ちび共を寝かしつければ、私の時間が始まる。
何千年も前につくったっきり、つくれなくなったあの薬。……正しく言えば、作り方を忘れてしまった薬。
あれをつくって、元に戻す方法も調べないといけない。
そのせいで、私はずっと孤独だから。
深く息を吸って、吐き出した。
そして、少しだけ瞼を閉じる。
パッと目を開くと、ジュンが扉を開けて立っていた。
散々遊んだのになんで眠れないのか……。
悪夢か……。厄介だな。
ちびの成長の妨げになる。
かわいいな。
とんでもない。
手を伸ばしてそう言うと、ジュンはトコトコと歩いてきた。
ジュンを膝に乗せて、私は記録まとめを続けた。
不老不死はいいものではない。
これのせいで、みんなに置いていかれた。
記録をまとめ終わり、ノートを閉じる。
結婚なんて真っ平ごめんだ。
どうせ私を置いてみんな先に逝くんだから。
死ぬことが出来ない私の気持ちなんて全くわかってない。
ジュンは悲しむこともなく、ただ私をじっと見上げた。
ジュンは甘えるように私にへばりついた。
﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!