その日は、やけに静かだった。
外の音が、ほとんどしない。
北斗は窓際に立ったまま、しばらく外を見ている。
ぽつりと、そう言った
冗談みたいな言い方なのに、
冗談じゃないのが分かる。
俺は、胸の奥がざわついた。
北斗が、俺を見ずに言う。
それ、同期の俺が一番分かってる
即答だった。
その一言で、
胸がぎゅっと締めつけられる。
北斗は、ようやく俺を見る
それが、
どれだけ珍しい言葉か、
自分でも分かってる。
夜。
北斗の携帯が、短く震えた。
画面を見る目が、鋭くなる。
空気が、変わる。
北斗は、俺に向き直った
俺は小さく笑った
——でも、
どれも楽じゃない選択肢。
俺の問いに、北斗は少し黙った
短く、はっきり。
言いかけて、止まる。
北斗の視線が、揺れた。
そう言うと、
北斗は目を細めた。
自分でも驚くほど、
はっきりした声だった。
北斗は、ゆっくり息を吐く
遠くで、
車のエンジン音が止まる気配。
北斗が、窓の外を見る。
その声は、低い。
俺は、思わず一歩前に出た。
呼ぶと、彼はすぐ俺を見る
北斗の表情が、強張る
一瞬、言葉がぶつかる。
北斗は、俺の腕を掴んだ。
強くない。
でも、離さない
低い声。
その声が、
初めて“弱さ”を含んでいた。
俺は、何も言えなくなる。
——その時。
遠くで、
インターホンの音が鳴った。
一度。
二度。
短く、迷いのない押し方。
それを聞いた瞬間、
俺は確信した。
樹だ。
北斗は、目を閉じてから、
小さく息を吐いた。
俺の手を、離す。
強い目で、
でも、どこか切実に。
俺は、唇を噛んで、
部屋の奥へ下がった。
ドアの向こうで、
足音が近づく。
樹の声が、
すぐそこまで来ていた。
——次に扉が開いたら、
全部が変わる。
そんな予感だけが、
胸の奥で、静かに鳴っていた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。