放課後の教室は、夕陽に染まっていた。
黒板の端には〈体育祭前日〉の文字。
ざわざわと明日の準備に残る生徒たちの声が響いている。
クラス全体がどこか浮き立っていて、あなたもその雰囲気に少しだけ胸が弾んでいた。
机の上には、競技ごとの名簿と進行表。
明日は早起きだとわかっていても、どうしてもワクワクが止まらない。
声の方を向くと、隼人が教室のドアにもたれて立っていた。
白いワイシャツの袖をまくっていて、少し汗のにじむ額に前髪がかかっている。
隼人が少し笑う。
その笑顔を見た瞬間、あなたの胸の鼓動が静かに跳ねた。
思わず笑い合って、空気がふわりとやわらぐ。
気づけば、教室にはもう二人だけだった。
カーテンが風に揺れて、淡い光が隼人の横顔を照らす。
あなたは笑いながらも、胸の奥がじんわり熱くなった。
その“全力”の中に、自分も並んで走るんだと思うと、不思議と心が強くなる。
カバンを持って立ち上がると、隼人が一歩だけ前に出た。
窓の外では、もう夕焼けが沈みかけていた。
そのやりとりだけで、あなたの頬は夕陽よりも熱く染まっていた。
(明日、隼人と並んで走る。
転ばないように、ちゃんと笑えるように)
胸の奥で小さくそう誓いながら、あなたはカーテン越しの空を見上げた。
茜と群青が溶け合う空の向こうに、“となりで迎える明日”が確かに輝いていた。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。