カーテンの隙間から、雨上がりの明るい光が差し込んできた。
私の肩に頭を乗せて、幸せそうに「誰にもあげない……」なんて呟いていたゴヌの身体が、ピクッと震えた。
「……ん、……あなた、ちゃん……?」
ゆっくりと顔を上げたゴヌの瞳に、次第に理性の光が戻ってくる。
自分が私の腕の中に収まり、しかも私の首筋に顔を埋めていたという「今の状況」を理解した瞬間、彼の動きが石のように固まった。
「っ、……え、あ……っ!? あなたちゃん、僕、……今まで……っ!!」
ゴヌは弾かれたように飛び起きると、顔を真っ赤にして後ずさりした。
あまりの勢いに、ソファーの端っこで危うく転びそうになっている。
「ゴヌ、大丈夫? 寝ぼけてただけだよ」
「……寝ぼけて、た……? 嘘だ、僕、……『どこにも行かないで』とか、……変なこと言ってなかった……!?」
「……言ってたよ。『僕だけのだよね』って」
私が少し意地悪く微笑むと、ゴヌは耳の先まで真っ赤に染まって、両手で顔を覆ってしまった。
指の隙間からチラッと私を見る瞳が、恥ずかしさで潤んでいる。
「……っ、忘れて。……今の、全部忘れて……っ!! ……あんなの、僕じゃない……っ」
「えー、可愛かったのに。もう一回やって?」
「……っ、あなたちゃん!! ……もう、……からかわないで……っ」
ゴヌは恥ずかしさを隠すように、あえてぶっきらぼうにタオルで頭を拭き始めたけど、隠しきれないその照れ顔が可愛すぎて……。
でも、彼は不意にタオルを置いて、真剣な顔で私を見つめ直した。
「……でも、……言ったことは、全部本心だから。……そこだけは、……忘れないで……?」
そう言って、彼は視線を泳がせながら、私の指先にそっと自分の小指を絡めてきた。
ストイックなゴヌが、勇気を出して見せた精一杯の愛の表現だった。
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「……もう、からかわないでって言ったのに、あなたちゃんがそんなに嬉しそうにするから……」
ゴヌは顔を真っ赤にしたままだったけど、ふいにつないだ指先に力を込めて、私をもう一度自分の胸の中へと引き寄せた。
今度は寝ぼけてなんていない、確かな意志を感じる強い力。
「……ゴヌ? また恥ずかしくなっちゃうよ?」
「……いい。もう、恥ずかしくてもいいよ。……だって、ちゃんの前にいる時くらいしか、僕はこうやって息を抜けないんだもん……」
ゴヌは私の肩に顎を乗せて、さっきよりももっと深く、私を閉じ込めるように抱きしめた。
首筋に当たる彼の吐息が熱くて、今度は私の方が赤面してしまいそう。
「……ねぇ、あなたちゃん。さっきみたいに、また『よしよし』して? ……僕、あなたちゃんの手に触れられてると、……すごく安心するんだ」
ゴヌは私の手を取ると、自分の頭の上にそっと乗せた。
ALD1のステージで見せるあの鋭い眼差しはどこへやら。今は大好きな飼い主に甘える大型犬みたいな、とろんとした瞳で私を見つめてくる。
「……いいの? ストイックなゴヌじゃなくなっちゃうよ?」
「……あなたちゃんの前では、ただの『ゴヌ』でいたい。……ダメかな? ……他の誰にも見せない、情けない僕も、……全部、あなたちゃんにだけは、知っててほしいんだ……」
そう言って、ゴヌは私の手のひらに自分の頬をすり寄せた。
彼が私を心から信頼して、心臓の奥まで預けてくれているのが伝わってきて、胸がいっぱいになる。
「……あなたちゃん……。……大好き。……もう、絶対に離さないからね」
ゴヌは私の耳たぶに、ちゅっ、と甘いキスを落とすと、満足そうに微笑んだ。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!