続きです!
――そして一年後。
リウはすっかり部署の中心メンバーになっていた。
上司の言葉にソンホも誇らしくなった。
その日の夜。
仕事終わりの公園で二人は並んで座っていた。
少し冷たい風が吹く。
ソンホは何度も深呼吸を繰り返していた。
言葉にした瞬間、自分の心臓の音が聞こえた気がした。
リウは目を見開く。
沈黙。
数秒が何分にも感じた。
やがてリウが小さく笑った。
ソンホは言葉を失った。
リウは照れながら続ける。
その瞬間、世界が少しだけ明るく見えた。
こうして二人は恋人になった。
付き合い始めてからの日々は幸せだった。
朝の「おはよう」。
仕事終わりの「お疲れ様」。
些細なことでも嬉しかった。
しかし、その幸せは少しずつ形を変えていく。
付き合い始めて数か月後。
新入社員が入社した。
そしてリウは教育係に任命された。
上司の言葉通りだった。
後輩たちはみんなリウを慕った。
仕事を教えるのも上手く、質問にも丁寧に答える。
当然、一緒にいる時間も増える。
そんな光景をソンホは遠くから見ていた。
最初は気にならなかった。
でも。
昼休みに送ったメッセージ。
返事は三時間後だった。
仕方ない、そう思う。
頭では理解しているけどそれでも寂しかった。
最近は昼休みも別々。
帰りも時間が合わない。
会話も減った。
気付けばソンホはため息ばかりついていた。
ある日の残業後。
オフィスには数人しか残っていなかった。
リウは新人社員の隣で資料を確認している。
笑顔で。
優しく。
その姿を見た瞬間。
ソンホの胸が妙に苦しくなった。
仕事だと分かっている。
分かっているのに。
なんなのこの気持ち。
その夜。
二人で帰ることになった。
駅までの道。
いつもなら楽しい時間なのに沈黙が続く。
ソンホは視線を逸らした。
リウはソンホの前に立ち止まった。
心配そうな顔。
その顔を見た瞬間、ソンホは観念した。
リウは瞬きを繰り返した。
言葉が止まらない
ソンホは苦笑した。
数秒の沈黙。
そして。
リウが突然笑った。
リウは嬉しそうだった。
ソンホは目を見開く。
リウは照れくさそうに笑う。
夜風が二人の間を通り抜ける。
リウは一歩近付いた。
そして小さく続ける。
ソンホは思わず笑った
その一言だけで十分だった。
胸の中に溜まっていた不安が少しずつ消えていく。
リウは笑う。
並んで歩き出す。
忙しい日々はこれからも続く。
仕事も増える。
すれ違うこともあるだろう。
それでも。
落ち込んでいた新人時代に差し伸べられた手を、リウは忘れない。
そしてソンホも。
あの日、自分を見上げて「ありがとうございます」と笑った後輩を忘れない。
二人は肩を並べて歩いていく。
今度は先輩と後輩としてではなく。
恋人として、同じ未来へ向かって。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!