心地よくて暖かい あなたの体温が伝って
きて、その優しさに思わず肩の力が抜ける
やけに懐かしい感覚とふわっと香るシャンプーの匂い
に、どことなく体が軽くなるような感じがした
気遣うような声と顔
そうか
俺は…もう1つ忘れてたことがある
まだ、俺は前に進めてないんだな
あなたを送ってから自宅のマンションに帰ると
何故か慌てた顔をしたらんがそこに居た
必死の形相で迫ってくるらんを宥める
流石に勘づかれてるようだし、と思い
らんを俺の部屋まで誘導した
一瞬キョトンとしたらんだったけど
すぐに意味がわかったのかはっとする
これはまだ、らんにも言ってなかったかもな
「 独り暮らししてる理由 」
中1の時、ずっと仲良くしていた幼なじみを失った
あの日から、俺は家族に心配されるほど変わったと思う
「大丈夫?」と何度も母親に心配かけた
普段何事もあまり大きく捕えない父親に迷惑もかけた
俺自身も1人になりたくて
家族にも迷惑をかけたくなくて
精神的に引きこもって、中学生活を終えた
初めて、その願望を口にした相手は
兄だった
誰にも秘密で家を出たかったけど
さすがにそうすると更に迷惑をかけるから
当時…俺が中3の時、22歳だった兄貴に話した
ちょうど俺は受験が終わって、兄貴は就職先が決まって
「こっそりと1人になりたい」
そう伝えた時
苦笑しながらも、俺のその身勝手な思いを
受け止めてくれた
あの時、兄貴とした、たったひとつの約束で
俺は今、1人で生きていけてるんだと思う
改めて話すと、本当に今、俺の家がどうなって
いるのかを、俺は全く分かっていない気がした
あの時、兄貴が俺に頼んだのはその一言だけだった
変に詮索しようともしないし、連絡も殆どない
家族も、全員ブロックはしていないとはいえ
気遣いなのか呆れなのか、連絡はない













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。