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第1話

五条悟と喧嘩した夢主(補助監督)が五条悟のいないところで五条悟を感じたい話。1
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2026/02/17 13:57 更新
相当文字数が多いです。字詰めです。心して読め。
面倒かもしれないけど面白いかもしれないから頑張って。みんなのことドキドキさせます。

コメで感想反応もらえるとモチベ上がります。


ちなみに季節設定は冬です。冬っていいよね。いろんなことさせられるからね!!!いわゆるn番煎じとやら。


※露骨なパクリ、無断転載、自作発言厳禁。もしも見つけたら傷つきます。







五条悟は忙しい人だ。それは私もよく分かっている。彼は特級術師だし、五条家のご当主様だし、呪術界最強の男。それがいかに重荷なのか、そこそこ呪術の名家の娘に生まれた私はいたく理解している。私と彼では、比べものにはならないのだけれど。それでも分かっているつもりだ。

睡眠時間はごく短いし(彼はショートスリーパーでもないのに)、日々多くの任務に追われているし、彼は教師もしている。それに私の夫という役割まで。ちなみにこの場合の夫という役割とは、あくまで夫という名前的なものを指すわけで、家事は私がやっている。休日のときくらいは僕もやる、と言っている彼だけれど、それを私は断って、なるべく私が家のことをするようにしていた。だって彼は、何度も言うが、本当に忙しい人なのだ。私が持つ時間より彼の時間は遥かに貴重なものなのだ。
それに、家事をする暇があるのなら少しでも休んでほしい、そう思ったから、自主的に私がそうするようにしていたのだ。


――けれどもその日の事情は少し違っていた――否、これはただの言い訳にすぎない。結局は私の自己中に帰する問題であるのだから。それでも言い訳を少しでも許してくれるのなら、私はこう答えるだろう。「その日は生理だったから」と。

否、本当にその日はつらかったのだ。朝から内臓のネジ切れるような痛みを腹に伴い、悪寒と闘っていた。かろうじて立って、かろうじて、震えながら手を動かしていた。

何でもかんでも生理の所為にするのは、私はあまり好まないが――この日ばかりは本当に、虫の居所が悪かったというか、こう、自分で機嫌を取れなかったと言うか、つまり、超絶不機嫌だった。



何が悪いって、それを、五条悟にぶつけてしまったことだ。


その日は彼もまた機嫌が悪いようだった。彼にしては珍しかった。彼は、いつも楽しそうな声をあげて、私の名を呼ぶのだ。帰ってくるときはいつも笑顔なのだ。それが、今日はむすっと眉根を寄せ、何があったのかひたすら口を閉ざしていた。ただいまも言わなかった。


何かあったの?と聞いても別に、と返されるだけで、リビングのソファにどかっと腰を下ろしたのを見たら高専時代の彼のことを思い出した。そして何より、カッとなってしまった。
あなた
なんなの、その態度
私だって苛ついてる。私だって今日はつらいのに。いつもの余計な気遣いを今日してくれれば、私はきっとこうも怒らなかっただろう。(多分、これもまた彼に対する八つ当たりだ、分かってはいる、分かってはいるのだが……)
五条悟
何?今忙しいんだけど
彼はスマホをいじっていた。メッセージアプリを開いて、誰かと連絡を取っている。帰ってきたのはやけに冷たい声だった。
五条悟
悪いけどさ、今日はきみに付き合ってられないんだよね。
突き放すようなことを言われたから、いよいよ我慢できなくなったのだ。
あなた
なにそれ
あなた
そんなに冷たくしなくてもいいじゃん!
可愛い喧嘩、と言うには、大分空気が重たかった。軽い喧嘩だと受け流すには、あまりに言いすぎてしまった。ああいえばこういう、気がつけばお互いに口火を切って激しく言い争っていた。この人と言い争ったのは学生以来あまりなかったように思う。
五条悟
大体さあ、面倒なんだよね。そうやってベタベタくっつかれるの嫌いって知ってるでしょ?
あなた
くっついてくるのは悟じゃん!私は別にくっついてほしいなんて言ってないし!仕事があるならそういえばいいでしょ!
五条悟
たかだか補助監督のきみに言ったところで、君に理解ができるの?そろそろしつこいよ
あなた
そうやって、何でもかんでも最初から決めつけるのやめてよ!
決して、いつもそうなのではない。彼はいつもなら穏やかに話してくれるし、事細かに予定を教えてくれるし、とても優しくしてくれる。きっと今日は彼も余裕がなかったからこんなことなってしまったのだ。お互いにタイミングが悪かったのだ。
どちらが悪いのかなんてわかりきっている。最初に文句を言った私だ。互いに機嫌が悪かったなら、距離を取ればよかった。それなのに私がいちいち突っかかってしまったから。その時も、私が悪いことはわかっていた。でも認めてしまうのがどこか悔しくて、勢いに任せていろいろなことを言ってしまった。
だから、彼が面倒になってしまったのだ。
五条悟
もう、いいよ
五条悟
今日は、高専に泊まるから。
その瞬間、ぐさり、と、鋭利な硝子を突き立てられたような感じがした。
でもまたそこで変な意地を張ってしまった私は、素直に謝ることをせず、「あっそう。好きにすれば!」なんて叫んでしまったのだ。悟の顔は見れなかった。呆れた顔をしていたらどうしよう。もっと怒っていたらどうしよう。怖かったから目を逸らした。そして彼は黙って、スタスタと私の横を何も言わず通り過ぎて、ばたんと、躊躇いもなく家をでてしまったのだ。


あああの時私が追いかけていればよかった。そしたらきっとこうにはならなかったのだろう。
胸中に渦巻く後悔を誤魔化そうと、ちびちび缶に入ったお酒を飲む。苦い炭酸。お酒が好きなわけでもないけれど、こんなにも苦しいことがあったらアルコールなしではいられない。
机のうえには、もうすでに幾つか空になった缶が転がっている。
あなた
ぐすっ、うっ、ううっ、
彼がいなくなって、3日目だ。

悟は喧嘩してから一度も、家に帰ってきていない。

家出、してしまったのだ。きっと。最初は、任務なのを私に伝えていないだけなのかもしれない、そんなことを思ったけれど、これはやっぱり違う。捨てられたんだ。私が重い嫌な女だったから。ああ、あのときあんなふうに言わなければ!
勢いのまま缶ビールをまた飲み干して、床に転がる。冷えたカーペット。1人の部屋。
あなた
さとる………
さみしい。



帰ってこないと分かっているから余計にさみしい。


彼との連絡も勿論途絶えている。喧嘩当日の、「それそろ帰る」と、わかった!というお気に入りのスタンプ。以降は会話をしていない。何度かメッセージを送ろうと試みたが、何を送っても、彼は返事をくれないような気がしたのだ。

既読無視でもされたらどうしよう。そしたらきっと私はやっていけない。いっそ死んだほうがましだ。
カチカチと時計の音がする。机のうえにあるテレビのリモコンに、寝転がったまま手を伸ばす。無理やり取って電源をいれると、画面にはバラエティ番組がついた。お笑い芸人がマイクを通して陽気に笑っている。チャンネルを変える。気分じゃない歌番組。またチャンネルを変える。ニュース番組。事務的な表情を浮かべたニュースキャスターが延々と日々の出来事を告げている。
『新潟で、行方不明事件がありました。』
とある家に住んでいる家族が一人残らず消えたらしい。どうやら、ニュースキャスターによると、前に住んでいた者たちも不自然に消えてしまったようだ。呪霊、その二文字が脳裏を掠める。場所は新潟の山の方らしい。やっぱり呪霊かな。
あなた
………やめだ、やめよう。………今は何も考えたくないや……
テレビを消すと部屋に静寂が戻る。やっぱり、何も音がしないのが嫌でもう一度つけようかと思ったけれど、やめた。
いっそ、無言電話でもかけてやろうか。
いや、やめたほうがいいだろう。間違いなく彼は怒るだろうし、それに、今彼の声なんて聞いてしまったら、私は我慢できず泣き出してしまうかもしれない。困らせてしまう。きっと彼は今も仕事をしているのだから、私みたいなしがない補助監督が迷惑をかけるわけにはいかない。

――もし、このまま帰ってこなかったら。
――そしたら、どうしよう。



いや実際、あり得る話だ。高専時代、先輩であったあの人が女性をバッサバッサと突っぱねているのを幾度となく目の当たりにしてきた。

もしかして、私も、私も捨てられるんじゃないのか?

あなた
うぅ、うっ、んぐ、う、
少しだけ枯れたはずの涙が再びこみ上げる。脱水症状にでもなってしまうんじゃないか。いやいっそそうなってくれればいい。私が体調を崩せば彼は私のもとに帰って来るんじゃ。いや、絶対にない。むしろそんな幼稚なことで彼を呼び出すことはしたくない。涙が止まらない。

さみしい。

空になったチューハイの缶を机のうえに置く。かつんと無機質な音が響いた。誰もいない。私がどれだけ生活をふしだらにしても、誰も口を挟まない。こんな生活はいつぶりだろう。彼と仲良くなる前ぶりだ。あの頃の私はどうしようもなくダメ人間で、部屋は空になった空き缶ばかりで、服もいろんなところに出しっぱなしで。いや、今もダメ人間なのには変わりないか。できる事といえば、運転と報告くらい。社会人として、報連相くらいできて良かったと思う。それもできなかったらいよいよ、私は生きている意味を見失ってしまうところだった。

起き上がると頭痛がする。もう寝よう。何も考えずに。立ち上がると目の前が真っ暗になった。でも大丈夫だ。自分の家だから、距離感を間違えることなんて早々ない。ここは自分の家というより、悟が用意した家だったけど。
段々と明瞭になっていく視界。頭が重くなったり軽くなったりして気持ち悪い。酒を飲みすぎた。こんなに飲んだのは本当に久々だ。私こんなにアルコール弱かったっけ?そういえばなんで最近はあんまりお酒を飲まないようにしていたんだっけ?ああそうだ、悟が控えるようにと私に言ったからだ。階段を一歩上がると浮遊感がした。手すりに軽くつかまってまた一歩、踏み出す。慣れているはずの階段が、廊下がひどく長く感じた。2階に上がって見つけた扉。寝室だ。戸を開ける。するとなぜだか膝から力が抜けた。


勢いよく体が前に倒れる。ささえる人は勿論いない。鈍臭い私はそのまま額をフローリングに打ち付けた。
あなた
痛っ……た………!
どうしてこんなに頭痛いの。どうして床に額を打つの。どうして誰も話しかけてくれないの。どうして私一人なの。ここは二人の家なのに。次第に苛立ちが高まっていく。でも分かっている。また、八つ当たりだというのを。
あなた
ひっ、ぐ、ううつ、
泣きすぎて目を開けるのが辛い。頭が重い。きっと明日はひどく顔が浮腫むだろう。最悪だ。こんなことなら別に、あの人と一緒にいなければ。いや、あの人だから私はここにいるんだ。私はあの人じゃなきゃ駄目なんだ。
疲れた。けれど痛い床で寝るのは惨めで嫌だった。だから無理やり、力を振り絞って床を這う。ベッドに乗り上げる。涙でシーツが濡れた。もう泣きたくないのに、目から水が止まらない。私にも蛇口ハンドルがついていて、それを捻ったら泣き止む仕組みにでもなっていればいいのに。くだらないことを考える。しょっぱい味がした。やってられない。
煙草でも吸ったらストレスがなくなるだろうか。いや、あれは自分の肺を汚すだけだ。煙を自発的に吸いたいとは思えない。硝子はあれをおいしいと言うけれど。
ベッドの上であれこれ唸る。近くにあった枕を掴んで身体に寄せる。ぎゅうと抱え込む。

ふわり、と、柔軟剤に交じって落ち着く香りがした。甘い匂い。
あ、これは。はっとしたとき、私は思わずむくりと体を起こして、部屋のタンスを見つめた。
あなた
さとるの、におい……
ベッドをおり、生気を失った人形のように(人形は本来動かないが(夜蛾学長の作るぬいぐるみを除く))ふらふらと箪笥まで歩く。持ち手を握って引っ張ると後ろによろけた。立っているのがつらい。箪笥にはシャツやらズボンやらが入ってる。そのなかの一着のトレーナーに手を伸ばす。ぐ、と引っ張ればハンガーがスッポ抜けた。あまり良くない取り方だ。首回りが伸びてしまうから。でもそんな些細なこと、その時は気にしていられなかった。トレーナーを握りしめ、鼻を近づける。いいにおいがする。
私は無心で地震の着ていたシャツのボタンをプチプチと外し、投げ捨て、トレーナーを頭からかぶった。あ、あったかい。サイズは合わない。萌え袖どころの騒ぎではない。ワンピース状態だ。だって悟に合うサイズのものだから。これなら今履いているズボンも特に意味無い気がする。そのまましたに履いていたズボンも脱ぎ捨てた。誰も居ないんだからこれくらいいいでしょ。
バレてしまったらどうしよう。怒られるかな。鼻の奥がまたツンとする。大丈夫。だって彼はきっと明日も帰って来ない可能性が大きいのだからーー。
そのまままたよたよた歩き出し、ベッドに身を投げて、枕を抱き寄せる。
ああ、これ、落ち着く。まるであの人に包まれているみたいでーー。
気づけば目を閉じていた。

喧嘩なんて、しなければよかった。

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