
うん
鼓多
一人で抱えるの、やめる。
結侑
そうだね。



帰り道、黙っていた絇仁が口を開く。
絇仁
ゆさん、ヒーローみたいだった
結侑は苦笑する。
結侑
こったんとくにおの前では、
ただの兄だよ。
でも、その背中はやっぱり大きくて、強い。
瀬導家の長男は、滅多に怒らない。

でも。

大切なものに触れられた時だけ、
静かに、本気で牙を剥く。

プリ小説オーディオドラマ