放課後。
中学校の廊下は、部活に向かう足音で賑やかだった。
でも、保健室の中だけは静か。
カーテンが閉まったベッドの上で、——
絇仁は、眠っていた。
小さく丸くなって、すぅすぅと寝息を立てている。
今日は少しだけ頑張った日だった。
午前中は保健室で過ごしていて、
午後の授業を、一時間だけ教室で受けれた。
それだけでも、絇仁にとってはとても大きな挑戦だった。
そして。
疲れてしまったのだろう。
授業のあと保健室に戻ってきて、そのまま眠ってしまったのだ。
保健室の扉が、静かに開く。
入ってきたのは、結侑。
丁度、今日の仕事が終わったところで、荷物を取りに戻って来たようだ。
電気を落とそうとして、ふとカーテンを見る。
そっと近付き、カーテンをゆっくり開けると、
絇仁が、ぐっすり眠っていた。
結侑は小さく笑い、
額にかかった前髪を、そっとよける。
絇仁は目覚めない。
結侑は少し考えてから、静かにしゃがんだ。
腕を、絇仁の背中と膝の下にまわす。
ゆっくり。
本当に、ゆっくり—
絇仁を抱き上げた。
絇仁が、少しだけ動く。
結侑は、小さな声で言った。
背中を軽くぽんぽんすると、
絇仁はまた、安心したように眠った。
結侑は保健室の電気を消して、廊下へ出る。
夕方の学校は、少しオレンジ色に染まっていた。
階段をゆっくり降りると、
絇仁の頭が肩に寄る。
結侑は、少し寂しそうに笑う。
外に出ると、涼しい風が吹いていた
そのとき。
聞き慣れた、元気な声。
部活帰り。
ジャージ姿の、鼓多だった。
鼓多は、絇仁の姿を見て、目を丸くする。
結侑が持っていた二人分の荷物を、軽々と肩にかけると、鼓多は絇仁の顔を覗いた。
鼓多は、少し驚いたように足を止めた。
そして、優しく笑う。
結侑は頷く。
また、二人で歩き出した。
そのとき、
絇仁が、小さく呟いた。
誰もがそう思ったけれど、絇仁はまだ夢の中にいるようだ。
鼓多は愛おしそうに、絇仁の寝顔を見つめる。
結侑も、柔らかく微笑む。
夕焼けの道を、三人で歩く。
絇仁は安心したような顔で眠ったまま。
結侑は、そっと思う。
星導家の“ゆうくん”は、
今日も。
ずっと、優しかった。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。