第34話

side story 7
2,887
2020/08/12 09:00
DK side._______






あなたと2人で暮らすようになってすぐの頃、


珍しく風邪をひいて寝込んでしまった。













コンコン、


ガチャ




「ソクミナ〜、スープ作ったよ。」





「んん、あなた…ありがとう」






「梨ジュースも持ってきたからね。食欲ある?」





「うん、食べるよ。」





そう言って、まだ気怠い身体を起こす。







「あんまり辛くない方が好きだったよね」





あなたが具材たっぷりのスープをスプーンにとって、


息で少し冷ましてから、僕の口に運んでくれる





「…ん、美味しい。」





火照った顔でにっこりと微笑むと



良かった、と言って優しく微笑み返してくれる








「まだかなりつらそうだね…無理しないで」




「うん、大丈夫。もっと食べる」





















あなたが作ってくれたご飯を


全部なくなるまで、しっかり食べて。









「全部食べれたね、良かった。もう少し横になったら?」





「うん、そうする」





「じゃぁ私は向こうの部屋にいるから」






立ち上がろうとしたあなたの腕をグッと掴む






「行かないで」




「え〜、でも、私がいたら寝づらいんじゃない?」




「あなたがいないと治らない」




「もう…。いいけど。」







「ね、前にもさ、こういう事あったよね」






「え?あー、うん、あったかも!」





「僕がseventeenでデビューして、2年目くらいだったかな」






「うんうん。宿舎にいると全員にうつるからって、実家に帰されたんだよね」






「そうそう。忙しかったから実家に帰るのも久しぶりでさ」





「そうだったね。私もお見舞いに行ったよね。まだ大学生の頃だっけ」





「そうだよ。あなたがずっとそばで看病しててくれた。


あの時さ、風邪つらかったんだけど、あなたと一緒にいられたのがすっごい嬉しかった」





「えー?そんな事覚えてるの?だいぶ前なのに」





「覚えてるよ。あなたと過ごせる時間は貴重だったしさ。

横に座って手握ってくれて、ご飯食べさせてくれて。

もうずっと風邪でいいやって思った」






「何言ってるの笑」





「本当に。熱下がってきてからは、あなたに触れたくて、我慢するの大変だったのも覚えてる」





「嘘でしょ?体調悪いのに」





「その時だけじゃないよ。あなたと部屋で2人きりの時はいつも大変だった」





「ええー…そんな前から、そんな風に思ってたの?」





「そうだよ。10代の時からずっとそう」






「まぁ、若かったもんね〜そういう時期だよね」






「…ん?んー、そうだけど、そういう事じゃなくてさぁ」





「そのくらいの年代の男の子ってそういうものなんでしょ?

ソクミナの所には可愛い子もいっぱい寄ってきただろうしさ〜」






「んん、そうじゃなくてー…」





あなたの手を捕まえて、自分の胸元にあてる







「こんな風に一緒にいるだけでドキドキしたり、

自分でも抑えがきかないくらい余裕がなくなっちゃうのは、あなただけだよ」






「ドキドキしてるのは熱出てるからでしょ〜?」





「そうじゃないってば。本当に、何で伝わんないかなぁ…」







本気にしてくれないあなたに拗ねて

むすっとした顔をして見せると




ふふ、と笑って




「うそうそ。ごめんって」




「あなたは本当に素直じゃないよね。僕はこんなに素直に話してるのにさ」





「わかったよ〜私も素直に受け取るから。もっと話して?」





「ええー…なんかいっつもこのパターンな気がする」





「いいからいいから。」





「んー。…活動中はさ、本当に辛い時もあったし、孤独に思うこともあった。」





「うん」




「けど、あなたがいたから自分を見失わずに済んだ」





「うん」





「あなたの笑顔を見ると、心が温かくなるっていうか…」





熱を帯びた手で

あなたの顔をそっと包み込んで






「それにさ、あなたはいつも、そのままの僕自身を見てくれてる」




「当たり前じゃない。」




「あなたにとっては当たり前かもしれないけどさ、僕はそれが本当に嬉しかった。」




「…そうなの?」





「うん。周りは色々変わっていったけど…あなたとの関係は、ずっと変わらなかった」




「うん。」




「僕は本当はもっとずっと前から、あなたに気持ちを伝えたかった」





「…うん」





「でもそのせいで関係が壊れて、あなたを失う事の方が怖かった」





「…」





「僕は普通の幸せをあげられないから。あなたを傷つけるのも怖かった」





「…そんな風に考えてくれてたの?」






「そうだよ。一番大切な人だから、近づけなかった。」





「…」






「ただでさえ僕たちは昔から仲が良かったから…
噂にならないように、かなり気をつけてた。

万が一変な記事が出たりしたら、すぐに削除するように、事務所にもお願いしてさ」





「知らなかった…。」





「今も気軽には外出できないし、結婚する時はいろんな反響があったけど…

あなたは僕といる事、つらくない?」





「つらくない。そんなの全然平気だよ。」





「そうかな。これからも、ツアー中とか寂しい思いさせちゃうし…

あなたが僕といるせいで何かに苦しむのが、一番怖い」






「大丈夫だよ。ソクミナがいるだけで、幸せだから。」




「ならいいんだけど…。

ね、あなたはさ、僕のこといつから好きだったの?」





「えっ!?」





「ていうか、色々飛ばしていきなりプロポーズしちゃったけど…

もしかしてあなたは、それまでそういう気持ちなかった?」




「何、今さら…」




「だって、あなたから聞いたことないし」





首を傾げて、あなたの顔を覗き込む





「えー//…………私も、好きだったよ。」





「本当に?」





「うん、ずっと好きだったよ。」





「ずっとって、いつから?」





「んー、いつからだろう。小っちゃい時からかなぁ」




「学生の時も?」




「うん、そうだよ。でも、ソクミナ芸能人になって、遠くなっちゃったから…」





「…」






「それでも、会えない間もいつもソクミナの事考えてたよ。」





「そうなの?」






「うん。なんかうまく言えないけど…


誰よりも大切に想ってた。

ソクミナにいつも幸せでいて欲しかった」





「うん…」





「でも私は結婚とかって考えてはなかったかなぁ。そんな事許されると思わなかった。」






「そっか。そうだよね」






「…私を選んでくれて、ありがとう。

今も、いつもソクミナには幸せでいて欲しいと思ってるよ。」






「あなた…。ありがとう。あなたがここにいてくれる事が、僕の幸せだよ」





あなたの頭に手を回し、顔を引き寄せ、キスをする





「んっ…」





「っあ、ごめん。風邪うつっちゃうね」





「…いいよ、うつして。」





「う、…その顔、本当にずるい」





「え?」





「僕、あなたには勝てないね。一生」








上目遣いで僕を覗き込むあなたに

また歯止めが効かなくなって




あなたの唇を、口内を、


貪るようにキスをする









「…んっ、……ふ、…ソクミナ、風邪の、あじ……」





「……あなたは、あなたの味だね」





「なにそ、……ぁ、………ん、ふぅ……」








クチュ、










「……んぅ、………ふ…………」






「……っはぁ…」







散々味わって、顔を離すと



2人の唇の間に細い糸が光る








「…僕の1番好きな味」






「もう!変態//」






「あはは、本当の事なのに〜ㅋㅋ




…あ、でも本当に今ので風邪うつっちゃったかも」







「いいって。ソクミナが看病してくれるんでしょ?」







「もちろん!ちょっと襲っちゃうかもしれないけど。」







「それ看病って言わないから!

もう、ソクミナ。早く寝た方が良いよ?

熱下がらなくなっちゃう。」





「んー…そうだね、そうする。

僕が寝るまで、ここにいてくれる?」





「もちろん。ずっとここにいるよ。」









あなたが僕の頭をポンポン、となでて



その優しい手の感触に、安心して目を瞑る












眠りに入りそうになったところで


僕の汗ばんだ額を、冷たいタオルでそっと拭って






「ずっと前からそうやって、私の事を守ってくれてたんだね。」









独り言のように話す、あなたの声が聴こえた。
















結局、翌日にはあなたが熱を出して


僕が看病することになったけど








弱っているあなたはいつもより、か弱くて、素直で。










潤んだ瞳で僕に甘える姿を見ていると










たまにはいいかも、なんて思ってしまった。



































end._______

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