第8話

第七話:朝の廃倉庫
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2026/02/28 11:00 更新
圧紘さんとの日常が始まって数週間、穴の空いた天井から朝日が差し込む廃倉庫の中で、トランクケースを広げて、相棒のメンテナンスをする。
埃にまみれた空気が、朝日に当てられ輝いていて、どこか幻想的にも見えた。

いつも通り、そっとパーツを分解して、異常がないか確認して、油を差して、また元の形に組み上げる。
迫圧紘
……やっぱそれ、物騒だよなぁ
隣で見ていた圧紘さんに言われる。
あなた
そうですか?
迫圧紘
見てるだけでドキドキするよ、まさかあのあなたの下の名前(本名)|デフォ名:歩ちゃんがこんなの持つようになるなんて
幼い頃の私には、こんなイメージはなかったのか。

そんなことを思いながら、トランクケースからパーカーを取り出す。
あなた
慣れればどうってことないですよ
昼間に普段の格好をしていると逆に目立つから、上にオーバーサイズのパーカーを羽織る。
相棒を入れているケースが見えないようにして、髪型も普段の三つ編みハーフアップから一つ結びに変えて、キャップを被る。
これで、よほど注視しなければ私だとはわからない。
迫圧紘
似合うねぇ、流石は華の女子高生って感じ?
圧紘さんにそう言われて、少し照れ臭くなる。
あなた
こんな生活ですから、華もないですけどね
あなた
高校どころか小学校も行ってないですし
そんなことを話しながら、トランクケースを閉じようとしたところで、圧紘さんが中身を覗く。
迫圧紘
あれ、もしかしてコレ、俺があげたやつ?
圧紘さんが指さしたのは、隅に置かれた焦げ跡の残るリボン。
そう、これは私が幼い頃に圧紘さんからもらった物である。
あなた
はい、ずっと着けていたんですけど、燃やされてしまって。
今はもう、使えないんです。

そう言って短くなったリボンをそっと撫でてから、トランクケースを閉じる。
あなた
私は今から仕事があるので、また日が暮れる頃に落ち合いましょうか
そう言ってトランクケースを持ち上げたところで引き止められる。
迫圧紘
圧縮しようか?
トランクケースを指してそう言われて、たしかに少し邪魔だからなぁ、と考える。
厚意に甘えて差し出せば、ぽん、と空色のビー玉サイズに小さくなった。
あなた
ありがとうございます
そう言って、スラックスのポケットにビー玉を突っ込む。
普段から持っているはずのトランクケースが軽くなっただけのはずだが、なぜか圧紘さんの温かさと重なる。
そばにいるような感覚に、ほんの少しだけ胸が緩んだ。
あなた
じゃあ、終わったら連絡しますね
あなた
圧紘さんも、何かあったら連絡ください
昼間の街は油断できない。
人混みに紛れ込んだつもりでも、プロヒーローに目を付けられれば、こちらが捕まる可能性がある。

それでも、毎日をやり過ごすしかないのだ。
この世界で生きるためには。

そう思いながら、廃倉庫を後にした。

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