第17話

No.16
2,896
2021/02/24 13:30


マンションに着き、扉を開けようとすると



鍵がかかっている…



嫌な予感がした…




恐る恐る鍵を開け家に入ると中はシーンとしている




足元を見渡してもあいつの靴はない








出て行ったってことか…?



そういうことか…?





俺にもう会いたくなくてだから



何時に帰ってくるか聞いてきた?



俺が帰ってくる前に出ていきたかった?



そんなことを考えながら俺は玄関にしゃがみ込んだ






んっ?




んっ?





廊下を見ると家を出た時より綺麗な気がした





靴を脱ぎリビングに行くと




ピカピカになっているように思えた




あいつが掃除した…?






え…





なんのために?












ガチャッ











玄関の扉が開く音がした







振り返ると数m先の玄関にあなたが立っている









渡辺翔太
あなた…





玄関まで歩き、強く抱きしめた








ギュッ











あなた
………
渡辺翔太
うわぁっ!
ごめん…



俺は気付いたらあなたを抱きしめていた



なんでかわからないけど抱きしめたくなった…



ふと我にかえり自分でもびっくりして彼女を離す



あなたは表情ひとつ変えずに俺を見つめる







渡辺翔太
てか、なんで?
なんでいるの?
あなた
俺が帰ってくるまでここに居ろ
そう言ったのは翔太さんですが?
すぐ出ていきましょうか?


あっ…俺の朝の…



それで居てくれたんだ…




渡辺翔太
いやいや
居ていいから!出て行かないで!




そう言うと玄関に俺を置いて彼女はリビングへと歩き出す




彼女の両手にはスーパーの袋がぶら下がっている




渡辺翔太
買い物してきたの?
あなた
はい
朝はやっぱりあんなものでしたので
夜ご飯でも作ろうかと思いまして
渡辺翔太
いいのに!!
てか、掃除もしてくれたでしょ?
あなた
勝手にすみません
こういう時何をして感謝をすれば
いいのかわからなくて…



そう言って下を向き長い髪の毛を耳にかける




俺はあなたのこの仕草が好きだ…




渡辺翔太
ハンバーグ!!!
あなた
……?
渡辺翔太
ハンバーグが食べたい!!!
あなた
フフッ…
わかりました



いま…






笑った…



渡辺翔太
いま…笑った?
あなた
あっ…
すみません


あなたは手で顔を隠しまたいつもの無表情に戻る




渡辺翔太
笑いたいときは…笑えば?




俺はそうあなたに言ったけど




その言葉に返事はなく




チラッと俺を見てすぐに目を逸らし



キッチンへと歩いて行った


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