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第13話

 ktm ⟡ ぜんぶオレンジに染めて 
2,179
2025/10/03 11:00 更新










 放課後の空気はまだ昼の熱を抱えたまま 、

 淡い夕焼けを廊下へと映していた .



 蝉の声が途切れ途切れに聞こえて 、

 夏と秋がせめぎ合う季節の匂いがする .






 . 
 早く早く! 







 友達に腕を引かれながら 、

 私は苦笑しながら小走りでついていく .



 "バスケ部の練習風景見学しない?"

 という彼女の提案がキッカケになるのだが 、

 気軽な誘いのはずが 、体育館へ向かう

 足取りはどこか落ち着かない .





 扉の向こうからはボールが床を打つ乾いた音に 、

 バッシュが滑るたびに擦れる音 .


 少し開いたドアから吹き出した空気は熱くて 、

 ワックスの香りとゴムの匂いが混ざっている .


 高窓から射す夕日が木の床を派手に染めていた .






 . 
 きゃ〜! カッコイイ!! 
あなた
 わ … っ! 







 私たち以外にもギャラリーはいて 、

 様々な声が周囲から飛び交っていた .



 うちの高校のバスケ部にはイケメンが多いとの

 噂は常々小耳に挟んでいたのもあり 、

 その人たち目的の女子生徒も多数いるのだろう .



 こういうのにめっきり疎いのだけれど 、

 どこかで聞いたことのあるような名前が数人 .






あなた
 ( …… あの人 、) 







 そんな中でも特に目を引いたのは 、

 攻めと守りでコート上を縦横に駆け抜ける男の子 .



 軽やかなドリブルに空を切るようなジャンプ 、

 橙色のような茶髪が汗で額に張り付いても

 真剣な表情が眩しくて 、カッコよかった .






あなた
 ( えっと 、何君だっけ ……
   よくうちの教室にも来る 、) 







 後輩 、なのは分かるんだけど ……


 記憶にある限りの情報を思い返していれば 、

 ボールの行方を追えていなくて .






 . 
 きゃああ! 危ないっ!!!! 
 
あなた
 っ 、___ 







 顔面まで迫っていたボールが

 ドンッ 、と鈍い音を立てて転がり落ちる .




 顔中に走る衝撃 、鼻の奥が詰まるような熱 .

 俯けば 、床へポタリと垂れる …… 血 .


 手で覆った指の隙間から赤い雫がぽたりと落ちて 、

 恥ずかしさのあまり頬が一気に熱くなる .






 . 
 大丈夫!? 
 mob 
 痛そ〜 … 
 mob 
 保健室行った方が良さそうだよね 
 
 . 
 大丈夫すかっ!? 







 周りにいた人も心配の声をかけてくれる中 、

 まるでヒーローみたいな声が飛んでくる .



 顔を上げれば 、先程まで目で追っていた

 男の子が目を見開いて立っていて 、

 息を弾ませ 、真剣な表情で私を覗き込むように

 屈んできた彼にビクッと肩が跳ねた .






 . 
 保健室行きましょう!! 
 鼻血が ……
あなた
 だ 、だいじょぶです自分で … 
 . 
 ダメっす 、立てますか 







 有無を言わせない声に負けて 、

 肩を支えられながらゆっくりと立ち上がった .





 体育館のざわめきがゆっくりと遠のいていき 、

 廊下には夕暮れの光が長い影を作り 、

 私たちの足音だけが響く .



 彼は私の歩幅に合わせてくれて 、

 時折こちらを確認してくれるその優しさが

 小さく胸をくすぐった .






 . 
 失礼しま〜す …… って 
 あれ誰もいねぇんだ







 保健室に着くとソファに座るよう促され 、

 手際よく氷袋を用意してくれた .






 . 
 ここ押さえててくださいね 
 痛みとかないっすか?
あなた
 うん …… ありがとう 







 後輩の男の子に至れり尽くせりしてもらって .



 見ず知らずの先輩にここまでしてくれるなんて

 これで彼女さんとかいたら 、どうしよう .


 …… いや 、いないわけがないよね .






 . 
 …… 、あの 
あなた
 ごめんね 、練習戻って大丈夫だよ 
 ここまでありがとう
 . 
 いやっ …… その〜 、あの!! 







 声を上げた彼を見上げれば 、

 顔筋を垂れる汗がきらりと煌めいて .



 海色と下眼光に光るピンクが私を捉えて 、

 ゆらゆらと揺れる瞳孔から目が離せなかった .






 . 
 あなたの名字あなた先輩 、ですよね 
 ktm 
 俺ッ 、北見遊征って言います! 







 急に呼ばれた私の名前 .


 そしてずっと記憶を辿っていたのが伝わったのか

 自ら名乗ってくれた彼 、北見くん .






あなた
 きたみ 、くん 
 
あなた
 どうして私の名前知ってるの … ? 
 ktm 
 えっ 、…… あ 







 純粋な疑問を問いかければ 、

 慌てたように弁解する姿がなんだか可愛くて .






 ktm 
 いや 、別にそのよく俺2年の教室 
 行くんで …… ほら 、ロウさんとか! 
 会いに行くと 、先輩にも会う __ 
 いや 、俺が一方的に見てるだけか 、… って! 
 ktm 
 あ〜〜! 違ぇっす 、えっと 
 
あなた
 … ふふ 、 







 無意識のうちに口角が上がって 、

 小さく笑いが溢れた .



 パッと手で口元を抑えて隠すけれど 、

 ぱちくりと瞬きをした後 、吹き出すように

 北見くんも笑みを浮かべた .






 ktm 
 あ〜もう笑わないでくださいよ ……  
あなた
 ごめんね  
 
 ktm 
 …… 先輩こそ 、どうして 
 今日練習見に来てたんすか 
 
あなた
 えっと 、友達に誘われて … 
 ktm 
 あっやっぱそうなんすね!?
 いつも居ないから 、ビックリして俺 







 …… "いつも" 、?



 さっきからずっと 、北見くんの言動が気になる .






あなた
 いつも誰が見に来てるか 、とか 
 覚えてるんだ
 ktm 
 えっ …… あ 、いや!!! 
 
 ktm 
 覚えてない 、けど 
 先輩がいないことは分かります 







 今日 、初めて北見くんとはお話したはずなのに

 私の外見を知っていたのはもちろん 、

 フルネームでお名前も知っていた .



 誰か伝いで私の話されてるとか … ?

 でもバスケ部に知り合いいるかなぁ 、、






 ktm 
 ただの練習風景を見に来て 
 何が面白いんだろ 、っていつも 
 思ってるんですけどね
あなた
 バスケ部ってイケメン多いって噂で 
 それが理由なんだと思うよ 、
 ktm 
 えっ!! イケメンまじか 、 







 ソワソワと前髪を弄る仕草を見せる彼が

 やっぱり可愛く見えてしまって .



 さっきまでのバスケしている姿は

 とってもカッコよかったから … これが

 ギャップってものなんだろうな .






 ktm 
 じゃあ先輩もいました? 
 こいつカッケェな 、みたいな奴 
あなた
 えっ? 







 先程の北見くんの姿が思い浮かべていた直後に

 その問いを本人から投げかけられるとか .



 分かりやすく顔に出ちゃって 、

 胸の奥が一気に熱くなって頬がじわりと

 赤く染まっていくのを感じた .






あなた
 …… っ 、… 



 ktm 
 …… 、へ? 







 言葉がつっかえて視線を落とすしかない私 .

 絶対に 、北見くんにも顔が赤いのバレた .



 しばらく沈黙が続いたあと 、

 膝を曲げて屈んだ彼が顔を覗くように

 ジッと見上げてきた .






 ktm 
 … 冗談だったら 、マジ 
 ぶん殴って欲しいんですけど 
 
 ktm 
 その 、カッケェ奴って 
 俺 、だったり …… しますか 









あなた
 っ …… う 、ん 







 静かな保健室の中に 、お互いの鼓動だけが

 確かな音を立てている気がした .




 程よく日焼けしている彼の肌が 、

 耳から順に赤く染まっていって .


 二人同時に 、慌てて視線を逸らした .






 ktm 
 ま … って 、まってくださいね 
 ちょっっとガチでやばい
あなた
 言わせないで 、よ 







 彼に彼女がいないわけないよね 、なんて

 思い込んでた数分前の自分へ .



 …… いて欲しくないな 、かも .






 ktm 
 っ …… あ〜〜〜 、すいません 







 ふぅ 、と息を吐き出したあと再び目線を

 合わせてきた彼は 、バスケをしていた時

 みたいな真剣な表情を浮かべていて .






 ktm 
 あなたの名字先輩 
あなた
 っ 、はい 
 ktm 
 明日 、予定ありますか放課後 


あなた
 ない 、…… です 







 自分でも驚くほど 、敬語で返事をしていた .



 それは 、北見くんの夕日の色をいっぱい集めた

 橙色の茶髪の隙間から覗く海色の瞳が 、

 私のことを離さなかったから .






 ktm 
 …… じゃあ明日は友達に誘われた 
 からとかじゃなくて 、
 ktm 
 俺のこと 、見に来てください 







 そんなことを言われて 、

 意識するなって言う方が無理がある .



 熱を帯びた頬を隠しきれないまま

 こくりと小さく頷けば 、無邪気そうな

 明るい笑みを浮かべてくれるんだ .



 キミばっかり私のこと知ってるから 、

 私ももっと 、キミのことが知りたくなったよ .









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