朝、スタジオの控え室に集まったメンバーたち。
薄暗い部屋の中で、莉梨花は鏡に映る自分の表情をぼんやりと眺めていた。
頭の中でぐるぐると考えが巡る。
けれど、みんなの前では笑顔を作らなければならない。
これはいつもの仮面だ。
控え室の外から、紗由理の明るい声が聞こえてくる。
快斗の冗談も聞こえる。
藍貴の軽口も。
莉梨花はその声に少しだけ安心を覚えた。
(みんな、いつもありがとう)
スタジオに入り、ヘッドフォンを装着。
録音ブースの小さな部屋の中、孤独を感じる。
「深呼吸しなきゃ」
小さく息を吐いて、マイクに向かう。
声は震えがちだった。
でも、一音一音、丁寧に、自分の感情を乗せて歌おうとする。
莉梨花は微かに頷き、ほんの少しの自信を感じた。
休憩中、みんなが和気あいあいと話す声が聞こえる。
自分だけがここにいるのは少し違う気がして、胸がぎゅっとなる。
でも、仲間の支えがある。
それだけで、次も頑張れる気がした。
最後の通し録音。
息を合わせて歌う瞬間、心の中で静かに誓った。
「負けない。ここから始まる」
拍手と笑顔があふれる部屋の中、莉梨花はまだ仮面を外せずにいたけれど、確かな一歩を踏み出したのだった。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!