第15話

第十五話 秋、隣、きみを守るため③
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2026/04/18 01:37 更新
太智side
山本
試してみるか?
そう言われて、ちょっとだけ首を傾げる。
塩﨑
……何を?
ほんまに分からんくて、そのまま聞いた。

そしたら、くすって笑われる。
山本
そういうとこだよ
神崎
山本、マジでやんの?
山本
もちろん
一歩、近づかれる。

さっきより、ちょっと近い。

でも、なんでかは分からんけど、
そのまま動かんかった。

なんか、様子見るみたいに立ってる。

そのまま——

ふいに、距離がなくなる。
塩﨑
……っ、
一瞬だけ、唇が触れた。

軽く。

ほんの一瞬。

(……え?)

頭が、ちょっと遅れる。

今の、何?って考える前に、

肩に手が触れる。

ちょっとだけ、近いままの距離。

離れるでもなく、そのまま。
山本
こういうのだよ
低い声が近くで聞こえる。

からかわれてるんか、試されてるんか、
よく分からん。

(……なんか)

さっきから、ちょっとだけ変な感じがする。

嫌とかじゃなくて、

でも、なんか——

落ち着かへん。

どうしたらいいかも分からんし、

そのまま、立ってるしかない。
山本
…抵抗しないんだ
そう言われて、
なんだか胸のあたりが、きゅっと震える。
少しだけ視線を上げると、

向こうがこっち見てる。

ちょっと楽しそうな顔。
神崎
じゃあ
また、軽く言われる。
神崎
誰ならいいの?
——その言葉で、

一瞬だけ、頭が止まる。

(……誰なら)

考えようとして、

先に浮かんだのは——
塩﨑
……勇斗、かな
ぽろっと出た。
自分でも、なんでそう言ったのか分からんまま。

言ったあとに、少しだけ遅れて気づく。

(……あれ?)

なんで今、名前出たんやろ。

深く考える前に——
山本
…へえ
目の前で、声がする。

ちょっとだけ低い声。

さっきより、近い。
神崎
やっぱりな
小さく笑ってるのが分かる。

その言い方に、少しだけ引っかかる。

(……なにが?)

よく分からんまま、見上げる。

そしたら——

距離が、また近くなる。
塩﨑
っ、
さっきと同じように、唇が触れる。

今度は、少しだけ長い。

でも——

(……違う)

さっきより、はっきり思った。

ふざけてるわけちゃうんやって。

胸がちょっとだけ苦しい。
(……これ)

何か分かりそうで、分からん。

そのまま、少しだけ距離が離れる。

目の前で、相手がこっちを見る。
山本
…なあ
少し笑って、言う。
山本
お前の体つき、ちょっといいよな
——その一言で、

頭の中が、一瞬で止まった。

(……え)

何言われたんか、理解するのに少し遅れる。

でも——

次の瞬間、

肩に触れてた手が、少しだけ動く。

さっきまでと違う触れ方。

距離も、空気も、全部が変わる。

(……やばい)

さっきまで分からんかった“違和感”が、

一気にはっきりする。

これ、あかんやつや。
塩﨑
っ、
体が、反射的に固まる。

どうしていいか分からん。

でも——

そのまま床に押し倒される。

少しの身動きも取れない。
塩﨑
……なに…?
小さく声が出る。

でも、
止まらない。

怖いっていう感覚が、遅れてくる。
山本
いい身体してんな
塩﨑
………嫌、、
山本
おいおい、嫌がんなよ
口が塞がれる。

そのまま、手は止まらずに僕の体を這いづる。
塩﨑
っ、んん…っ
嫌だ、嫌なのに、

体だけ素直に反応して、

脳で考えるより先に声が出てくる。

気持ちよくなんてないのに。

嫌なのに。  
神崎
こいつ感じてるー笑
神崎はニヤッと笑って軽く言う。
山本
エロい反応すんだよな
ついに山本の手は…。
そこ、まだ勇斗にも触られたことがない場所。

塩﨑
嫌やぁっ、いやあっ!!!
思わず、声が大きくなる。

寮の廊下に、響く。
その声が届いた瞬間——

ドアが勢いよく開く。
「何してんだよ!!!!」
怒鳴る声。

——勇斗。

振り向くより先に、

ドンッ、ドンッ、と、2回鈍い音がした。

目の前の2人の体が、少しよろける。
佐野
お前ら、何してんだよ
低くて、抑えた怒りの声。

空気が一気に張り詰める。

そのまま、すぐ近くに来る。
佐野
太智
呼ばれる。

優しい声。

でも、どこか焦ってる。
佐野
大丈夫か!!
次の瞬間、体が持ち上がる。

抱き上げられる。

(……あ)

安心した瞬間、

さっきまで抑えてたものが、全部出てくる。
塩﨑
……っ、
うまく声にならんまま、涙が出る。

怖かったって、やっと分かる。

勇斗の服を、ぎゅっと掴む。
佐野
もう、大丈夫
小さく言われる。

その声に、少しだけ力が抜ける。

でも——

まだ、震えが止まらない。

勇斗に抱かれたまま、部屋を出た。
廊下を抜けて、

そのまま寮の外へ。

外の空気が、秋なのに、なんだか冷たい。

それでも——

さっきより、ずっとマシだった。
佐野
……太智
もう一度、名前を呼ばれる。

近くで。

ちゃんと守られてる距離で。

(……勇斗)

それだけで、少しだけ落ち着く。

でもまだ、涙は止まらなかった。

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