第32話

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2024/09/20 06:00 更新



心地よくて暖かい あなたの体温が伝って

きて、その優しさに思わず肩の力が抜ける

やけに懐かしい感覚とふわっと香るシャンプーの匂い

に、どことなく体が軽くなるような感じがした

あなた
…大丈夫ですか?

気遣うような声と顔


???
…__? 大丈夫?



いるま
(…っ…!)


そうか











俺は…もう1つ忘れてたことがある




いるま
…大丈夫











いるま
ありがとな



まだ、俺は前に進めてないんだな




らん
あ!?いるま!!
いるま
うお…っ

あなたを送ってから自宅のマンションに帰ると

何故か慌てた顔をしたらんがそこに居た

らん
ちょ、大丈夫?!あなたからいるまの
様子がおかしいって連絡あって…っ!
いるま
いや、大丈夫だから…落ち着けって

必死の形相で迫ってくるらんを宥める

いるま
もう大丈夫だから
らん
…なんかあった?

流石に勘づかれてるようだし、と思い

らんを俺の部屋まで誘導した








いるま
…ちゃんと言ったんだよ、あなたに
らん
え…?あ…

一瞬キョトンとしたらんだったけど

すぐに意味がわかったのかはっとする

いるま
まぁ…あなたも俺が取り乱してても
優しく聞いててくれたんだけどさ



いるま
1つ…思い出したことあって

これはまだ、らんにも言ってなかったかもな

いるま
俺が…










「 独り暮らししてる理由 」









いるま
…話しておくわ






中1の時、ずっと仲良くしていた幼なじみを失った
あの日から、俺は家族に心配されるほど変わったと思う


「大丈夫?」と何度も母親に心配かけた

普段何事もあまり大きく捕えない父親に迷惑もかけた

俺自身も1人になりたくて

家族にも迷惑をかけたくなくて


精神的に引きこもって、中学生活を終えた




いるま
…中学卒業したら、俺家出たい

初めて、その願望を口にした相手は










いるま兄
…そっか

兄だった

誰にも秘密で家を出たかったけど

さすがにそうすると更に迷惑をかけるから

当時…俺が中3の時、22歳だった兄貴に話した

ちょうど俺は受験が終わって、兄貴は就職先が決まって



「こっそりと1人になりたい」



そう伝えた時

いるま兄
…わかった

苦笑しながらも、俺のその身勝手な思いを

受け止めてくれた

いるま兄
その代わり、一つだけ約束して欲しい

あの時、兄貴とした、たったひとつの約束で

俺は今、1人で生きていけてるんだと思う




いるま
…今は、俺もバイトとか入れてるから
できるだけ自立しようとしてるけど
いるま
やっぱり学生の力だけじゃ無理
いるま
今…俺は








いるま
…兄貴から少し支援を受けてる
らん
え…お兄さんから?
いるま
今24で、まぁまぁいい所で働いてる
…らしくて

改めて話すと、本当に今、俺の家がどうなって

いるのかを、俺は全く分かっていない気がした

いるま兄
「俺も、社会出て、頑張って働くから
送る金とか、物は受け取って欲しい」



あの時、兄貴が俺に頼んだのはその一言だけだった

変に詮索しようともしないし、連絡も殆どない

家族も、全員ブロックはしていないとはいえ

気遣いなのか呆れなのか、連絡はない


らん
いるまは、このまま1人で生きていく?
いるま
…多分な











いるま
俺は、あの時のことを乗り越えられない







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