「……あなたちゃん、ごめん。……こんな時間に、……迷惑だよね」
ドアを開けると、そこには雨に濡れたゴヌが立っていた。
いつもはALD1のメンバーとして、誰よりも自分を追い込み、完璧なパフォーマンスを追求する彼。
でも、今のゴヌの肩は微かに震えていて、その瞳には隠しきれないほどの疲労と孤独が滲んでいた。
「ゴヌ……っ! 迷惑なわけないよ、とりあえず入って。風邪引いちゃう」
部屋に入れて、暖かいタオルで彼の髪を拭いてあげると、ゴヌは私の手からそっとタオルを奪い、そのまま私の手を自分の頬に寄せた。
「……あなたちゃんの温かさに触れると、……自分がどれだけ無理してたか、……わかっちゃうな」
「……また、一人で頑張りすぎちゃったの?」
「……自分じゃ、まだまだ足りないって思っちゃって。……でも、……あなたちゃんに会いたいって思ったら、……もう一歩も動けなくなっちゃったんだ……」
ゴヌは私の腰に腕を回して、子供みたいに顔を私の肩に埋めた。
いつもは強くて頼りがいのある彼の、こんなに小さくて、弱っている姿……。私は彼の背中を優しく、ゆっくりとなだめるようにさすり続けた。
「……ゴヌ。十分頑張ってるよ。……たまには、私に全部預けて?」
「……あなたちゃん。……。……ありがとう。……君がいてくれて、……本当によかった……」
ゴヌは私を抱きしめる力を少しだけ強めると、安心したように深い溜息をついた。
雨音に包まれた静かな部屋で、二人の心臓の音だけが重なり合う。
そのまま、ソファーで寄り添いながら、ゴヌは私の膝を枕にして、数分もしないうちに穏やかな寝息を立て始めた。
その寝顔は、いつもの厳しい顔とは違う、とても優しくて、幸せそうな表情をしていた。
______________
私の膝の上で、規則正しい寝息を立てていたゴヌ。
雨音もいつの間にか静かになって、部屋には暖かな沈黙が流れている。
少しだけ体勢を変えようとそっと身体を動かした瞬間、腰に回されていたゴヌの手が、ぎゅっと強まった。
「……ん、……あなた、ちゃん……?」
掠れた、甘い声。
ゴヌがゆっくりと目を開けて、視界がぼやけているのか、何度も瞬きをしながら私を見上げた。
「あ、起こしちゃった? ごめんね、ゴヌ」
「……ううん。……夢かと思った。……あなたちゃんが、ここにいてくれるの……」
そう言って、ゴヌは私の膝に顔をすり寄せた。
いつもはあんなに隙のない彼が、髪を少し乱したまま、とろんとした瞳で私に甘えてくる。そのギャップに、心臓が跳ねた。
「……ねぇ、あなたちゃん。……どこにも行かないで……。……もっと、こっち……」
ゴヌは私の手を自分の首筋に導くと、そのまま私の身体を自分の方へ引き寄せた。
ソファーの上で、彼の腕の中にすっぽりと閉じ込められる形になる。
「……ゴヌ、近いよ……っ」
「……足りない。……まだ、あなたちゃんの匂い……嗅いでたい……」
ゴヌは私の首元に顔を埋めると、すうっと深く息を吸い込んだ。
彼の熱い吐息が肌にくすぐったく当たって、私の顔まで熱くなっていく。
寝ぼけているせいか、いつもより距離感が近くて、独占欲が隠せていない。
「……僕だけのだよね、あなたちゃん。……誰にも、あげないよ……?」
ゴヌは私の頬を両手で挟むと、子供が宝物を守るような真っ直ぐな瞳で私を見つめた。
そのまま、おでことおでこをこつんと合わせて、幸せそうに目を細める。
「……大好きだよ。……ずっと、こうしてて……」
そのまままた、私の肩に頭を乗せて寝ようとするゴヌ。
このままだと、明日まで離してくれそうにない。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。