薄暗い倉庫。錆びた窓から差し込む夕日が、埃を照らして舞わせていた。
椅子に縛られたロシアは、荒い息を吐きながらも、目だけは強く、怒りと困惑を湛えていた。
目の前には、無垢な笑顔を浮かべる少女──ルナ。
その手には、小さなナイフ。
ルナはナイフの刃先を、ロシアの頬に軽くあてた。肌をかすめた瞬間、薄く血が滲む。
ロシアは何も言わず、睨みつける。その視線に、ルナが眉をひそめた瞬間──
ドアが破られる音と共に、光が差し込んだ。
埃の中、逆光の中に立つ少女──あなた。
彼女はピンピンで、手に何かを握りしめていた。推しの名前がびっっちり書かれたうちわだった。
その言葉に、ルナの顔色が変わる。
けれど、ロシアは笑った。口元に薄く笑みを浮かべ、静かに、低く呟く。
__やっぱり、白馬の王子様ってのは俺を選んでくれるらしい__
ルナ視点
──どうして、どうして、どうして。
あなたちゃんは、私のもののはずだったのに。
こんなにも、好きで、想って、すべてを懸けたのに──。
ロシアの頬に刃を当てたとき、彼は私を軽蔑の目で見ていた。
でも、そんなのどうでもよかった。彼がおとなしくしていれば、あなたちゃんの目に私は映るはずだった。
それなのに。
その声が響いた瞬間、世界が崩れた。
私は反射的に振り向いて、その姿を見た。
──あなた。
逆光に照らされて、まるで物語の中の英雄みたいに。
彼女が来たのは、ロシアのため。(?)※諸説あり
私じゃない。
私の手が、震えていた。
刃が床に落ちて、乾いた音がした。
彼女の視線が、私を通り過ぎて、縛られたロシアに真っ直ぐ向けられるのを見てしまった。
怒りと嫉妬と憎しみとあの子への異常な愛情で赤黒くなって、ぐちょぐちょと聞こえないはずの音が、はっきり聞こえた気がした。
──どうして?
ロシアが、口元で笑う。
まだ、…
まだよ、…
何も終わってない。
私のもの…アンタがまた、油断したその時に私はあなたちゃんを自分のものにする
アンタなんかに渡さない。
私が…私が…
薄暗い地下陽で、彼女の誓いはさらに固く、強いものになった。
そう、壊れたら元の形に戻らないほど。
いつも通りのテンションで聞いてくる彼女…うーん。
いつも通り……
彼女の瞳が俺を捉えた。
まっすぐにこちらを見てこう言った。
それ、ほぼプロポーズだろ。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。