マンションに着き、扉を開けようとすると
鍵がかかっている…
嫌な予感がした…
恐る恐る鍵を開け家に入ると中はシーンとしている
足元を見渡してもあいつの靴はない
出て行ったってことか…?
そういうことか…?
俺にもう会いたくなくてだから
何時に帰ってくるか聞いてきた?
俺が帰ってくる前に出ていきたかった?
そんなことを考えながら俺は玄関にしゃがみ込んだ
んっ?
んっ?
廊下を見ると家を出た時より綺麗な気がした
靴を脱ぎリビングに行くと
ピカピカになっているように思えた
あいつが掃除した…?
え…
なんのために?
ガチャッ
玄関の扉が開く音がした
振り返ると数m先の玄関にあなたが立っている
玄関まで歩き、強く抱きしめた
ギュッ
俺は気付いたらあなたを抱きしめていた
なんでかわからないけど抱きしめたくなった…
ふと我にかえり自分でもびっくりして彼女を離す
あなたは表情ひとつ変えずに俺を見つめる
あっ…俺の朝の…
それで居てくれたんだ…
そう言うと玄関に俺を置いて彼女はリビングへと歩き出す
彼女の両手にはスーパーの袋がぶら下がっている
そう言って下を向き長い髪の毛を耳にかける
俺はあなたのこの仕草が好きだ…
いま…
笑った…
あなたは手で顔を隠しまたいつもの無表情に戻る
俺はそうあなたに言ったけど
その言葉に返事はなく
チラッと俺を見てすぐに目を逸らし
キッチンへと歩いて行った
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。