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第9話

08 となりの明日へ
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2025/11/08 21:00 更新















放課後の教室は、夕陽に染まっていた。


黒板の端には〈体育祭前日〉の文字。


ざわざわと明日の準備に残る生徒たちの声が響いている。




加賀美隼人
 ポスター、これで全部貼ったな 
夢追翔
 あとテントの確認、忘れないでね 
加賀美隼人
 そうだな 





クラス全体がどこか浮き立っていて、あなたもその雰囲気に少しだけ胸が弾んでいた。


机の上には、競技ごとの名簿と進行表。


明日は早起きだとわかっていても、どうしてもワクワクが止まらない。






加賀美隼人
 ……なぁあなた、まだ残ってたのか 





声の方を向くと、隼人が教室のドアにもたれて立っていた。


白いワイシャツの袖をまくっていて、少し汗のにじむ額に前髪がかかっている。





あなた
 あ……うん……
 ちょっと確認してたのと…… 
加賀美隼人
 ……と? 
あなた
 隼人……待ってた…… 
加賀美隼人
 ……なんて? 
あなた
 ん、あぁいや?
 本読もうかなぁって思って! 
加賀美隼人
 お、おぉ……真面目だな 
 明日、もう本番なのに本? 
あなた
 暇つぶし!
 体育祭もちゃんとしなきゃなって…… 
 失敗したくないし……
あなた
 隼人だって
 体育祭の実行委員で忙しいでしょ? 
加賀美隼人
 まぁ……夢追さんが意外と
 テンション上がってて大変 
あなた
 夢追くん、張り切ってるよね 
 掛け声とか練習してたし






隼人が少し笑う。

その笑顔を見た瞬間、あなたの胸の鼓動が静かに跳ねた。





あなた
 ねぇ、明日……晴れるかな 
加賀美隼人
 天気予報だと晴れだから 
 大丈夫じゃないかな
あなた
 そっか……よかった 
加賀美隼人
 二人三脚転ぶなよ? 
あなた
 あー!バカにしてる!
 それは隼人のペースが速いのが原因! 
加賀美隼人
 えぇ~? 
あなた
 あー!良くないよー! 






思わず笑い合って、空気がふわりとやわらぐ。


気づけば、教室にはもう二人だけだった。


カーテンが風に揺れて、淡い光が隼人の横顔を照らす。






加賀美隼人
 あなた 
あなた
 なに? 
加賀美隼人
 明日、しっかり見てて 
あなた
 えっ? 
加賀美隼人
 明日、負ける気がしないからね 
あなた
 おぉ~ 全部1番取ってね! 
加賀美隼人
 全部!? 
あなた
 負ける気しないなら全部1番いける! 
加賀美隼人
 まぁ、全力で走るよ 





あなたは笑いながらも、胸の奥がじんわり熱くなった。


その“全力”の中に、自分も並んで走るんだと思うと、不思議と心が強くなる。



カバンを持って立ち上がると、隼人が一歩だけ前に出た。






加賀美隼人
 明日、迎えに行くから 
あなた
 うん、待ってる 






窓の外では、もう夕焼けが沈みかけていた。


そのやりとりだけで、あなたの頬は夕陽よりも熱く染まっていた。


(明日、隼人と並んで走る。
  転ばないように、ちゃんと笑えるように)


胸の奥で小さくそう誓いながら、あなたはカーテン越しの空を見上げた。


茜と群青が溶け合う空の向こうに、“となりで迎える明日”が確かに輝いていた。
















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