光が一閃し、閉じ込められていた空間がほどける。
ぐにゃりと歪んでいた地平が正位置に戻り、風が一気に吹き抜けた。
二人が立つ足元は、まるでガラスのように透き通った床。遠くには、崩れた塔が幾重にも重なって見えた。
まるで時間が幾層にも折り畳まれたような世界。ここが黄昏の無限回廊の核心部に近いのだと、菓子は直感した。
その時だった。カァァァ......
鈍く反響する羽音が、空の彼方から響いた。音は一度だけでは終わらず、まるで残響そのものが繰り返し鳴り響く。
薄明の空を、黒い光が走った。翼の一振りごとに空間がひび割れ、過去と現在が混じり合うように景色が揺れる。鏡の羽を持つ巨大な烏――テンペルレイヴンが、空を切り裂いて出現した。
眩い光の翼が広がる。同時に菓子の足元にも月輪が咲き、静かに浮かび上がった。
こうして、時を欺く空の戦いが始まる。
黒い羽音が、空間そのものを震わせた。テンペルレイヴンの翼がわずかに動くだけで、風の流れが逆転し、雲が巻き戻る。茶子は光翼をはためかせ、一気に高度を上げた。
陽光を纏った身体が閃光のように疾駆し、テンペルレイヴンへ突撃。刹那、空が白く閃いた。だが、手応えがない。通り抜けた。確かに斬ったはずなのに、敵は無傷のまま、元の位置に戻っている。
その言葉が終わるより早く、黒翼がひと打ち。散らばった羽が鏡のように空を覆い、複数の茶子と菓子が反射した。次の瞬間――光景が歪み、時間がわずかに巻き戻る。
回転と共に光輪を描き、空間ごと断ち切る。だが、その斬撃もまた虚空に消えた。
視界の端で、さっきとまったく同じ羽ばたきが繰り返される。
思考の隙を突いて、テンペルレイヴンが反撃に転じた。鏡の羽が鋭い矢のように放たれ、空間を裂きながら二人を狙う。風圧だけで皮膚が切れそうな速度だった。
月光が収束し、銀の鏡面が菓子の前に展開された。飛来する羽が鏡に衝突し、光を反転――確かに跳ね返したはずだった。しかし、羽は次の瞬間、“戻る前”の位置に存在していた。
テンペルレイヴンが再び翼を広げる。無数の羽片が夜空の星のように煌めき、回廊全体を包み込む。時間も、空間も、音すらも、ゆっくりと閉ざされていくようだった。
二人は再び翼を広げ、鏡の空へと飛び立つ。光と影が交錯し、止まった時を切り裂くように、再び戦いの輪が動き出した。
黒い羽音が夜気を裂き、空を揺らす。テンペルレイヴンはその巨躯をゆっくりと旋回させ、光を吸い込みながら羽ばたいていた。時間の流れがまた歪み始める。菓子は目を細め、敵の挙動を一点に絞るように見つめた。
茶子は陽光をまとい、翼を広げた。両者の息が重なった瞬間、空が黄金と銀に分かれる。
二人の軌跡が交差する。光と影の線が一本の刃となって、
テンペルレイヴンへ一直線に突き進んだ。
その刹那――鳥が咆哮した。空間が震え、歪んだ音が鼓膜を刺す。
菓子はその瞬間、確信を持った。
読み切ったはずのタイミング。
だが、それは罠だった。
テンペルレイヴンのループは雄叫びではなかった。知能の高さが故にブラフをかけていた。ループのトリガーは他にあったのだ。
月糸は確かに届いていた。だが時間は“その光の瞬間”で巻き戻され、軌跡ごと消滅した。
次に菓子が視界に捉えたのは、自らへと跳ね返ってくる黒い羽の雨だった。
鏡のような羽が月光を切り裂き、衝撃波が直撃する。月輪が砕け、菓子の身体がバランスを失って落下していった。冷たい風が頬を打つ。視界が逆さまに回転するその瞬間――光が差し込んだ。
陽光の翼がきらめき、茶子が飛び込む。落下する妹を両腕でしっかりと受け止め、そのまま回廊の端に着地した。重なった影がゆっくりと揺れ、ふたりの呼吸が重なる。
悔しさが滲む声。だが、その瞳はまだ冷静さを失っていなかった。
菓子は静かに息を吐き、再び月輪を展開する。
銀の光が再び空を踏みしめ、菓子の身体を持ち上げる。茶子も光を宿し、背中合わせに並んだ。
光と影が交差する空中で、姉妹は再び戦う構えを取る。テンペルレイヴンの羽が再びきらめき、空間が歪む。揺れる無限回廊の中で、光と影が静かに舞い、戦いの輪は再び空中に広がった。
描写下手になってる気がするなぁ時間ループってのがむずいんだよな......
後何これby主

















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。