ー礼治sideー
朔夜が俺の肩を揺する。
俺は、翔琉達のやり取りを聞きたくないあまり、朔夜の声も耳に入らなかったのかもしれない。
俺が指で目の下を触ると、濡れていた。
バチンッ
頬に衝撃が走る。
一瞬何が起きたかわからなかった。
...コイツ、俺に...平手打ちした...?
こんなに感情的になった朔夜、初めて見た。
すると朔夜がキッチンの方に行って帰ってきた。
俺の頬に冷たいものが触れる。
俺は押し黙ってしまった。
...朔夜が俺の中で特別だった理由がなんとなくわかったような気がした。
俺は救われていたのだ、この子に。
そう怒る朔夜に軽く抱きついた。
別にハグしたがってる訳じゃない。
ただ、朔夜に止めどなく溢れるこの涙を、見られたくなかった。
すると朔夜も抱きしめ返してきた。
ー続くー
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。