ギュビンとユジンを見送り、片付けも済ませた夜。
ハンビンとハオは、静かになった自宅の寝室に並んで入っていった。
パジャマのボタンをとめながら、ハンビンがぼそっと呟く。
「なんか……あれだね、ちょっと寂しくなるね、帰ると」
「まあね。あの4人の空気、俺もけっこう好きだったな」
ハオが小さく笑って、ベッドに腰を下ろす。
ハンビンはそのままハオの隣に座って、毛布を巻き込むようにして身体を寄せた。
「……ギュビンさ、昔よりだいぶ柔らかくなった気がする」
「うん。ユジンのことになるとね、特に。今日も、デレッデレだったし」
「ユジンもさあ、なんか……すごいな。あの場であそこまで堂々とギュビンに甘えんの、尊敬する」
「で、それ見て照れてるギュビンの顔が……おもろかったなぁ〜」
「わかる〜〜っ!」
2人で笑い合いながら、自然と視線が重なる。
柔らかいまま、吸い寄せられるように、キスをした。
音も立たないくらいの、そっと唇を重ねるキス。
一度離れたあと、またすぐに重なる。
「……ねえ、今日のモノマネのとこ、めっちゃ笑ったけど、あれさ、俺ほんとにそんなに甘ったるい?」
「うん。甘ったるいよ。俺の前では特に」
「じゃあ……ハオは?」
「俺?……俺はさ、ハンビンにしかそういう顔しないから、モノマネされても……なんかちょっと恥ずかしかった」
「ふふ。かわいい」
ハンビンが口元をほころばせて、ハオの頬に指を這わせる。
ハオもその手を包みこむように握りながら、低く呟いた。
「今日、たくさん笑ったけど、今が一番幸せかも」
「……俺も」
ベッドに横になり、互いの温度を確かめるようにそっと抱き合う。
「ね、ハンビナ」
「ん?」
「久しぶりにさ……何もしないで、ただギュッてして寝よっか」
「……うん。いいよ」
何も言わず、何も足さず。
ぴったりと重なった体温のなかで、深く息を吐いた。
隣の部屋ではきっと、ユジンとギュビンも同じように静かな夜を過ごしているんだろう。
そう思うと、なんだか胸の奥がぽかぽかした。
眠りに落ちるまで、何度も何度も、肩を抱きしめる腕に力を込める。
2人でいるだけで、幸せだって思える夜。
そんな日常が、これからもずっと続いてほしいと願いながら──
___
朝の7時半。
鳥のさえずりと、少し冷えた秋の風が窓の隙間から入り込む静かな朝。
ハオがそっと身を起こし、隣でまだ眠そうに目をこするハンビンの耳元で囁いた。
「ビニ、起きて。ねえ、今日ドッキリやるんでしょ?」
「……ん、ねむい。けど……やる。ギュビンとユジン、寝起きで驚かせよ?」
2人は小声でニヤリと笑い合い、ハンビンがそっと寝室の窓を開ける。
その窓は、ギュビンたちの家のリビングの真向かい。
何も知らずに寝てる2人に聞こえるようにと、ハオがわざとらしく甘ったるい声を出し始める。
「ハンビナ……もう、朝なのにそんなこと言って……♡」
「だって、ハオが可愛すぎてさぁ……我慢できないかも……♡」
ハンビンもなりきって、わざと息を漏らすような声で芝居を続ける。
そのまま2人で布団をバフバフさせたり、わざとキス音を立てたり、軽くベッドをきしませてみたりして――
完璧に“それっぽい音”を演出。
もちろん、やってることはただのコントだ。
一方その頃、隣の家。
ギュビンは目を覚ましたばかりで、まだぼんやりした意識の中で何かを聞いた。
「……ん? これ、ハンビンヒョンと……ハオヒョンの声じゃ……?」
ユジンも寝返りを打って耳を澄ませる。
「……え? え? え???」
「いや、ちょ、まって、これマジなやつ!?朝から!?」
「てか窓開いてんじゃん!?バカなの!?近所迷惑だよ……!」
顔を真っ赤にしたギュビンが布団をかぶり、ユジンは枕を持って頭を押さえる。
そのまま5分ほど続いた後――
突然、隣の窓からハンビンの声が大きく響いた。
「おーい、ギュビーン!ユジーン!おはよーー!!」
「ドッキリ大成功〜〜〜♡♡」
ユジン「…………はぁ!?!?」
ギュビン「……ちょっと2人とも、マジで朝からふざけんな……!」
ふてくされた顔のギュビンが窓から顔を出すと、向かいの窓には笑い転げてるハオとハンビン。
「なにしてんすかほんとに……!」
「ドッキリか〜い……心臓に悪い……」
するとユジンが、ふいに笑いながら「でも、まあ……可愛かったから許す」と呟き、ギュビンが思わず「それは俺が言う台詞だろっ」と拗ねる。
ハオが最後に一言、「なんだかんだ、平和な朝ってことで♪」と笑って、4人の声が静かな朝の街に響き渡った。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!