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第3話

駄作のジレンマ
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2024/07/14 18:34 更新
 僕が撮った写真を彼に見せると、彼は「すげぇ、これ俺か、別人みてぇだ。お前写真撮るのガチで上手いな」と、興奮気味に言った。僕は良いと思うタイミングで取っただけだよと言った。そうすると彼は、「いや、うめぇよ」と、真剣に褒めるので僕は照れくさくなってしまった。
 その日はもう写真は撮らなかった。今日はあの写真が傑作であとのものはもう、駄作にしか見えなかったからだ。
 僕は次の日、顧問の先生に昨日の写真を提出した。その写真は二週間後のコンテストでなんと最優秀賞を取った。僕からすれば当然だろうと思ったが、彼は僕よりも喜んでいた。この先一週間はこの話題に彼は浮かれていて、彼はこの話題を周りの友達にも自慢していた。
 そんな彼に僕は私的でしかないお願いをした。
「いつもじゃないけど、たまに君の写真を撮ってもいいかな」
「良いに決まってんじゃん」
 彼は間もなくそう満面の笑みで答えた。やっぱり、いつ見ても綺麗だなと思った。
 そうして、彼と出会って早一年が過ぎた。コンテストはあれから三回あって、一回は優秀賞だったが、後はまた最優秀賞を取った。一回はプールで、一回は雪合戦での写真だった。どれも撮った写真は少年のように純粋な眼の笑顔だった。奥まで透き通った黒だった。
 僕らは早くも三年生に上がった。もう今年で最後かと思うと、大分心細くなった。受験のシーズンで遊びに行って写真を撮るのは難しくなっていくと予想していた。そう思うと、更に心細くなった。
 それともう一つわかったことがあった。彼が女の子と喋っているときも、男の子と喋っているときも、心は一段と締め付けられるようになった。その理由が遊ぶときは大抵二人で遊んでいたので、その時が忘れられないからだろうかと、思っていたのだが、どうやらそんな事も無いようだった。
 どこかの小説で、嫉妬という描写があった。その描写に似ているように感じて家のその小説を探してみた。それは、恋愛小説だった。この時に、あぁ、そうか、僕は彼に恋をしたんだと知った。でも、日常が壊れるのがあまりにも怖くて、そんな嫉妬なんて感情を表に出そうとはしなかった。
 その日から、僕の中での彼との距離は近いところから、遠いところへ離されてしまった。そんな気分に心をえぐられた。彼が僕のことを突き放さないだろうと、そう心をなだめながらも正気の沙汰ではなかった。
 彼の写真を撮るときも、この気持ちが邪魔をするせいでどれもこれもが自分の気持ちに踏みにじられて、どれもこれもが駄作に成り下がっていた。彼はどれもいい写真だと褒めてくれたが、僕にとってと、彼にとっては特別違うものがありすぎた。
 この気持ちがとんでもなくいらなく思えて仕方がなかった。

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