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第1話

マリン船長のMV制作、想像以上に地獄
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2026/03/01 10:32 更新
 その日、私は一つの事実を知った。

 ――MV制作は、静かな作業ではない。
宝鐘マリン
ねえ聞いて!?まずね、最初はドーン!って感じで始まってほしいの!!
 目の前で、マリン船長が机を叩く。
 ドーンって何っ。
宝鐘マリン
で、そこからキラキラ〜ってして、エモくなって、最後は“優勝”で締めたい!
 情報量が多い…
あなた
優勝って、どういう映像で……
宝鐘マリン
優勝は優勝よ!!
 説明を放棄された…
 私は一旦、深呼吸した。
 これは仕事。冷静にいこう。

 ……その判断は、甘かった。
兎田ぺこら
それさ、爆発させたら良くないぺこ?
 突然入ってくる声。
 兎田ぺこらだった。
宝鐘マリン
爆発!?MVだよ!?
兎田ぺこら
派手な方が伸びるぺこ!
 再生数理論やめろっ。
白銀ノエル
じゃあ、最後にみんなで踊るのはどうかな?
 白銀ノエルがほんわか提案する。
宝鐘マリン
踊る…?
白銀ノエル
うん!重たい鎧着て!
 誰が?
不知火フレア
いや、それMVの尺足りなくない?
 不知火フレアが冷静に刺してくる。
不知火フレア
そもそも、テーマなに?
 全員が黙った。

 ……テーマ、無かった。
宝鐘マリン
船長がかわいい、でしょ?
マリン船長が自信満々に言った。
あなた
それは否定しないけどさぁ
 私は机に突っ伏した。

 気づけば、
 ・爆発案
 ・ダンス案
 ・鎧案
 ・キラキラ(概念)
 が同時進行で進んでいる。

 誰も止めない。
 誰もまとめない。
宝鐘マリン
ねえあなたちゃん。これ入れられる?
 マリン船長が満面の笑みで聞いてくる。
あなた
努力はします…
 その瞬間、私は悟った。

 このMVが完成するかどうかより、
 私の正気が持つかどうかの方が問題だ。
宝鐘マリン
でもさ!
兎田ぺこら
〜〜ぺこ!
白銀ノエル
えへへ
不知火フレア
…大丈夫?
 ――今日も3期生は、元気です。

そして私は、二度と“軽い気持ちでMV制作を引き受けない”と心に誓った。

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