第20話

①【入間銃兎 side】
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2025/01/03 03:12 更新
とある日、左馬刻からこんなメールが届いた
碧棺左馬刻

「明日、あなたを迎えに行くから車出せ」
その文面を見て、私は溜め息が出た
入間銃兎
(はぁ…全く、こっちは忙しいってのにお構い無しか)
それでも、彼女の事が気になるので車を出す事にした
入間銃兎
(以前、彼女と出会って理鶯が言っていたな…)
毒島メイソン理鶯
"彼女は…何処となく左馬刻に似ている気がするのだ
…本当に、何処となくだがな"
入間銃兎
(左馬刻と似た雰囲気…?そうだっただろうか?)
私が記憶している春鐘さんは
何処か儚く、何時でも消えてしまいそうな雰囲気を纏っていた
入間銃兎
あれの……どこが左馬刻と似ているんだ?
理鶯は時々だがよくわからない事を言う時がある

……彼女と左馬刻は全くの別物だろう
そう思いながら左馬刻を拾いにアイツの事務所へと向かうともう既に待っていた

車を止めて窓を開けて、声をかける
入間銃兎
随分早いじゃないか、左馬刻
碧棺左馬刻
おー…アイツを待たせる訳にはいかねぇからな
左馬刻はそう言いながら扉を開けて助手席へと座る
入間銃兎
まぁ…春鐘さんを待たせる訳にはいかないな
左馬刻がシートベルトをしたのを確認して車を走らせる

左馬刻はシンジュクへと向かう道中は珍しくタバコを吸っていなかった
入間銃兎
……左馬刻、タバコは吸わないのか?
俺がそう聞くと左馬刻は窓の外に向けていた赤い瞳を此方に向ける
碧棺左馬刻
この後、アイツが乗るだろ?
碧棺左馬刻
アイツは喉が弱いからな、ヘタにタバコの煙を吸わせる訳にはいかねぇんだよ
入間銃兎
そうなのか?……なら、気をつけないとな
まぁ…普通に考えて、退院したばかりの人の近くでは吸いにくいとは思うが
左馬刻はそんなのを気にする質では無い
入間銃兎
(それだけ、彼女の事が大事なのか?)
そう思いながらシンジュク駅前へと到着する
車の中から周りを見回すとあの特徴的な髪が見えた
入間銃兎
いたな、左馬刻
碧棺左馬刻
…だな、ちょっと行ってくらぁ
そう言いながら左馬刻は車を降りた

春鐘さんは左馬刻に気付くとフワッと花を咲かせた様な可愛らしい笑顔を浮かべながらこちらへと歩み寄ってきた
碧棺左馬刻
よぉ、待たせたか?
あなた
いえ、大丈夫ですよ
…にしても、カッコイイスポーツカーですね
そう言いながら私の車を見る彼女
…自分の車が褒められるのは嬉しい事ですね

そう思いながら、助手席の窓を開けて声を掛ける
入間銃兎
そうですか?お褒め頂きありがとうございます
私がそう声を掛けると春鐘さんは驚いた表情をした
あなた
え、入間さん?
……なんで入間さんが??
どうやら、私が共に来るのを知らなかったようだ
左馬刻の奴は何処となくその反応を楽しそうに笑っていた
碧棺左馬刻
銃兎のヤツに車を出してもらったんだよ
…とりあえず、後ろに乗れや
その言葉に春鐘さんは少し困惑している様だ

…謙虚なのも困りものですね
入間銃兎
気にしなくっていいですよ
こういうのはいつもの事なので
あなた
そう、ですか…?
では、失礼しますね
そう言いながら春鐘さんは後部座席へと乗り込んだ
左馬刻はそれを確認してから再び助手席へと乗り込んだ
入間銃兎
左馬刻、向かう場所は事務所でいいのか?
碧棺左馬刻
そうだな…そうしてくれや
入間銃兎
わかった
…春鐘さん、シートベルトをお願いしますね
あなた
はい、よろしくお願いします
そして、春鐘さんがシートベルトをしたのを確信してヨコハマへと車を走らせた
暫く高速道路を走り続けていると海が見えてくる

チラッと後ろをバックミラーで確認すると春鐘さんの瞳はキラキラと輝いていた
あなた
わぁ…海が綺麗ですね
碧棺左馬刻
そうか?…いつもと変わらねぇぞ?
左馬刻のその言葉に春鐘さんは少しムスッとした表情を浮かべる
あなた
左馬刻さんは見慣れてるからですよ
私からしたら久しぶりの海ですよ?
左馬刻はその表情を横目で見ながらクックッと少しだけ喉を鳴らせながら笑っていた
その表情は私達でもあまり見ない優しい表情でどれだけ仲が良いかがわかる
入間銃兎
(こんな表情をする左馬刻…見たことないな)
入間銃兎
……本当に仲が良いんですね、左馬刻と
私がそう言うと春鐘さんは少しだけ表情を暗くなり顔を下に向けてしまった

一瞬、なにか気に触っただろうかと思ったが……
再び上がった瞳は先程とは違う光を宿していた
あなた
……そう、ですね
あなた
私の学生時代は本当につまらないものでしたから
そう言いながらバックミラー越しに此方を見る彼女は先程までの可愛らしい雰囲気が無くなっていた
あなた
その中で左馬刻さんや簓さん、空却君に一郎君との出会いっていうのは世界に色が付いた感じでした
あなた
だから、皆は私にとって"神様"なんですよ
"神様"……そういう彼女の表情はまるで西洋の人形の様な微笑みを浮かべていた
左馬刻の方を見ると眉をひそめながら窓の外を見ていた
入間銃兎
…そう、ですか
あなた
……えぇ、そうなんです
その微笑みは感情も何も無い……本当に人形の様な笑顔だった
入間銃兎
(…彼女の過去に、何があったんだ?)
その後は左馬刻の事務所へ着くまでずっと無言が続いた

彼女が降りて、事務所の中へと案内されるのを見届けると左馬刻がこちらを向いた
碧棺左馬刻
銃兎、アイツの事が気になるだろうが…調べんじゃねぇぞ?
私はその言葉に驚いた、まさか左馬刻から忠告されるなど思ってなかった
入間銃兎
…珍しいな、そんな忠告をするなんて
私がそう言うと左馬刻は眉をひそめながらタバコに火をつけた
碧棺左馬刻
……アイツの過去は、知れば知る程胸糞悪ぃからな
碧棺左馬刻
それだけ、アイツの親はクソだったんだ
ガキであるアイツを、そういう風に扱ってたんだからな
左馬刻はそう言うと私から背を向けて事務所へ入って行ってしまった
入間銃兎
……親、か
彼女の親がどんな人物だったのか…左馬刻の口調的に本当に人間のクズだったんだろうな
入間銃兎
(……少し、調べてみるか)
調べるなと言われたが…どうしても気になってしまうのは職業柄なのだろう
入間銃兎
……悪いな、左馬刻
少しだけ調べさせてもらうぞ
そうして、私はその場を後にして一路、警察署へと向かうのであった
皆様、新年あけましておめでとうございます!!

今年もゆっくりではありますが書いていきたいと思っております!

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