鳴子に声をかけられて、やっと目的地に着いたと気づいた。
そう言って、鳴子は堤防に自転車を置いてスタスタ砂浜の方は歩き出してしまった。
あなたの下の名前もそれにつられるように自転車を置き、鳴子の後をついて歩き出した。
歩き出したはいいものの、足の疲労が思ったよりきてたらしく、砂浜を少し歩いたところであなたの下の名前はぺたんと座り込んだ。
いまできる精一杯の見栄を張った。
鳴子はピタッと足を止めて振り返り、そーかそーか、ほんならワイもこっから景色見るわ!と言って隣に座り込んだ。
季節は秋で肌寒い。
けど、熱った体には心地よい風が吹いていた。
そうじゃね、と一言返した。
ギクッとした。確かに乗るのは久々。それは合ってる。
横から鳴子にじーっと見られている。下から覗き込んだり、真正面から見てみたり、めっちゃ探られとる。
なにも悪いことしてないのに、変な汗が出てきた。
押しに押されて、ぽろっと口から出てしまった。
鳴子は黙って話を聞いている。
ずっと黙って聞いていた鳴子が口を開いた。
鳴子は砂浜に寝転んで空を見た。
それからグッと拳を空に突き上げて、
と言った。
そっか、そうゆうことかぁ。鳴子はそれを言うために、励ますために誘ってくれたんじゃ。そこで初めて鳴子の思いに気づいた。
山で勝負することが目的じゃなくて、わたしの事を思って誘ってくれたんだ。それに気づくと急に心が熱くなった。
ありがとねと鳴子の顔を覗き込んで言うと、鳴子はちょっと頬を染めながらそっぽを向いて、そうゆうのええねん、ワイが勝手にやっとんやからと返してきた。
そういえば!と言いながら鳴子はガバッと起き上がった。背中には砂がたくさんついている。
それでも鳴子は構わずに続ける。
ビシーっと指差しながら言ってくる。
鳴子の物凄い勢いに呆気に取られる。
鳴子は大喜びだ。わたしが応援に行くって言っただけなのに。
それを見とると、わたしもだんだん元気になってきた。
約束、絶対見に行くと言って、あなたの下の名前は鳴子に拳を突き出した。
鳴子も拳を出してあなたの下の名前の出した拳にコツっと当てた。
付き合わせた拳を鳴子の方へ押した。
鳴子は、海を見てカッカッカーと笑って、ほなそろそろ帰ろかーと言って歩き始めた。
なんだそれ、と思いながらあなたの下の名前も後を追って歩き出した。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。