おい、黒霧。
何ですか、死柄木弔。
あいつを監視しろ。
死柄木弔の目の先が、
先程まで後ろに座り込んでいたはずの者に向けられる。
もちろん、連日の通り、今はその姿はない。
ヘロインの事ですか。
雄英襲撃直後だってのに、勝手に外に出ていくし。変に足取り掴まれたら困るんだけど。
どうやら、雄英付近での出没が多いようですね。
例のモルモットの女を探して、か。
そのようですね。
私はそう答えると、あの方から届いた写真を取り出す。
テーブルの上に乗せると、死柄木弔の前まで滑らせた。
この女のようです。
…
……どうかしましたか?
死柄木弔の黙った姿に、グラスを拭いていた手を思わず止める。
……あぁ、思い出した。こいつか、木奥あなたってのは。
会ったことが?
まぁね。
死柄木弔は指で写真を飛ばすと、カウンター席の内へと落とした。
個性『鼻』…だから、木奥あなたの匂いがすれば外に出ていくってわけか。
とは言っても、かなりの数の個性を複合しているようですが。
グラスを磨き終え、所定の位置に戻した私は、その後も続けた。
あの方の他に、個性を合わせ持たせることが出来るとは…。今日は特にヘロインの反応が大きかったですが…どう動きますか、死柄木弔。
そうだなぁ…
死柄木弔の座っていた足がゆっくり地に降ろされる。
カウンター席を背にし、扉を前にした彼はニヤリと口角を上げた。
俺が先に捕まえる。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。