その日は静かに終わっていった
怖いほど静かな病室に、雨の音だけがうるさく響いている
深夜、死ぬためにベットから降りた
動かしにい足を動かし、窓の前に立つ
幸い一人部屋だったため問題なく病院から抜け出すことができる
窓を開き外に出た
外は暗闇、雨が身体を冷たく濡らす
"悪者"になった日も、どちらも雨だった
僕は雨に好かれてるのかも知れない、なんて思った
あの日、"悪者になった日"を思い出すから
どちらの日も、雨が押し潰すように強く降っていたから
振り返り、病院に向けて言った
一度自殺に失敗した人はもう一度決意を固めるまで時間がかかる、という一般論がある
まさか目が覚めたその翌日に死にに行くとは思わないだろう
僕は今、"現実逃避"に終わりを告げた
足を動かして少しずつ進む
今僕が居る場所から目的地まではそう遠くない
一歩ずつ、一歩ずつあとどのくらい続くかわからない歩く感覚を噛み締めるようにゆっくりと進んだ
どのくらい時間が経ったのだろう
光の見えない暗闇で、それがわかることはなかった
波で荒れている海を見て呟く
生き苦しい世界で生きてきて、海はすごく綺麗に見えた
その海が荒れていることなど関係なしに
海沿いを歩き、防波堤の上で止まった
防波堤の端に座る
最期に記憶を遡ることにした
"悪者"の記憶はもちろん、みんなと過ごした「いれいす DICE No.3」の時間も僕の中でいい記憶とは思えなかった
最期に振り返る記憶は"悪者"になった日の記憶にすることにした
一度目の悪者になった日の記憶に
この雨を見ていると自然と浮かんできてしまうからだ
頭の中で過去を再生し始めた
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。