第7話

第六話:選択の先で
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2026/02/21 11:00 更新
彼——改め圧紘さんに静かにしてもらい、プロヒーローに相棒を向ける。
“あなたの名字(偽名)|デフォ名:佐藤あなたの下の名前(偽名)|デフォ名:凛”、共犯か?
おっと、そっちの名前しか知らないの?
偽造名義なんだけど……まぁ、いいか。
それだけ私の技術がある、ということにしよう。

足元からのその問いかけに、肩をすくめる。
あなた
さぁ?どうだろうね?
どうなのだろうか。
これは共犯?
否、一方的な手助けである。

しかし、本当のことをアイツに言う必要はない。
その男から離れろ
プロヒーローが少しだけ声を大きくして告げてくる。

どうして?
どうしてそんなことをしなきゃあいけないの?

そう思いながら、そっと相棒を下ろした。
あなた
……あなたは、私のヒーローにならない
——これは、拒絶ではない。
選択だ。

私は、私が選んで、決めた方向へ歩く。

冷たい風が音を立てる上空で、圧紘さんの手を引いて、プロヒーローに背を向ける。

少し歩いて、プロヒーローの気配が無くなったところで、圧紘さんが口を開いた。
迫圧紘
……派手なことするねぇ、あなたの下の名前(偽名)|デフォ名:凛ちゃん
その名前に、少し引っかかる。
あなた
あなたの下の名前(本名)|デフォ名:歩です
あなた
……分かっているでしょう
そう返せば、圧紘さんはハッハッハ、だなんて、昔と変わらない張りのある笑い声を出す。
その笑いの端には、何を考えているのか分からないような冷たさを僅かに感じた。
迫圧紘
随分とまぁ危なっかしい歩き方をするようになったじゃないか、あなたの下の名前(本名)|デフォ名:歩ちゃん?
変わらない、呼び名。
あなた
これで困ったことはないので
トランクケースを持ち直しながらそう言うと、圧紘さんは小さく喉を鳴らした。
その仕草さえ、どこか計算高く、いつ牙を出すか分からない獣のようだった。
迫圧紘
そうかいそうかい
迫圧紘
ほんっと、見ないうちに大きくなったなぁ
圧紘さんはそれだけ言って、夜空を見上げた。
迫圧紘
じゃあ、落ちないように気をつけねぇとな
そんな横顔を見て、圧紘さんの手を握り直す。
手袋越しの手は、昔と変わらず大きくて、どこか落ち着く手である。

ゆっくりと地上に降りて、路地に身を潜めた。
迫圧紘
んじゃ、俺はこれで
迫圧紘
ありがとよ、あなたの下の名前(本名)|デフォ名:歩ちゃん
あなた
え?
迫圧紘
ん?
困惑の声が二つ、路地に響いた。
あなた
……ついて行くのは、ダメ、ですか? 
そう問えば、少し離れた圧紘さんの影が僅かに揺れる。
迫圧紘
……わかってるとは思うが、俺ァ指名手配犯だぜ?
迫圧紘
追われる身は辛いだろう?
そんな風にいつも通りの飄々とした声で言われて、胸の奥がざわつく。
あなた
私ももう、追われる身です
あなた
一緒に、いきませんか?
潜む者としては、少し声が大きかったかもしれない。
真っ直ぐ見つめた圧紘さんの影がまた揺れて、大きくなる。
迫圧紘
ったく、しょうがねぇ
迫圧紘
俺も丁度アシスタントを探してたんでね、気が向く間だけだからな
すぐ目の前でそう言う声がして、頭に優しく触れられる。

そのまま少し笑みを浮かべ、圧紘さんは小さく頷いた。
迫圧紘
じゃあ行こうか、あなたの下の名前(本名)|デフォ名:歩ちゃん
それから、久しぶりに人との日常が始まった。

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