第4話

八輪くんとの約束
17
2022/08/10 05:42 更新
八輪
八輪
あなたの下の名前、寝癖ついてる。急いできたの?
(なまえ)
あなた
う、うん…ちょっと寝坊しちゃって…
八輪
八輪
へぇ…そう
(なまえ)
あなた
………
私のはねた髪の毛をくるくると触りながら、ご機嫌そうに歩く八輪くん。
痛い痛い、視線が痛い…!
登校中に八輪くんと出くわしてしまった。
そのまま一緒に登校してきたのがいけなかったんだと思う。
教室にたどり着くまで、どれだけいろんな人に見られたことか…。
特に女の子たちのヒソヒソ声とか、私を見る目が怖くてしょうがない。
恵理
恵理
………なにこれ
(なまえ)
あなた
あ、恵理…!
唯一助けを求められる恵理を発見し、すぐさま声をかける。異様な光景を見るよな目で私を見ていた。
八輪
八輪
松坂さんおはよう
恵理
恵理
…おはよ。ねぇあなた、これどういう状況?
私と八輪くんを交互に見ながら混乱している様子の恵理。
うん…それは私も聞きたいかな…。
(なまえ)
あなた
とりあえず一旦教室入らない…?
他のクラスの人にも見られてるし…ね?
そうして教室の隅っこ…と言っても、私の席へ移動した。
私の席は窓側の一番後ろで、その隣に八輪くんの席がある。
恵理
恵理
で、2人は友達になったの?
それとも、何か違う関係になったわけ?
(なまえ)
あなた
えぇと…ちょっと違う、かな…
いきなり「八輪くんとお付き合いすることになりました」なんて言っても、どうしてそうなった?ってなるし。
ここは順を追ってゆっくり…
八輪
八輪
昨日からあなたの下の名前と付き合うことになったんだ。改めてよろしく
そう思っていた矢先、サラッとなんでもないみたいな口調で宣言した八輪くん。
恵理
恵理
…それ、ドッキリか何か?
八輪
八輪
違うよ。
そんなめんどくさいことしたくない
恵理
恵理
…はぁ…なんでそうなったのか全然分からないんだけど
やっぱり言われた…まあでもそうだよね。
昨日までただのクラスメイトだった人といきなり付き合うだなんておかしな話だ。
(なまえ)
あなた
ちょっと急だったから驚かせちゃったと思う。でも、私もちゃんと考えてのことなの。詳しくはまたゆっくり話すね
恵理
恵理
…はぁ、わかった。
でも、なるべく早くしてよね
(なまえ)
あなた
うん、もちろん!
納得…してもらえたかは分からないけど、とりあえず一件落着…かな?
恵理
恵理
八輪、あんたあなた泣かせたらただじゃおかないから
八輪
八輪
そこは心配しなくて大丈夫。
僕、女の子泣かせたこと1度もないから
恵理
恵理
いや、誇らしげに言われてもね…
なんだかんだありながらもそのままSHRを迎え、お昼休みまでは特に何事もなく時間が過ぎていった。
(なまえ)
あなた
恵理、お昼食べよー
いつものようにそう声をかけ恵理の席に向かおうとすると、腕をがしっと掴まれた。
八輪
八輪
ちょっと、何普通に松坂さんと食べようとしてるの
(なまえ)
あなた
え…?だってもうお昼休み…
表情の変化が乏しい八輪くんだけど、私にもわかるくらい呆れている。

私何かおかしいこと言った…?
恵理
恵理
…あなた、私は今日ちょっと用事があるから八輪と食べてきな。
多分しばらくは続くと思う
(なまえ)
あなた
へ…そんなこと何も聞いてな…
八輪
八輪
だってさ。じゃあ行こっかあなたの下の名前
(なまえ)
あなた
???
何が何だかわからないまま、八輪くんに引っ張られてどこかへ向かう。
八輪
八輪
松坂さんって、気遣いしてくれていい人だね
意外だとでも言うような声色でそう言う八輪くん。
(なまえ)
あなた
恵理はいい子だ…けど、さっきのなんか不自然じゃなかった?
若干顔ひきつってたような気もする…。
八輪
八輪
気のせー気のせー。
ほら、ここ段差あるよ。気をつけてね
(なまえ)
あなた
わ、わかった…って、ここ屋上なんじゃ…?
ギィ、と扉を開けると、青空が広がっていた。
普通なら入れなしい、入ってはいけない場所のはず。
そこにいとも簡単に入れたことへの驚きと、屋上に来れたという嬉しさが相まって、なんとも言えない顔になる。
(なまえ)
あなた
もしかして、私今校則破ってる…?
八輪
八輪
現在進行形でね
(なまえ)
あなた
うわぁっ、ヤダヤダ、戻ろうよ…
ここにいたくないと言えば嘘になるが、先生に叱られる方がよっぽど嫌だ。
一度来られただけで十分。
八輪
八輪
もう来ちゃったんだから遅いよ。
それに、見つからなきゃいいでしょ
(なまえ)
あなた
そんな、バレなきゃ犯罪じゃないんですみたいに言わないでよ…
八輪
八輪
細かいことは気にしない。それに、ここなら誰からも見られないでゆっくりご飯食べれる。ジロジロ見られるの嫌いなんだよね
それを八輪くんが言っちゃう…?
いつも注目を集めてる人が何言ってるんだか。
八輪
八輪
はい、ここ座って。お昼休みなくなるよ?
(なまえ)
あなた
もう…今日だけだよ?
仕方なく八輪くんが座った隣に腰を下ろすと、八輪くんは何やら満足げに頬を緩めた。
(なまえ)
あなた
…どうして笑ってるの?
八輪
八輪
…え、笑ってる?見間違いでしょ
え、自覚ないのか…。
八輪
八輪
そんなことより、あなたの下の名前のお弁当美味しそうだね?
私が持ってきたお弁当を見てそう言う八輪くん。
当の本人は菓子パン一つだけ。
…これはもしや、狙ってるな?
(なまえ)
あなた
…ちょっと食べる?
八輪
八輪
いいの?
(なまえ)
あなた
うん。大したものじゃないけど…
お弁当は私が朝起きて作っている。
両親は共働きだから朝は忙しく、家を出る時間も早いため自分で作っているのだ。
八輪
八輪
食べさせてよ。卵焼きがいいな
(なまえ)
あなた
た、食べっ…!?
わ、私があの「あーん」をするの…?
八輪くんに…?
八輪
八輪
いいじゃん。僕たち付き合ってるんだよ?それくらい普通にするでしょ
まぁ、たしかにそれはそうかもしれない…。
(なまえ)
あなた
〜っ、あ、あーん…
どうしよう、これ想像以上に恥ずかしい…!
今までこういうのはしたことなかったからすごく緊張するし、何より八輪くんの顔が良すぎて近くで直視出来ない…。
八輪
八輪
ん…うん、美味しい
(なまえ)
あなた
お、お口にあったならよかったです…
八輪
八輪
あなたの下の名前ん家の卵焼きは甘めなんだね
へぇ…という感じでもう1度卵焼きを見る。
(なまえ)
あなた
あ、うん、そうだよ。八輪くんの家は?
八輪
八輪
俺は甘いのが好き。
でも家族はしょっぱい派
こういうのはそれぞれ好みがあるから難しいとは思う。でも、八輪くんは甘い派の人だったんだ。
よかったな。
八輪
八輪
てゆーか、これ誰が作ってるの?全部美味しそう
(なまえ)
あなた
これは私が作ってるよ。料理は嫌いじゃないんだ
八輪
八輪
え…
むっ…何その、嘘でしょ?みたいな顔。
そんなに意外なこと?
八輪
八輪
あなたの下の名前って料理下手そうなイメージだったのに…ちょっと残念
(なまえ)
あなた
ええっ…?なんでそこでがっかりするの?
普通ならイメージアップするとこじゃない?
私に何を望んでいるのやら…。
八輪
八輪
あなたの下の名前は台所でアタフタしてる場面が似合う
(なまえ)
あなた
酷い…!そこまでおっちょこちょいじゃないよ!
私そんなふうに思われてたの?
というか、なんでそんな私を彼女にしようと思ったのかも理解し難い。
八輪
八輪
あの転んだシーン見て、おっちょこちょいじゃないって言う方が無理あると思うけど?
(なまえ)
あなた
…それはほら、ついうっかり…
あのことを言われたら何も言えない。
絶対転んじゃダメなときに転んだからな…。
八輪
八輪
…でも、僕はそれくらい可愛げある方が好きってこと。だから無理して頑張んなくていいんじゃない?ちょっとくらいドジな方が見てて面白いし
(なまえ)
あなた
…へ?
八輪
八輪
僕はそういうところも含めて、あなたの下の名前と付き合ってみたいって思ったんだし。料理好きなのはいいけど、僕以外に食べさせたらダメだからね?
(なまえ)
あなた
っ…そんなこと言われても…
急にどうしたんだろう…なんか八輪くんの纏う雰囲気が、すごく柔らかいものになってる気がする。
嫉妬じみた言葉とか、ムスッとした表情とか…まるで好きな子に対する反応みたいで、戸惑ってしまう。
八輪
八輪
なに、他の男に食べさせる機会があるっていうの?
(なまえ)
あなた
な、ないよないない…!八輪くんだけだから…
なんでそんなに心配するの?って聞きたい。
…だけど、そんなこと聞いたって不毛だ。
八輪
八輪
うん、そーして。でさ、今度一緒にご飯つくろーよ。土日は家族いないし
(なまえ)
あなた
うん、いいよ………ん?
サラッと言われてスルーしそうになった。
それ、実質「僕の家でご飯作って食べよう」ってことだよね…?意味合い的には…。
(なまえ)
あなた
それってつまり…
八輪
八輪
じゃあ決定ね。今週とかはどう?急?
(なまえ)
あなた
いや、ちょっと待って八輪く…
八輪
八輪
ふふっ、楽しみだな。あなたの下の名前が料理してる姿想像するだけで楽しい
……あれ、この流れはもう断れない感じ?
だってもう、声が弾んじゃってるもん八輪くん。
こんなに機嫌いいとこ初めて見たよ?
八輪
八輪
待ち合わせとかはまたあとで話そうね。
あ、買い物にも行こう。何作るとか決めなくちゃいけないし
(なまえ)
あなた
そ、そうだね…あははっ…
付き合って2日目で彼氏の家にご飯を作りに行くなんて聞いたことないし、かなり不安だけど…。
八輪くんのいつもとは違った楽しそうな顔を見たら行くっきゃない。
それに、家に来てもいいと思われてるんだと思うと嬉しくて。
私も少しずつ、八輪くんのことを好きになりつつあるのかもしれないって思った。

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