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第5話

あくむをみたの
414
2024/04/27 00:08
ちび共を寝かしつければ、私の時間が始まる。




何千年も前につくったっきり、つくれなくなったあの薬。……正しく言えば、作り方を忘れてしまった薬。


あれをつくって、元に戻す方法も調べないといけない。




そのせいで、私はずっと孤独だから。









深く息を吸って、吐き出した。





そして、少しだけ瞼を閉じる。
じゅん
はかせ。
パッと目を開くと、ジュンが扉を開けて立っていた。
あなた
なんだ。寝てなかったのか。
じゅん
うん。ねむれない。
散々遊んだのになんで眠れないのか……。
じゅん
こわいゆめみた。
おいかけられるゆめ。
悪夢か……。厄介だな。
ちびの成長の妨げになる。
あなた
どういうのに追いかけられた。
じゅん
おおきなねこ。
かわいいな。
じゅん
めだま飛び出るくらい、開いて、くちおっきくあけて、ギザギザの歯をむきだしにして、とがったツメでかべとか、ゆかをひっかきながら、おれをおいかけて……。
とんでもない。
あなた
おいで。眠くなるまでそばにいてやる。
手を伸ばしてそう言うと、ジュンはトコトコと歩いてきた。
ジュンを膝に乗せて、私は記録まとめを続けた。
じゅん
はかせ。どうして、けんきゅー、してるの?
あなた
呪いを解くためだよ。
じゅん
のろい?
あなた
そうだ。
じゅん
どんな?
あなた
老いることも、死ぬことも、全くない呪い。
じゅん
だれかがなってるの?
あなた
そうだ。
じゅん
しなずにいられるのって、いいなぁ。
あなた
……そうか。
不老不死はいいものではない。


これのせいで、みんなに置いていかれた。




じゅん
なんで、ときたいの?
あなた
人生にウンザリしてるからだよ。
じゅん
たのしく、ない?
あなた
そう。
記録をまとめ終わり、ノートを閉じる。
あなた
不老不死の薬を昔につくったことがある。そのレシピはわからない。偶然できたものだったから。
じゅん
はかせ、おれがおおきくなったら、けっこんして!
あなた
急になんだよ。するわけないだろ。
結婚なんて真っ平ごめんだ。
どうせ私を置いてみんな先に逝くんだから。



死ぬことが出来ない私の気持ちなんて全くわかってない。
あなた
すまないが、結婚なんてする気ないから、諦めろ。
ジュンは悲しむこともなく、ただ私をじっと見上げた。
あなた
すぐ眠れる薬を出してやるから、それを飲んで寝ろ。
じゅん
んーっ。
ジュンは甘えるように私にへばりついた。
じゅん
よみきかせして……。
あなた
はあ……。わかった。ホットミルクつくってやるから、先にベッドに行け。
じゅん
うん。





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