問題の女子は、学校からの注意を受けたはずだった。
けれど、数日後。
鼓多の部活が終わり、下校する夕方。
校門の外に、立っていた。
後ろから迫る声に、鼓多の足は止まる。
なるべく、穏やかに。
恐怖で震える手を握りしめて。
距離がどんどん近付く。
鼓多は、一歩下がる。
その言葉で、何かが動いた。
鼓多ではない。
その少し後ろにいた人。
「ーー喜んでません。」
低く、静かな声。
振り向くと、
結侑が立っていた。
仕事帰りの私服姿。
隣には、自転車を押している制服姿の絇仁も。
女子は、突如現れた大人に、少し怯む。
結侑が一歩、前に出る。
空気が変わる。
怒鳴らない。
睨みつけない。
でも、
完全に冷たい。
ただ、淡々と話す。
女子が言い返した、その瞬間。
結侑の声が、少し強くなる。
鼓多の目が、少し見開かれる。
静かな空間に、音を立てて風が通った。
その圧は、怒鳴られるよりも重い。
女子の顔色が変わる。
初めて、自分がやってしまったことの重大さを知る。
小さく呟いて、走り去っていった。
しばらく、沈黙が続いた。
鼓多はちらっと横を見る。
結侑の手が、僅かに震えていた。
鼓多と絇仁が呼ぶと、はっと我に返って、いつもの優しい目に戻る。
鼓多は、静かに頷く。
正直な感想に、結侑は困ったように笑う。
その言葉に、少し目を細める。
少しだけ、真顔に戻る。
鼓多の胸が、じんと熱くなる。
帰り道、黙っていた絇仁が口を開く。
結侑は苦笑する。
でも、その背中はやっぱり大きくて、強い。
瀬導家の長男は、滅多に怒らない。
でも。
大切なものに触れられた時だけ、
静かに、本気で牙を剥く。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。